ゆっくりと階段をおりる。



ガウンを身にまとい 集中した精神は 聖心と変わる。


神が舞い降りた時 俺は必ず勝利を得てきた。



沢山の関係者がいる。



「見とけ 俺の 世界トップクラスの寝技を」



リングイン。




名前がコールされ手を挙げる。



「始めは軽く受けてやろう」



そんな気持ちだった。



「カアアアンッ」


ゴングが鳴る。



俺は相手の低い構えに合わせた。


相手に合わせるという事は少々 勝利から遠ざかる事もある。


原井が素早いタックルをしかける


俺はサッと反応し タックルを切る。


「よし バックに回ってちょっと様子を見てから極めにいこう」


と思った時だった。



バックに回った俺を原井は素早いディフェンスでバックに完全につかせなかった。



「なんだよ コイツ やるじゃん」



気持ちは完全に 戦闘モードに入った。



「やってくれんじゃん」

とその時 相手が俺を寝技に引き込む。


俺は得意のスピードパスで足を一瞬で越え まずはシッカリ押さえ込んだ。


「社長が早く極めろって言ってたな…」



肩固めに行こうと思ったが 芸がない。


「んじゃ あれだな」


俺が選んだのは 変形横三角締め。



足で相手の顔をまたぎ三角の形に取り 締め上げる技だ。



「バシッ」



俺の横三角は絶対だ。


むかしプライドでクリスブレナンにロープを蹴られ技か緩んでしまった事があった。



それだけ気をつけ 締め上げる。




「パンっ パンっ!!」




原井が 敗けを認めた。



俺は彼の将来性を感じた。

「コイツ は絶対上に上がってくるな」


俺の予想は当たっていた。 後にディープで強豪達に次々と勝っていくのだ。



バックをディフェンスした事を 試合後リングで

「よく ディフェンスしたな あれでマジになっちゃったよ」


と 伝えた。


彼は ガックリしていたが


「ありがとうございます」


と応えた。




リングでは勝者と敗者が必ず決まる。


高い 低い、 熱い 冷たい
の相対論が如く。


俺はマイクを持った。

丁度
「世界の子供達にワクチンを」
という事をやり ワクチンをプレゼントしていた。


「今日はありがとうございました。

皆さんも自分の事だけを考えず 他人にも思いやりを持って下さい。」



暖かい拍手が起きた。




そして相手の原井に



「今回 誰も挑戦してきませんでした。 けれども 彼だけが試合を受けてくれました。ありがとう。」


相手の原井にも拍手が起きる。




そして本題だ。



政治的圧力などに 言わなければならない。


言えば 言われた人間は 必ず怒るだろう。



しかし 男には 引き下がれない… いや 引き下がるなんて絶対にできない時がある。


俺は 言った。



巨大な渦、 闇の渦に対して。 名もない戦士が巨大な闇に立ち向かう劇のワンシーンのように。

もがいて あがいて きた俺は 小さくまとまる事などできなかった。

不条理で正論の通らない俺がいる闇の世界には 俺のような “蛮勇”も必要だ。

人が人を騙し 昨日の友は今日の敵… そんな事が日常茶飯事に起きている世界だ。 俺が波風立てても 何も起こらないかもしれない。


闇は闇だ。 闇は病みを産み、更に深遠な闇を導き出す。 漆黒の螺旋が神の足元をすくおうとする。

しかし、 闇(悪)が栄えた試しはあるが、 最後に残るのは 天命を授かりし 選ばれた人間達の紡ぎ出す光(善)だ。


俺は “ソレ”に賭けた。




「最後に一つ言わせて下さい!」







続く