ダイヤモンド大司教による死角なき、光線による擬似オールレンジ攻撃。
部屋のいたるところにあるダイヤが、光線を反射させていく。
「さあ、いつまでかわせるかな?」
光線は反射を続け、消えることはない。
余興でも楽しむかのように、少しずつ光線を放ち、増やしていく。
「くっ…………」
神経を澄まし、とにかく回避を行う龍連者。
止まるな、動け。
己に言い聞かせ、避けながら接近していく。
ダイレンロッドを形状変化させ、赤龍双竜剣・焔へと変える。
光線を掻い潜り、ダイヤモンド大司教に刃を向けた。
「天火星・″龍破山″!!」
山をも切り裂く破山剣に匹敵するという赤龍双竜剣。
それに焔の力も加わり、威力は格段に上がっている。
その刃が、ダイヤモンド大司教へ振り下ろされた。
「…………ぐわッ!」
龍連者は背後からの光線を受けてしまう。
だが、自分も手応えがあった。
「どうだ!?」
ダイヤモンド大司教は黙っている。
言葉も出ない程に効いているのだろうか。
このまま、畳み掛けるしかない。
「ハイィィィッ!!」
龍連者は剣を振るう。
しかし、ダイヤモンド大司教は自らの腕を盾のようにして、刃を防いだ。
「!?」
「貴公も知っておろう?。ダイヤモンドは硬いのだと」
全くダメージがない。
ダイヤモンド大司教は右腕に光を収束させていく。
それは剣の形となり、まさにビームソードと言えよう。
「っつあァッ!」
閃光の剣が赤龍双竜剣・焔と触れる。
バチンッ、という音と共に弾き飛ばされてしまう龍連者。
なんという光圧。
今度は走って接近をしていく。
龍連者は赤龍双竜剣・焔を前に構える。
振り下ろされた光が、刃を溶断してしまった。
「何!?」
熱量も凄まじい。
自分の出せる炎からは、とてもこんな威力は出せない。
「なら…………」
剣が駄目なら、己が肉体がある。
折れた剣を棄て、拳を握る。
自分は拳士なのだ。
困難あれば、自らの拳で砕いてみせる。
赤龍拳、久々に使うことになる。
「ハイィィィッ!」
光の剣を避けながらの、強烈なカウンター。
硬い。龍連者はすぐに距離をとった。
「殴った自分のが痛ぇ…………」
ダイヤモンドは叩くのには弱いと聞いていたが、それが素直に当てはまるわけではないらしい。
「それでも、俺はコイツを斃すッ!」
父が裏切り者と罵られたのは、コイツのせいだ。
「フフ…………。もうじき、この世は調停者の物となる。足掻いても無駄だ」
「!?」
調停者。
そうだ。確か、時を繰り返してる張本人。
「調停者…………お前、なぜそれを?」
「最初に言っただろう。私には見えるのだと。相手の心も、未来も。貴公にも視せてやろう」
「!?」
ダイヤモンド大司教の眼から、光が放たれる。
それを浴びた龍連者はまるでプリズムのような、万華鏡の内側のような空間に、立っていた。
「コイツは…………」
宇宙のイメージなのだろうか。
神秘的な空間だ。
″ここは私が視たものを映す″
目の前には、龍連者…………自分が倒れている。
気絶でもしたのか、死んだのかは不明だが、動く様子はない。
そればかりか、他のダイレンジャーも悉く斃れている。
「みんな!」
その先にいるのは、調停者であろう。
その男を、自分は知っている。
「シャダム……」
紅い鎧。
まるで、この世総てを焼き尽くす炎のような紅。
屍の奥でそれと対峙するのは、齊天大聖と無間覇王。








「!?」
気がつけば、元の場所に戻っていた。
何だろうか。
あれは幻であっても、夢ではない。
未来の記憶とでもいうのか。
「お前わかっているのか?シャダムがああなれば、ゴーマも……」
龍連者は理解していた。
この未来、生き残るのはあの場で立っている者しかいない。
「知っているということは変えられる。シャダムは己に忠誠を見せれば、厚く迎える男ゆえな」
「他のゴーマはどうする」
「知れたこと。ゴーマとは力の種族。強き者は生き、弱きは死ぬ」
調停者の創る世界は、単純にゴーマが支配する世界ではない。
ダイヤモンド大司教はそれを承知の上で、片棒を担いでいる。
コイツのような奴がいるから、嘉挧はゴーマを変えたかったに違いない。
「何となくわかってきたぜ………俺達がやらなくちゃならねえことが」
本当に戦うべき敵、もはやゴーマではない。
このような悪そのものと、戦わなくてはならない。