現在、国立の博物館は東京・京都・奈良・九州にあるが、どうも敷居が高くて堅苦しい感じの展覧会が多い。そんなイメージを払拭する展覧会が京都国立博物館で開催されている。身近な名称につられて久々に京都国立博物館に足を向け、特別展観「遊び」展を鑑賞した。
開催期間:平成25年7月13日(土)~8月25日(日)。
□ 遊び展のコンセプトと楽しみ方
次の3つの視点から遊び展が楽しめる。
①「遊び」という身近なテーマから古美術品に親しむ。
② 展示作品から昔の遊びを知る。
③「遊び」とは何かを考える。
ならば、遊びとは「通常の生活とは異なる特定の空間・時間の中での自由な活動で、心地よい緊張と喜びの体感を得ること」と言え、こうして博物館に展示を観に来ること自体も遊び・・・・・。
□ 展示品と9つのジャンル(ブース)
京都国立博物館の収蔵品等の中から「遊び」に関するコレクション・128点が選ばれ、次の9つのテーマに分けて展示されている。
①神々から人へ
神前に捧げる祭礼が人々の楽しみの催事に転化)
②酒宴の楽しみ
③年中行事
(非日常の楽しみを見出す)
④遊山(ゆさん)
⑤遊興-芸能と大衆-
⑥清遊-文人のたしなみ-(*)
⑦動物のたわむれ
⑧室内競技
(平安貴族は室内遊び-囲碁・双六・貝合せ等-天才)
⑨子供の遊び-雑技・曲芸
*君子は「琴棋書画(きんきしょが)」を嗜む。即ち音楽・囲碁将棋・詩文・絵画という4つの芸道を極めながら決して生活の糧にはしないのが、東洋の知識人が理想とする暮らし。心を通わす友人と知性を磨きあう清らかで豊かな遊びの世界。
【 珍しい・楽しい作品との出会い 】
展示作品の中で、看板やチケットにも使われている次の2点に注目
□ 釉下彩鹿島踊図皿・旭焼 / G.ワグネル作(京都国立博物館蔵)
神官姿の3人が踊る様子で、実物は旭焼の陶器皿の上に描かれている。
鹿島踊は鹿島の事触れとも言い、近世にその年の豊作・凶作について鹿島大明神の神託と称して全国に触れまわった人々の踊り。
作者のG.ワグネルとはゴッドフリード・ワグネル博士のことで、明治時代の初めに来日したドイツ出身の化学者。1878年(明治11年)2月から3年間、当時の京都府に雇われ京焼・清水焼の分野で、陶磁器や七宝の釉薬など新技術の導入・展開に貢献(⇒末尾プラスαの項参照)。
旭焼はワグナーが東京江戸川で焼いた陶器で、先に絵付けを行い釉薬をかけて焼成する釉下彩画が特色。
□ 豊臣棄丸所用の玩具船 / 重要文化財(京都・妙心寺蔵)
豊臣秀吉と側室・淀君との間に生まれた長男の棄丸(鶴松)用のおもちゃの乗り物(桃山時代)。
木製で長さ約2m・幅約1m・高さ約1m。4つの車輪が付いた台車の上に船が載っており、ひもを引っ張り動かす構造。甲板には子供が座る場所がある。外側からはほとんど見えないが船底部に直径約40センチ(他の4つは約16センチ)の車輪が1つ新たに発見され、新聞やテレビのニュースになった。これは船が上下に揺れる仕掛けで波乗りが体験できる構造になっている。
博物館は、この玩具船を「権力者の息子が持つ当時としては破格豪華な一点もの」としている。棄丸は僅か2歳で亡くなるが、朝鮮から東南アジアへの進出を夢みた秀吉が息子に抱く思いを、この玩具船に読み取れる。
□ 庭園・丸池前にある顔出し看板
観光地では良く目にするが、国立博物館には珍しい「遊び」展の作品を使った顔出し看板。展覧会のコンセプトに沿い、加えて、開催期間が学校の夏休みにあたり小中学生の来館増を視野にいれたアイデアか・・・・。
【 プラスα:平常展示館とワグナーの記念碑 】
□ 京都国立博物館の平常展示館
建て替え工事中で完成が待たれる平常展示館。来年(平成26年)春の開館予定。
□ 岡崎公園内のワグナー記念碑
功績を称えるため1924年(大正13年)に京都府によって建立された記念碑(幅は約4m)。
▽ 関連ブログを見る
①法然上人展と京都国立博物館/2011-04-30
http://ameblo.jp/taka-hannari/day-20110430.html
②王朝文化の華『陽明文庫名宝展』を鑑賞/2012-05-13
http://ameblo.jp/taka-hannari/day-20120513.html