私がライブドア事件の捜査・公判過程で一番違和感を抱いたのが、この会計上の資本取引と損益取引という考え方のされ方である。ライブドア事件を、それなりにウォッチしてきた人は、よくわかると思うが、この事件で一番フォーカスされているのが、この部分である。

ライブドアの100%子会社のライブドアファイナンスが、大部分を出資し業務執行組合員がHSインベストメントという会社の民法組合M&Aチャレンジャー1号投資事業組合(ファンド)と、さらにそこが大部分を出資し、業務執行組合員がバリューリンクという会社の民法組合VLMA1号投資事業組合、VLMA2号投資事業組合(ファンド)が、ライブドアの買収予定だった、クラサワコミュニケーションズ、ウェブキャッシングの二社の旧株主から現金で株を買い取り、両者の親会社になり、株式交換で両者をライブドアに売却し、その対価としてライブドア株を取得し、それを市場で売却して(100分割による高騰時には売らず)利益を得、それを出資者である、VLMA->チャレンジャー->LDファイナンスに配当した、というのが一連の事実である。

ライブドアファイナンスが、大部分を出資し業務執行組合員がHSインベストメントという会社の民法組合M&Aチャレンジャー1号投資事業組合(ファンド)が、ライブドアファイナンスの連結子会社か、否かという争点はあるが(ここの部分では裁判所は連結・非連結の問題に判断は下さず、脱法目的で組成されているため、存在を否定する=無かったことにする、という手法でM&Aチャレンジャー1号投資事業組合はライブドアファイナンスそのものである、と判断している)、そもそもこの取引がライブドアからみれば資本取引にあたる、ということにものすごい違和感があったのである。

この話の前提として3つのファンドは存在を否定されライブドアファイナンスそのものとされているが、それはとりあえず置いておこう。とりあえず下級審裁判所の判断を前提として話を進める。

しかし実際にはこれらのファンドは、そもそも株式交換ではなく現金買収を望んでいた買収先の旧株主に対して、こちら側の希望である株式交換と現金買取を両立させるために、作られたファンドであり、利益が出たのは単なるラッキーにすぎないのであり、暴落して一部塩漬けになってしまうことも考えられたはずである。しかも売却目的の一時的な保有に過ぎないのであり、実態は損益取引なのである。増資をして資金調達をするというような目的ではない。

100分割後の急騰もあって、そこで高値で売り抜けたと特捜部は早合点をした形跡がある。

基礎からわかるライブドア事件

これは事件当時の読売新聞の報道へのリンクである。幸いなことに未だにウェブに残っていたのでリンクしてみた。よくみてみれば、裁判所で認定された事実とは大きく違う飛ばし記事に近い報道である。当時はこんなデタラメがまかり通っていたのだ。

100分割後の急騰というのはいわゆる1/100の旧株のものであり、市場にほとんど流通していない。出来高も少なく数十億の売却益をあげられるような市場ではない。実際には100分割後の新株が到着してからほとんど売却されているし、残りも急騰が一段落し流動性が戻ってきてから売却されている。100分割で株価を維持上昇というのは検察の作り上げた虚構であり、実際は強い思い込みが捜査を経る間に思い違いだと分かるが、認めたくないので、そのまま調書に書いてしまった、ということなのだろう。

つまり、ライブドアは売り手のニーズにこたえるために、株価下落リスクを負いながらファンドを作って買収を円滑にすすめた、しかし株価が下がらなかったために巨額の利益が出た。それは実質的には損益取引的な取引だったため、連結でも利益に計上してしまった。が、その巨額な利益があらかじめ企んだものであり、しかも100分割という奇手を用いたものであり悪質だ、と検察は考えて、摘発に踏み切ったが法律的に適用できるものが見当たらず、ファンドがダミーであり、形式的にはライブドア株の増資と変わらず、資本取引にもかかわらず、損益取引と有価証券報告書に記載した、という容疑での起訴に踏み切ったのである。

たしかに、検察が言うようにファンドがダミー、あるいは下級審裁判所が言うようにファンドの存在が否定されるのであれば、このように解釈する、という考え方もあるとは思う。だから宮内氏も執行猶予を取りにいくために認めたのであろう。いわば検察側主張への歩み寄りである。彼のその行動は自分への最大の利益誘導という意味で理解は出来る。

だが、私は彼のように歩み寄る理由はない。なぜならば過去自分がした行為に関して一点の曇りもないからだ。自身をもって法令順守をしていたと思う。だからこそ、捜査段階から、この解釈に関しては違和感を感じていた。下級審で判断が出た後、事件の構造が自分の中でも整理できてきたので、このような考えをブログで公表できるようになった。これまでは、実際のところもやもやとしたものがあるだけで、それを整理して説明することが出来なかった。

やはり、実態は損益取引なのだ。ただ、確かにスキームの立て付けはあまりよくない。実際に検察庁に別の解釈をされる恐れがあった。ただ、このような形で摘発され厳罰を下されるというような案件だったのか?あれだけの大騒ぎをしてライブドア株を上場廃止にするまでの案件だったか?という疑問は残るのである。その意味で、やはりあの時の検察庁の対応は「暴走」だったのだと、私は考えるのだ。

ああ、また堅い話になってしまった。

落合弁護士ネタでも語ろう。

■[話題]楽天・三木谷社長の「降伏」

官製の買収防衛策に誰も異議を唱えないことに、私はものすごい違和感を感じるのだが、それは置いておくとして、結局TV局の価値は自社広告をいくら出してもコストがかからない、その広告でネットに誘導し、顧客単価を上げることだけしかないと思うのだが、そこに動画コンテンツとか、どうでもいい、ややこしいことを考えるから「通信と放送の融合」とか変なスローガンになるのだよね。でも、もうTV局にその価値はほとんど無くなり、官に泣きついて、ややこしい買収防衛策を導入したりして、ほとほと愛想が尽きたよというのが三木谷さんの本音なんだろうね。大体動画コンテンツなんて、TV局に頼らなくても実際作ってんのは、外部の製作会社だし、タレントも全員外部のプロダクションだから、そこから導入すればいいんだから。そんなものほしくてTV局買収しようとしてた、と未だに誤解している人がいることに違和感を感じるね。

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