ハイウェイを車で30分くらい走ると
和風の大きなお店が見えてきた。

“新撰組”だ。



中に入ると 新撰組の社長と 異常に大きな体の人達が席に座っている。



そこには 元横綱の武蔵丸親方、武双山親方 そして吉田道場で柔道を教えていた時に 息子さんを教えていた時に知り合った 安芸乃島親方がいた。




なんでもロスで2日間だけ巡業をやりに大相撲の皆さんがこっちにたまたまいらっしゃっていたのだ。




アメリカに来て 大相撲の方々と会うなんて思いもしなかった。



やはり食べる量や飲む量がハンパじゃない。





武蔵丸親方はテレビで観たままの大らかな方だった。



皆さんに激励の言葉を頂き帰路につく。



試合の日は刻一刻と近づいてくる。


なんとなく

“最期のチャンス”
という言葉が思い浮かぶ。


ロスのハイウェイからの景色を見ながら、様々な事を思いだす。




事務所を離れ 敏腕ブッカーの方に取って頂いた試合。



俺の人生は一体どうなるのか。



思えば波乱万丈と言わざるを得ない人生をおくってきた。


順風満帆ではない。
波乱万丈とは聞こえはかっこいいが 沢山の悲しみも積んで(摘んで)いかなければならない人生だ。




両親に愛されたなら普通の平凡な人生だったろうか。


人とうまく交われず随分と“通らなくてもいい道”を通ってしまった。



時間は戻らない。


過去を悔やんでも仕方ないが、自分の中にあった悲しみが悲しみを呼んでしまった。



俺も誰かみたいに世渡り上手だったら 今頃 素晴らしい練習環境に恵まれ大舞台にも出れていただろうか。 もっと良い人生を謳歌していたのか。




異国の地でそんな事を思い返す俺は


頭を振り


「もっと良い事を考えろ」


と自身に言い聞かす。







試合が近づき、


ロスを発つ日がやってきた。



床につき


実感がどんどん湧いてくる。




ブッカーの方から頂いた予定表をトレーナーと見て確認する。


「あしたの12時の飛行機ですね」



こっちの仲間達と最後の別れを惜しむ間もなく時は経つ。




そして…


俺は本当にとんでもない大ミスをしてしまう。


それを教えてくれたのは