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『混迷の日本①』三橋貴明 AJER2015.1.20(7)

http://youtu.be/MzVOqXpdh0g

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一般参加可能な講演会のお知らせ。

2月21日(土)TKPガーデンシティ仙台「2015年の日本の国民経済と企業の成長戦略」 お申し込みはこちら から。

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 三橋経済塾第四期「経済時事」、開講しました。


 第一回目は「スイス国立銀行は、なぜ為替防衛ライン(1ユーロ=1.2スイスフラン)を撤回したのか?」から講義を始めました。インターネット受講の方は、間もなくアップされますので、少々お待ちくださいませ。http://www.mitsuhashi-keizaijuku.jp/


 1月20日、ついに長期金利の指標である新発十年債の利回りが一時0・195%となり、前日終値に比べて0・005%低下。取引時間中の過去最低水準を更新し、初めて0・2%台を割り込んでしまいました。


 さらに、五年物国債がついに「マイナス金利」・・・


国債長期金利0.2%割れ 日銀買い入れ 品薄感鮮明
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015012002000257.html
 二十日の国債市場で、長期金利の指標である新発十年債(三三七回債、表面利率0・3%)の利回りが一時0・195%となり、前日終値に比べて0・005%低下(国債価格は上昇)した。取引時間中の過去最低水準を更新し、初めて0・2%台を割り込んだ。
 長期金利の低下は、日銀による大規模な国債買い入れの影響で、市場で国債の品薄感が鮮明になっていることの表れだ。ただ、長期金利に連動する住宅ローンや企業向け銀行融資の一部などの金利は、既に極めて低い水準にあり、今後の低下余地は限られそうだ。
 日銀が昨年十月に金融緩和強化の一環で国債購入規模を拡大して以降、国債が手に入りにくい状況に拍車がかかり、二年国債はマイナス利回りが常態化。この日は新発五年債利回りも初めてマイナスになった。』


 昨日の日銀金融政策決定会合を経て、長期金利は何とか0.25%にまで戻しました。

 ブルームバーグなどの報道によると、金融市場は長期金利低迷を受け、日銀当座預金の超過準備に対する金利(0.1%)を引き下げなかったことを受け、国債が売られたとのことです。(売られたとは言っても、長期金利0.25%ですが・・・)。


 あれですかね。「金融市場」は日本銀行がECBやスイス国立銀行のようにマイナス金利政策を採用すると予想していたのでしょうか。

 はい、この時点で「マイナス金利」について混乱された読者の方が少なくないでしょうから、昨日の「おはよう寺ちゃん」でも解説しましたが、「各」マイナス金利について整理しておきます。


 冒頭の「五年物国債金利がマイナス」とは、金融市場で国債が売買され、あまりにも国債に人気が集中してしまった結果、額面以上の金額で国債が購入されてしまったという意味です。例えば、額面100億円の国債が「100.1億円」で買われてしまった、といったケースになります。

 額面以上の価格で国債を購入した以上、償還期限まで金融機関が国債を保有していると、損をすることになります(これがマイナス金利)。とはいえ、五年物国債などは流動性が高く、日本銀行の買い入れもあるため、極端に民間の資金需要が低い時期(今ですが)に事実上のマイナス金利で国債が買われることがあるという話です。別に、銀行側が政府に国債の金利を「支払う」というわけではありません。


 それに対し、ECBやスイス国立銀行が実施している「マイナス金利」は、
「域内・国内の銀行が、中央銀行の当座預金に準備率以上にお金を預けた場合、金利を「徴収」する」
 という話で、こちらは完全にマイナス金利です。つまりは、お金を貸した方が金利を支払うわけでございます。


 本来、中央銀行の当座預金の超過準備に対する金利は「ゼロ」が正しいと思いますが、日本銀行は0.1%の金利を付けています。理由は、
当座預金に金利を付けないと、銀行側が日本銀行に国債を売ってくれないため
 という、何となく本末転倒に思える事情があるためだそうです。銀行が日本銀行に国債を売ると(=量的緩和)、代金は日銀当座預金の残高を増やす形で支払われます。これも、日本円の通貨発行です。


 当座預金の金利がゼロの場合、銀行は「金利がつく」国債を日銀に売り、「金利がつかない」当座預金で支払われることになるため、国債を売ってくれなくなるのでは。ということで、日銀当座預金に0.1%の金利がついているわけです。

 もっとも、当座預金の金利が0.1%だろうが、ゼロだろうが、あるいはECBのようにマイナス金利であろうが、問題の本質は「銀行の貸し渋り」等ではなく、民間の資金需要の低下です。日本、ユーロ、スイスの三カ国・地域に共通する問題は、デフレにより民間の資金需要が乏しくなっていることなのです。


 なぜ、民間の資金需要が細っているかといえば、もちろん「充分な投資利益率」を確保できる投資先がないためです。問題は「投資先がない」ことであり、金融の目詰まりが起きていることではありません。どれだけ金利が低くても、投資利益を見込めない状況で投資する経営者はいませんし、いたら経営者失格です。


 以前、ご紹介いたしましたが、日本ですら「介護」や「メガソーラー」といった投資利益が見込める分野では、銀行融資と設備投資が活発でした。メガソーラーは今どうなったか、分かりませんが。問題は「投資利益率」であり、金利ではないのです。

 いずれにせよ、現在の日・ユ・ス三カ国・地域が抱える問題は、投資利益率が高い(というか「ある」)投資先がないためです。理由は、もちろん需要が拡大していないためです。

 というわけで、解決策は明々白々になります。すなわち、政府の財政出動です。


「国債金利が史上最低水準に下落し、金融市場が『国債不足』で困っている」
「長期金利が0.2%という異様な水準であるにも関わらず、十分に民間への貸出が増えない」
「中央銀行の国債買取で、政府の実質的な負債がどんどん減少している」


 上記三つを理解した上で、
政府の国債増発と財政出動により、民間の投資利益率が高まる形で需要を創出する
 以外のソリューション(解決策)を提言できる人がいるとは思えません。

 と、書きましたが、実際には大勢いまして、ここまで金利が下がったにも関わらず、
「日銀の更なる金融政策の拡大が必要だ」
 と、意味不明な論調を新聞で見かけます。「金利が上昇している」ならば、ともかく、現在の日本においてこれ以上の金融政策の「拡大」は不要です。


 必要なのは「需要」であり、デフレ期の国でそれが可能なのは「政府」以外には存在しません

 そして、防衛、防災、エネルギーといった分野で安全保障上の問題を抱えている我が国は、政府が財政支出の財源をデフレ(超低金利)に押し付けることが可能です。それにも関わらず、政府が国債増発をせず、安全保障強化を中心とした財政出動に踏み切らないとなれば、これはもう「怠慢」としか呼びようがないと思うのですが、いかがでしょうか。


「確かに怠慢としか言いようがない」と、ご同意下さった方は、↓このリンクをクリックを!

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