NHK教育の
ハーバード白熱教室
で興味を持ち
思わず買ってしまいました。
まだ読みきってないんですが
長くかかりそうなので
途中までの感想をメモ代わりに。
アメリカ人が語る正義
ときくと何だか独善的な
匂いを感じてしまうんですが
サンデル教授の論理展開は
実に分かりやすくて面白いです。
身近な話題を哲学的な問題に
結びつける手法はお見事です。
例が素晴らしい。
例えばこういう感じ。
あなたは暴走し始めて制御できない
列車の運転手である。
進路に5人の作業員がいる。
ふと支線をみるとそこには
1人の作業員がいる。
作業員たちに列車が近づいていると
知らせる術はない。
あなたはそのままの進路を進むか
支線に入るか。
同じく列車が暴走していて
進路に5人の作業員がいる。
あなたは橋の上を散歩中にその光景に気づいた。
あなたは自分が飛び降りて犠牲になり
列車を止めて5人の作業員を助けようと思うが
自分の身体は列車を止めるには
小さくて無理だと気づく。
ふと横をみると大男が立っている。
その大男をあなたが橋の上から
線路上に突き落とせば
列車は止まり
5人の作業員は助かる。
あなたは大男を突き落とせるか。
大男が無関係の人間の場合と
列車の暴走の犯人であることが分かっている場合では
判断が変わるか。
ほかにも
海上で遭難している人たちが
今にも死にそうな仲間を殺害して
その肉を食べて生き延びることを
政治は法で規制すべきか。
戦争中に山中に潜んでいるところを
ヤギ飼いが通りかかった。
そのままヤギ飼いを行かせれば
敵に自分たちがここに潜んでいることを
報告されるかもしれない。
ヤギ飼いを行かせるかどうか。
自分の身体は自分のものか。
成人同士の合意に基づく取り引きのもと
腎臓を売買することを
政治は法で規制すべきか。
成人同士の合意に基づく取り引きのもと
売買春をすることを
政治は法で規制すべきか。
ハリケーンの被災地で
生活必需品を異常な高値で販売することを
政治は法で規制すべきか。
などなど。
さすがはアメリカ合衆国。
日本社会なら議論するまでもなく
アウトであるような事例でも
しっかりと議論ができる土壌が
あります。
それに
例題のひとつひとつは
実に重いテーマで
それぞれ小説で何十ページも書けそうなのに
それをさらっと数行でまとめるあたり
明晰です。
また
ベンサムの死後の話も
かなり興味深いです。
-これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学-
マイケル・サンデル