本日、北千住駅を降りて、お盆の棚経先に向かって居りますと、駅のすぐそばで後ろから「お坊さん」と声を掛けられました。

びっくりして後ろを見ると、中年のとてもつらそうな顔をした男性が立っており、質問されました。

「仏教では自殺しても成仏できるんですか?」

その質問に私はドキッとしました。

今までこのような質問をされたことが無かったからです。

私は少し考えて答えました。

「自殺をすると、生んでくれた親を不幸にするし、周囲の者にも迷惑をかける。それらの事で積もりに積もった悪業の因縁によって、来世によろしくない結果を招くかもしれません。」

その答えを聞いて男性は「じゃあ、キリスト教も仏教も一緒だ、自殺したら地獄に堕ちるんだ」

私はすぐに否定しました。「仏教はキリスト教とは違います。キリスト教は信じない者は地獄に堕ちてしまいますが、仏教ではたとえ悪人であって地獄に堕ちても、修行を重ねる事によって必ず成仏できます。お釈迦様はどんな人も見捨てる事はありません。法華経にもお釈迦様を殺そうとした提婆達多という悪人でさえ、成仏できると説かれています。」

言葉に詰まりながら、どうにか説明する事ができました。

その男性は家庭も失い、職も失い、辛い事をたくさん経験してきたそうです。そして、「もうこの世にいる意味がわからない」そう言ってました。

私はそれを聞いた時、何も言えませんでした。

そこまで辛い事を経験したことがなかったからです。

別れる最後にこれだけ言いました。

「絶対に自殺はしないでください、それだけはどうか絶対に・・・」

あの男性があれからどうしたのかとても気になります。

僧侶の衣を着て外に出たからこそ、このような方とご縁を結ぶ事が出来ました。自分の無学さを感じると共に「死」とはなんなのか、そても考えさせられる出来事でした。