告白 | (本好きな)かめのあゆみ

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

初めて

町田康さんの小説を読みました。


きっと好きだろうなあ

と思っていましたが

やっぱり好きでした。


新聞のエッセイを読んだり

本好きの友人や

みなさんのブログの評判で

気になっていたんですよ。


最初に読むのは

きれぎれ

告白

か迷ったんですが

これは実によかったです。


会心の出来です。


リズミカルで小気味いいリズムを刻む河内弁。


主人公の熊太郎は

まさにぼく自身なのではないかと思いました。


ぼとぼとと垂れ流す思弁。


ぼくの思考パターンを読まれているような。


実際に明治期に起こった大量殺人事件

河内十人斬り

を素材にしながら

ぼくはこの物語を

思弁の物語

であると捉えました。


自らの思考が

うまく言葉で表現できないもどかしさ。


それを背負い続けて

ぼくたちは生きているのではないでしょうか。


自分が思っていることを

理解してくれる人を探す旅。


けれどもそんな人はいないので

その都度

後戻りできない破滅の道へと

突き進んでいくしかない感じ。


思っていることが

直線的に言葉や行動に繋がる人たちへの

羨望と侮蔑。


我が身を振り返ってみても

言いたいことがずばり言えた経験なんて

皆無のような気がします。


ややもすると

自らが自らを無意識に欺いていたり。


作家のみなさんなどは

自分のなかにあるなにがしかの想念が

一度でも正確に言葉として表現できれば本望

というような作業を生涯を通して

行っているのではないでしょうか。


ぼくにもそんな真実の言葉を発せられる機会が

これから訪れるのかどうか。


この作品を読んでいると

はるき悦巳さんのじゃりん子チエ

のユーモアと悲哀とバイタリティを

思い出しました。


それと

同じく方言を使っているせいか

井上ひさしさんの

吉里吉里人

も連想しました。


シリアスなのにユーモアが溢れ

面白いのに深い感じ。


この場面でそのユーモアを挟むか

というような。


表現の仕方に特徴があるので

苦手な人と大好きな人に分かれると思いますが

ぼくは大満足でした。


文庫で800ページ超の作品ですが

飽きたり中だるみしたりすることはありませんでした。


傑作といってもいいと思います。






-告白-

町田康