最近、胃酸の逆流で困っている方が非常に多いです。
「逆流性食道炎」という病気です。
主な症状は、①胸焼けや胸痛 ②呑酸(胃液が口や喉まで込み上げてくる) ③つかえ感
の3つです。
「長引く咳」の原因が、逆流性食道炎だったということもあります。
この病気には、通常「胃酸の分泌を抑えるクスリ」が処方されます。
PPI(プロトンポンプ阻害薬)か、H2ブロッカー(抗ヒスタミン薬)です。
胃の粘膜では、プロトンポンプと呼ばれる分子が、塩酸をつくっています。
プロトンとは水素イオン(H+)のことで、「酸」そのものです。
PPIは、プロトンポンプの働きを抑えることによって、
“もっとも強力に”胃酸の分泌を抑制します。
とくに、胃酸の出やすい食後に効果を発揮し、
その効果は、およそ24時間も持続します。
一方、H2ブロッカーのHは「ヒスタミン」のことです。
胃の粘膜では、プロトンポンプがヒスタミンの指令を受けて、塩酸をつくります。
H2ブロッカーは、ヒスタミンの受容体をブロックします。
すると、ヒスタミンとヒスタミン受容体が結合できず、プロトンポンプに指令がいきません。
そのため、塩酸がつくられるのを抑えられるわけです。
しかし、H2ブロッカーの胃酸の分泌を抑える力は弱く、
毎日使っていると、だいたい2~3週間であまり効かなくなってしまいます。
しかも、副作用がかなり強く、身体全体がかなりダメージを受けます!
(H2ブロッカーの副作用を調べると、ゾッとしますよ!)
夜寝る前にたった一回飲んだだけで、
翌日は身体を動かすのも大変なくらい、全身が重くてだるくなってしまった女性もいます。
重症になると、PPIとH2ブロッカーが併せて処方されます。
しかし、PPIもH2ブロッカーも、単に『胃酸の分泌を抑えている』だけで、
『胃酸の逆流を防ぐ機能を回復させる』わけではありません。
胃酸の逆流を防ぐ主な機能は、『下部食道括約筋』です。
下部食道括約筋部は、
食道の筋肉そのものが縮む力と、
横隔膜という筋肉が外側から押す力、
によって閉じられます。
つまり、食道の括約筋が弛緩して、胃の入口をしっかり閉じられなくなることが、
胃酸が逆流する根本的な原因なのです。
さらに、弛緩した食道は縮んで短くなるため、
胃が横隔膜をこえて食道側にずれてしまうこともあります。
これが「食道裂孔ヘルニア」です。
では、食道括約筋が弛緩してしまう原因は、何なのでしょうか?
よく「加齢」が一番の原因と言われていますが、
かなりの高齢でも、なんともない人もいます。
最大の原因は、『糖質の摂りすぎ』です!
砂糖も果糖も、過剰な糖質は筋肉を弛緩させますから、
胃腸のぜん動も弱くなり、食道の括約筋も弛緩してしまうのです。
ですから、治すには徹底して
「甘い菓子類・清涼飲料水・スポーツドリンク・果物」などを絶つことが最も重要です。
健康食品として販売されている「乳酸菌飲料」や「酵素」なども、
かなり大量の砂糖が入っていますから、避けたほうがよいでしょう。
果物は、糖質が多いだけでなく、
“食後に”摂ることで、より胃酸が逆流しやすくなります。
果物に含まれる有機酸が胃酸と反応すると、有害な酸に変質し、
胃の内容物を腐敗させるため、ガスが発生します。
そのガスがゲップで出るときに、胃酸が食道に流れて、
食道の下部の粘膜がただれてしまうのです。
また、「減塩」もしすぎると、筋力が低下して弛緩しやすくなりますし、
胃酸もかえって多く分泌されるようになります。
タバコやアルコールも、食道括約筋の締まりを悪くします。
高血圧の薬として使われる「カルシウム拮抗薬」や、
ぜん息の治療薬である「テオフィリン製剤」なども、
食道の筋肉を弛緩させる作用があるため、
胃酸が逆流する原因となります。
野菜や玄米を大量に摂ることも、胃酸の逆流を促す原因になります。
野菜や玄米に含まれる「不溶性」の食物センイを大量に摂取すると、
腸内で膨張して腸内ガスが発生します。
その結果、腸内ガスで膨張した大腸が胃袋を圧迫して、
胃酸を逆流しやすくすのです。
腹部を強く締め付ける衣類や、猫背も、
胃袋を圧迫して、胃酸を逆流しやすくします。
「肉類などの脂っこいものは、胃酸の分泌を促すので良くない」
と言われていますが、実は関係ありません。
肉類などの動物性タンパク質が不足すると、
胃腸や食道の筋肉も衰えて、弛緩しやすくなるのです。
胃酸が分泌されるのは、内容物を殺菌してタンパク質を消化するためですから、
けっして悪いことではないのです。
問題はあくまで、逆流を防ぐ弁(=食道括約筋)にあるのです。
治すには、食道括約筋を弛緩させる要因をできるだけ減らすこと、
そしてタンパク質を中心に栄養をしっかり補給して、筋力を強くすることです。
矯正のポイントは、「首」です。
食道を支配する神経は「迷走神経」で、首の両サイドを通っています。
また横隔膜を支配する神経は「横隔神経」で、頸椎の4番5番から分岐しています。
首の状態が悪いと、これらの神経が過度に緊張して、
食道や横隔膜の動きを悪くなります。
したがって、「首」を改善する治療と工夫が必要です。