☆琉球ミュージカル「龍神・羽衣伝説」

  ここまで獅子と龍の動きが生き物のように見え始めたとき、僕に一つのアイデアが生まれた。

  伝説に残る琉球王朝の始祖は龍神の子供で、母親が天女だったとする琉球王朝建国の物語を、ミュージカルで表現する試みである。

 二〇〇五年・杜の賑い沖縄「龍神・羽衣伝説」が開幕した。

  主役の「天女」には、五歳の時の初舞台が「第一回杜の賑い沖縄」で、以降、「杜の賑い」と共に育ち、現代を代表する琉球舞踊家に成長した宮城小寿江さん。

 「龍神の精」は同じ宮城流門下の小嶺和佳子さんを起用し、龍神伝説「翔龍団」が巨大な龍を操って、全体を幻想とダイナミックな「琉球ミュージカル絵巻」として展開した。

  舞台創りの常識の中で「子供と動物は使うな!」と言う不文律がある。

 これは無邪気で自由奔放に動く子供と動物の可愛さに、観客が見とれてストーリーや主役の存在が見えなくなることがよくあるためだ。

 しかし、全ては演出家と出演者との信頼関係で解決する。

 確かにストーリーの中で巨大な龍が舞台いっぱいにうねり生き物のように動くと、すべての目はそちらに奪われる。

 しかし、今回の狙いはそこにあり、そこから物語の全てが始まるのだ。

 とぐろを巻く巨大な龍神の中から登場する龍神の精、空を舞う天女、まさにファンタジーの世界が巨大なコンベンションセンターの空間に出現した。

 このミュージカルでは獅子の登場はなかったが、今後、物語をさらに充実させ「龍虎が相まみえ、天女が空を舞う」より壮大で豪華な「琉球ミュージカル」を創ろうと考えている。

 本土の芸能団体とは異なり、沖縄の芸能団体には、若い後継者がどんどん生まれていることが、うれしい限りだ。

次回は、遂に「阿国歌舞妓」に出演する「龍神の舞」