昨夜、都留に泊まる。夜の11時半頃床に就いたが、一晩中、雨交じりの風がガラス戸にふきつけて、幾度も目を覚ました。

 翌朝、宿舎を出ると木々の葉や枝が道のあちらこちらに落ちている。激しかった昨夜の風のあとだ…。

 曲がり角に、背の高さの違う黄色い傘が、一塊になって集まっている。

 「そうか。登校前の子どもたちの集合場所なんだ」

 一番背の高い男の子が、7・8人の子どもの先頭にたち、ボソッと一声あげると列ができて動き出した。

 小さな女の子と男の子、4年生くらいの男の子、5年生くらいの女の子、みんな雨だというのに、ちょっとかわいいデザインの洋服を着ている。

 「これから学校へ行くんだな…」

                      ※

 ゼミ室でおにぎりを食べて、それから出勤印を押し、ゆっくりと本を読む。

 「おはようございます!」

 Aさんが一番に登場。続いてKさん…。Kさんは鞄をごそごそやって一枚のCDを取り出した。

 「えっ、もしかして部屋にあったの」

 「ええ、ありました。先生、どうぞ」

 それは、尾崎豊のCD『愛すべきものすべてに』―。

 

 昨日、ひょんなことからKさんが「わたし尾崎豊大好きなの」という声を聞いて、ぼくはすぐ言った。

 「ねえ、だったらCD持ってる…? 持ってたら貸してくれないかな。ぼくも好きだから聞いてみたいと思っていたんだ」

 「新潟の実家に置いてきたと思うんです」

 「だったら今度帰ったとき、持ってきてね」

 それがちゃんと都留の部屋にあったというのだ。


 「『卒業』は入ってる?」

 「ええ、入っています。『15の夜』もね」


 ぼくは言った。

 「実は、生活指導論で尾崎豊の歌を使おうと思っていたんだ。1970年代の後半から1980年代の始まりのころの中学生や高校生の気分感情を鋭く表していると思ってね。彼が歌った『♪この支配からの卒業』という感じはすごくわかる。でも今の子どもたちの抱えているものは、少し違う気がするんだ…。

 そのあたりをみんなで考えてみたいとおもっているんだ…」


 今、川崎の家に帰ってきた。これからゆっくりと尾崎豊のCDをかけてみようと思う。