韓国の2008年2月の国際収支が発表されました。
 かなり予想外の結果でした。

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_01.html#BOPQ307-Q208

 何が予想外かというと、方向性ではなく、収支の悪化の加速化、つまりスピードです。
 まず、韓国の2月のCIFベースの貿易収支は赤字でしたが、1月よりは赤字額が減少していたので、FOBベース(国際収支)ではぎりぎり黒字になると思っていました。実際には、FOBベースでも赤字になり、これで今年に入り二ヶ月連続で貿易赤字です。
 経常収支の赤字は予想の範囲内でしたが、2月は資本収支まで赤字(純流出)になり、ついに後進国型双子の赤字(命名:現代経済研究院)になってしまいました。一般には双子の赤字と言えば、アメリカのように「経常収支」と「財政収支」が赤字化していることを言います。韓国のように経常収支と資本収支が共に赤字化するのは、実に珍しい現象なのです。
 正直、3月には韓国はこの双子の赤字になると予想していましたが(露骨な韓銀による為替防衛が始まったので)、2月に早くも双子の赤字になるとは驚きました。と言うか、外貨準備の減少が1月を上回っており、韓銀は2月も為替防衛の介入(ドル売りウォン買)を行った可能性が濃厚です。
 通常、為替介入が行われずに外貨準備高に大きな動きが無ければ、経常収支と資本収支が共に赤字化することは絶対にありません(そのように統計が作られるため)。
 ちなみに、世界には経常収支と資本収支が共に黒字化している中国という面白い存在があります。これは言うまでも無く、中国当局がひたすら人民元安誘導の為替介入を行い、外貨準備高が増加し続けているためです。
 また、色々と各国の国際収支について調べていくと、世界とは広いものです。韓国以外にもこの後進国型双子の赤字に最近陥った国がありました。しかも先進国です。
 実は、2005年のフランスです。この年のフランスの国際収支は、経常収支と資本収支が共に赤字化し、外貨準備高も減少していました。2006年以降はどうなったのか、また、05年になぜフランスが双子の赤字にったのかまでは、時間が無くて調べていません。誰かご存知なら教えてください。

 さて、韓国の話に戻りますが、韓国ウォンの対ドルでの下落が加速したのは実は今月(3月)からです。韓銀の為替防衛も報道されるようになりましたので、3月に韓国は外貨準備を大きく減らしたことは確実です。また、貿易収支もCIFベースでは改善が見られず、海外への配当金支払で3月と4月は毎年所得収支も赤字化するため、韓国の3月の経常収支は確実に赤字です。ということは、3月も再び後進国型双子の赤字になる可能性が濃厚です。
 その上、まずいことに韓国の貿易収支赤字、経常収支赤字額の増加や、外貨準備高の減少は、韓国のリスクを高め、更なる通貨安を引き起こします。そうなると韓銀は益々為替防衛の介入を行わねばならず(特にこの資源高の状況では)、当然ウォン買の介入は韓国の外貨準備高を減少させます。それが更に(以下略
 付け加えると、韓国の通貨安は、韓国の巨額な対外債務返済時に外貨へのニーズを高め、これが益々ウォン安をもたらします。
 このまま通貨危機まで突っ走るのかどうかは定かではありませんが、韓国経済は確実に悪い循環に入っています。この循環を断ち切るには、以下の条件が満たされる必要があります。
 ■ 資源高が収まる(貿易収支が黒字化する)
 ■ 韓国への海外からの投資が再び活発化する(ウォン安が収まる)
 ■ 対外債務について着実にロールオーバー(借換)ができる
 特に資源高については、韓国にはどうしようもない要因なので、韓銀もつらいところでしょう。韓銀は金利政策についても、利上げも利下げもできない状況で、据え置きを続けています。

 ところで、経済の危機という点では、韓国の状況の先を行っているように思える国があります。それはカザフスタンです。(ジンバブエではないです)興味がある方は、調べてみてください。

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http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/index.htm