俺が“ソレ”に気づいたのはつき合いはじめてから間もない頃だった。




一緒に街などを歩いてても電車に乗っていても 顔の向きは変わらないが “目だけ”がヒョイと何かを見ているのに気付いた。



初めは気のせいかと思ったがやはり何かをチェックしている。



俺は彼女が何をチェックしているのか確かめた。



なんと彼女は 街ですれ違う“今時の男性”をチラチラ チラチラ チェックしていたのだ。



「げっ…マジかよ…」


彼氏と一緒にいるのに、いや いなくても“男チェック”をするような子だとは思わなかったため かなりガッカリしてしまった。


間違いであってほしいと思い、何度も観察したが やはり“目だけ”で今時の男性をチラチラ見ている。



ちょうどこの子と付き合う前に ルックスが派手なモデル系の若い子と付き合っていたが、彼女もやはりそういう部分があり注意した。

「みっともないからやめろ」 と。


男を連れて歩いてるのに、他の男をチェックする女ほどみっともないのはない。

その時の彼女は 自分でもそれを認め気をつけるようになった。



だからこの一見“マジメそうな”彼女にも 言って直してもらおうと思った。




そして思い切って言ったのだ。




「あのさ… 言いづらいんだけど… 」





「なに?」





「俺と歩いてる時、男チェックするの止めてくんない?周りからみてもみっともないし。」




すると彼女は逆上。


「はあっ? はあっ?私見てないから!」




「………」


俺は、たまげた。

たまげるというのはこういう事を言うのか。




俺はそれ以上何も言えなかった。



惚れた弱み、というヤツだ。




真面目そうな見かけは、見かけだった。 “人は見かけによらない”という言葉は本当に的を得ている。



そしてある日 “事件”は起きた。



この事件で俺は彼女に対し 信用がなくなる事になる。



つき合いはじめは、お互いに信用を積み上げる大事な時期だ。


その大事な時期に彼女は不誠実で有り得ない逆切れをかます。



今でも俺の中での伝説の事件だ。



それは携帯電話のとあるメールだった。



俺はこの頃すでに
闇の螺旋に巻き込まれていたのだ。




この事件から“苦しみ”は更に更に深く、黒くなっていった。







続く。