ちょっと前に視聴したので感想を書きます。
あらすじ
2012年7月21日、土曜日。夏休み初日、中学1年生の小野沢未来は、弟の悠貴のお守りとして、一緒に東京のお台場へロボット展を見に来ていた。最近何かとイライラしていた未来は、「こんな世界、こわれちゃえばいいのに。」とインターネットに書き込む。
その時、マグニチュード8.0の海溝型大地震が発生し、地面が揺れた。レインボーブリッジの崩壊、東京タワー倒壊など、東京が大きな被害を受けている中、未来と悠貴はお台場で出会ったバイク便ライダー日下部真理と共に、自宅のある世田谷へと歩みを進める。その中で未来は、一体何を見て何を感じ、どう成長していくのか...
この作品は2009年にノイタミナ枠で放送された作品。
制作 ボンズ、キネマシトラス
当時は数年後に東日本大震災が起こるとは思わなかったんだろうな。
リアルタイムでこの作品は観ていなかったし、震災前と後では感想が変わる作品なんでしょうね。
東日本大震災を経験した自分としては、この作品で起きた出来事はあながち間違っていなかったように思います。
アニメ冒頭にも都内に大規模地震の発生を想定し、リサーチと検証を行ったとありますが、本当によくできていたと思いました。
主人公の未来とその弟・悠貴が幼いながらに親元に帰ろうとする姿を見ているとすごく応援したくなります。
そういう意味では、主人公を幼い子供に設定したのは非常に良かったですね。
また、主人公の未来は中学生でちょうど反抗期の年齢。
しかし、姉という立場から親には我儘は言えず、嫌々ながらも面倒見の良い性格をしている。
本当はまだ子供心があるのに、大人のふりをして周りからも大人として見られたがる。
夏休み前に学校から10年後の自分はどうなっているかを想像してレポートを書くよう宿題を出されます。
弟とお台場に遊びに来た際に、自分に当然のように未来があるのだと思いながら、課題の事を考える主人公。
その時に地震が発生し、陸橋は崩れ落ち、ビルの窓ガラスが割れ、倒壊。
レインボーブリッチは大きく形を変え道路上の乗用車は海に飛ばされる。
地震によって主人公と弟は離れ離れになり、必死になるあまり正常な判断ができなくなる主人公が序盤で描かれています。
また、地震が発生し、その場から動けなくなってしまう人達で溢れかえり、不安や焦り、怒りから自分勝手な行動を取る人達が多く見られるようになります。
帰路を絶たれ、お台場から新橋の方に渡るために警察の船に乗船しようとするのですが、自分勝手な人間が我先にとルールを守らないため、力のない子供は人ごみに押しつぶされてしまいます。
そんな描写を見ると怖いし、巻き込まれた子供の気持ちを考えると胸が締めつけられる思いになります。
余震は小刻みに発生し、そのたびに被害は大きくなる。
目の前で人が亡くなったり、遺体を見たり。
生々しく、地震の残酷さが描かれます。
2日目で救援物資が配給されるようになりますが、背景の地面にゴミが散乱しているのも書き込まれており、リアルに描いているな・・・って感心しました。
物語終盤に差し掛かると、弟が熱を出し、病院へ搬送されます。
弟はオペ室に運ばれ、その間に主人公は夢と現実を繰り返します。
夢の中で弟の死に直面し、目を覚ますと弟の姿があり、夢だったと安堵するのですが・・・。
ラストで実は弟が亡くなった事を主人公は思い出します。
夢と現実の境目が分からず、あまりにもショッキングな出来事で現実逃避、幻覚を見るようになっていました。
視聴者もラストにこの事実に気付くよう構成されていますが、見返してみると主人公の態度や弟との距離感、マリさんの主人公への対応が全然違うように見えてきます。
主人公は弟の死が現実のものと知って、弟を助ける事ができなかった事を後悔し、家のある成城まで来たにも関わらず、親に会えずにいましたが、幻覚の弟のひと押しで主人公は家へと戻ります。
親も息子が亡くなった事実を知るが、目の前で落ち込んでいる娘を励まし、娘が生きて帰って来たことを喜びました。
弟を亡くした主人公は立ち直れず、弟にもう一度会いたがりますが、主人公の携帯の未送信メールに弟が遺言を残していった事を知り、震災に巻き込まれているにもかかわらず、未来の事を考えている文章を読みます。
主人公は弟の遺言から少しづつ、歩き出す勇気を貰い、徐々に日常を取り戻していきます。
その日常に弟はもういませんが、弟の残したものは形にも形じゃないものにも、しっかりと存在しており、それに幸福を感じ、時に辛く苦しい気持ちになるのでしょうけど、現実に向き合って生きていかなければならないのだとそう思いました。
久しぶりにアニメで号泣した気がします。
非常に胸が締め付けられる作品ではありますが、かなりの良作だと思います。
テレビアニメでここまでメッセージ性のある作品も貴重ですし、作品としてもクオリティが高く、よくできています。
この作品はフィクションではありますが、東日本大震災や熊本地震でも主人公と同じ境遇になってしまった方々はいます。
そう考えると、決して非現実的な話ではなく、自分が当事者になる可能性もあるのでしょう。
この作品や現実に起きた震災から学び、そうならないように対策しなければならないな、と思います。