シンガポールに来ている。F1ナイトレースを見るのが主目的だが、ゴルフをしたり知人に会ったり、仕事の話をしたりと色々盛りだくさんの旅だ。

実は何度も、この国を訪れているのだが、最初はワールドカップサッカー、アジア最終予選のプレーオフがマレーシアのジョホールバルで行われた時である。当時多くの日本人は開催国がマレーシアと聞いて、クアラルンプール行きの便に予約が殺到し行けない人が続出したわけだが、よく調べるとシンガポールの対岸の町がジョホールバルで、豊富な便数のシンガポール便で快適に訪問することができたのを良く覚えている。

その後政府系企業が保有するインターネットサービスプロバイダーの買収交渉をしたり、投資家へのIRのためにGICなどを訪問したことがある。観光旅行でも何度か出かけた。

面積は東京23区程度の小国であり、元々英国の植民地だったものが日本に占領され戦後マレーシアとして独立したが、マレーシアのマレー人優遇政策に反発して元々中華系が人口の過半数を占めていたシンガポール島を独立。香港の中国返還の際には共産党嫌いの中国人の富裕層が大挙して押しかけたとも言われる。

シンガポールの話は尽きないのだが、今回は最近私が良く書いている高速道路の無料化反対論に関連して、シンガポールの道路事情の話をしよう。そもそもシンガポールの道路は通常はあまり渋滞しない。F1の時は渋滞が酷いと現地住民は文句を言っているようだが、こんなの東京に比べたら渋滞のうちに入らない。
そもそも、自動車は100%輸入だし輸入関税が高いので日本の下手したら数倍の価格で自動車を入手しなければいけないし、曜日によって中心部に乗り入れられる車の制限があったり、ETCのようなシステムをつかってロードプライシングもかなり前から導入されている。

つまり、車を持つこと維持することにお金がかかり、道路も有料化して車の通行を適正な範疇に収めているのだ。また道路網の整備の仕方がよかったのか、20分もあればチャンギ国際空港にたどり着ける。成田は論外として羽田を考えてもかなり近いと言える。港区からでも飛ばして30分は最低でも羽田まで要するはずだ。

これは用地買収が、いわゆる一党独裁世襲国家だから容易にこなせるから効率的な道路配備ができるからなのだろうか?また、シンガポールはインフラ系や金融系の半分以上は政府系企業である。つまり国営企業なわけだ。なのに、GICは世界でも有数の運用機関であるし、シンガポール航空も日本航空とは違い世界で最も良いエアラインランキングでいつも上位である。

日本の場合、国営企業はダメになる一方であり、その為に民営化をしなければいけなくなる。政府系金融機関は世界のヘッジファンドなどの草刈場になっていたりする。日本ではダメな政治家の代名詞である世襲もシンガポールでは堂々と行われる。今の首相リーシェンロンは、前首相リークワンユーの子供である。

政府系企業の経営者は容赦なしに実績を求められる。企業であるからそれは利益が一番の判断基準である。利益が上げられなければ容赦なく首が切られる。国営企業は人気No.1の就職先であり高学歴のものが真っ先に就職希望する。エリートなのだ。

もちろん食料自給率は0%。水ですら最近までは輸入100%だった。
そんな国と日本の違い。

日本はやはり中途半端に大きいし、中途半端に大きくないのかもしれない。

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