息があがってくるのを感じた。
心臓はドコドコと忙しなく動き、頭はクラクラと揺れている。
喉を通る息はアッと言う間に熱くなって、奥の方から灼けそうなほどだ。
ぜひゅぜひゅと息をするあたしに、レメクが訝しげな顔になる。
あたしは慌てて顔を背けた。
運良く音にあわせて体が離れる。しかし、すぐさま自動的にレメクの傍に舞い戻る。
ぁああレメク! こっち見ないようにっ!
声なき悲鳴をあげて、あたしは一生懸命レメクの視線から逃げた。
視界の端っこにいるポテトさんは、何故かはんなりイイ笑顔。
(ぅぁああん!)
あたしが半泣きになったのは言うまでもない。
息があがっている理由はとても簡単だ。
例え魔法で踊っているとはいえ、『踊っている』のはあたしの体。
動きが激しければ息だってあがるし、体もカッカと火照ってくる。まして慣れない動きの連続だ。体力などとうに尽きていた。
しかし、そんな状況でもあたしの体は見事に踊る。
息があがっていようがステップは間違えず、スピードは変わらず、姿勢だってこれっぽっちもフラつかない。
動きだけは実に優雅なものだった。
さすが魔法といったところだろう。……考えるとちょっと恐いものがあるが。
(と、言うかですね、ダンスって、もっと優雅でスイスイーッてモンじゃないんですか!?)
正直、全力疾走なみにキツいです。
こんなのを全曲(一時間!)踊りきったレメクとアウグスタの体力は、いったいどれ程のものなのか。汗一つどころか息一つ乱していなかったのだから、底なしと言う他無いだろう。
……やっぱり金ドラゴンと黒ドラゴンだ。
(ぬぁああ! 負けるかーッ!!)
あたしは根性で踏ん張った。
もう最初のウフフアハハな気分など、欠片ほどもありゃしない。
なんか踊ってる最中に気づいたこともあったのだが、それが何だったのかすら思い出せなかった。
とにかく踊る。息継ぎ必死。だんだんレメクが心配そうな顔になってきた。
(ま、負けないもんッ!!)
せめてこの一曲。
この一曲だけは踊りきってみせるのだ!
(絶対……最後まで!)
あたしは必死に気合いを入れた。
少しぐらいみっともなくてもいい。とにかく踊りきりたかった。
だってこれは、今だけの夢だ。
本当のあたしはとても小さい。だから、次に一緒に踊れるのは、きっと何年も先の事になるだろう。
それは本当に仕方がないことだけど、やっぱりちょっと……少し寂しい。
だから今、奇跡がおきているうちに、この曲を最後までを踊りきりたいと思った。
嘘で固めたまやかしの時間でも、全部を全部、踊りきってみせたい。
いつか本当に踊れるようになるまで、目標として心に持ち続けていられるように。
『いつか』を夢見て頑張れるように!
そのためには、途中で意識失っちゃいましたなんて、駄目なのである!!
(……レメクと一緒に!!)
最後まで!!
差し伸べた手をレメクが取る。
くっついて離れ、くるりと回って……
(……あれ?)
あたしは目をぱちくりさせた。
離れようとしたあたしの体が、すっぽりとレメクの腕の中に収まっていた。
予定外の制止に、体が一瞬だけ変な動きをする。
だが、それすらも閉じこめられて、あたしはパチパチと瞬きをした。
(なんで?)
おかしい。ここは、少し離れてそれぞれがステップを踏むはずの場面だ。
いくらあたしの脳みそがちっちゃくても、レメクの素敵ダンスを忘れるはずが無い。
ここは間違いなく、ステップの場面だった。
(……レメク?)
あたしはレメクを振り仰いだ。
いつもよりずっと近い場所にあるレメクの目は、明かりが乏しいせいで色が全く違って見える。
濃く深くなっているその色は、下手をすると黒に見えるほどだ。
(踊り、違うよ?)
首を傾げると、レメクもかすかに首を傾げた。
少し困っているような顔だった。
けれど、その口元には淡い微笑が浮かんでいる。
(……レメク?)
ふと、レメクが
体が動く。緩やかに足がすべり出し、すぐにそれは記憶の中のダンスと『同じ』になった。……いや、違う。
動きが少し、ゆっくりだ。
「……他人と同じ事をしようと、思う必要はありません」
穏やかな声が優しく言う。
「基本は同じでも、踊り方は人それぞれです。足運びも、早さも、いくらでも変えようがある。……あなたは、あなたにあった踊り方をすればいい」
あたしは目を瞬かせた。
頭の中に、華麗に踊るアウグスタの姿が浮かぶ。
彼女の踊りは鮮やかで、力強く、けれど優雅で美しかった。
あれだけの踊りを習得するのに、いったいどれだけの時間を費やしたのだろうか。彼女の動きは全てが洗練されていて、無駄な動きが一つも無かった。
あの時と同じ音楽で、動きだけは(ポテトさんの魔法で)同じだったけれど、あたしは体がついていかなくて、ぜひゅぜひゅ息を荒げていた。
アウグスタの踊りは、今のあたしにはできないのだ。
「……それは別に、あなたの恥ではありませんよ」
レメクの手があたしの腰を引き寄せる。
くるりと回るターンは川の流れのように滑らかで、風の流れのようだったアウグスタの時とは違っていた。
ゆったりと穏やかに、けれどどこか力強い。
レメクに導かれるようにして踊るダンスは、あの時に比べてずっとゆっくりだった。動きそのものは似ているのに、動き方がかなり違う。
(……息……しやすい)
体が楽だ。
スイスイと泳ぐように動いていく。
なにがどう変わったのかはよくわからない。けれど、息はだいぶ楽になった。
レメクがあたしに向かってちょっと微笑む。
あたしもにっこりと微笑んだ。
なぜか急速に体の力が抜けていく。
時間がきたのだ。……そう理解した。
背中にレメクの背中を感じた所で、ピタッと綺麗にあたしとレメクの動きが止まる。ラストは背中合わせだ。
あたしの真後ろに、レメクの熱がある。
(……あたた……かい)
その瞬間、あたしの視界はグラッと後ろに傾いた。
(……あれ?)
近かった空が遠くなり、背中にあった温もりが消える。
それは後ろに倒れていっているせいか、それとも元の大きさに戻っていっているせいなのか、あたしにはわからなかったけれど──
「ベル!」
ただ、慌ててあたしの体を抱き留めようとするレメクの腕の感触だけが、薄れてゆくあたしの意識に強く残ったのだった。
※ ※ ※
……誰かが頭を撫でてくれているのを感じた。
優しくて暖かくていい匂いのする手だ。
あたしは嬉しくなって自分から頭を擦りつけた。
優しい手はちょっと驚いたように
幸せだと……そう思った。
こんなことでこんなに幸せな気分になれる自分自身も、とても幸せだと思った。
暖かい気持ちが体の奥から溢れてきて、体中がぽかぽかしている。
その幸福にうとうとと微睡んでいると、すぐ近くでぼやく声が聞こえてきた。
「失敗しましたねぇ……やはり器が完全に仕上がっていないと、負担が大きくなるんですか」
妙に単調な声だった。
はっきり言って棒読みだ。
(……これは……ポテトさん……)
「……お義父さん……」
その声に対し、すぐ耳元で別の声が抗議した。
低く押し殺した声は、どこか唸り声にも似ている。そして、何故か籠もったような響きをしていた。
それは左耳を押し当てた暖かいものから響いてきており、微かな振動をあたしの左半分に与えていた。
「えーと、そんなに怒った顔しなくても? ちょっと疲れて、その上ちょっぴりお腹が空く程度の『負担』ですから。……にしても、あれだけ食べさせてまだ足りないんですから、許容量はかなりのものですよね。さすがはメリディス族というか……」
「それ以前に、この子はまだ小さな子供だということをお忘れなく!」
「それを言うなら、あなたが紋章術を扱った時のことはどうなります? あれはたしか、三つの時じゃありませんでしたか? ……いやまぁ、あなたと他の子を一緒にするのは、確かに非常に危険ですが」
「その三つの時に、私は危うく死にかけたのですが? ……器が完全に出来上がっていない状態で力を使えば、その反動は必ず本人に返るという見本です。……この子はただでさえ成長が遅れているんです。未だこんなに小さいんですから」
優しい手が労るようにあたしの髪を撫でる。
あたしはちょっとしょんぼりしながら、暖かい胸元に頬ずりした。
確かに、あたしの体は小さい。孤児院の中でも小さい方だった。
そもそも、孤児院に大きな子はあまりいなかった。
草や花や野菜だって、栄養を与えなければ小さいままで、時にはそのまま枯れたりもする。ぐんぐん大きくなるためには、それなりの栄養が必要だということだろう。
あたし達子供もそれと同じで、大きく立派な体になるにはご飯がいる。
そしてそれをほとんど与えられない孤児達は、やせ細った小さな体になるしかなかったのだ。
そして、その中でもあたしの体は特に小さかった。
今だって、年下の……それこそ五歳になるかならないかという子と同じぐらいに小さい。
ここまで顕著に成長が止まっているのは珍しいらしく、孤児院の連中には親が小さかったんだろうとかいろいろ言われた。
失礼な話だ。あたしのお母さんは、レメクほどでは無かったけど、ケニードぐらいには大きかったのに。
(……そうよ。将来はレメクぐらいおっきくなって、レメクをがっちり守ってあげるんだから)
そんなコトを考えた途端、優しい指があたしのほっぺたをぷにっと押した。
「…………?」
しばらく間を置いてから、またぷにぷにと頬を押していく。
……ナニゴト?
「……なにをやってるんですか? レンさん」
「いえ……起きてるような気がしたものですから」
どういう確かめ方だろうか?
「起きてるというより、夢うつつですね。……ふむ。回復力の高さは子供といえど侮れませんか。やはりメリディスの血……いえ」
そこで区切って、低い美声の主はくすくすと笑う。
「それ以前に、『伴侶』の匂いですね」
「…………」
「おや。なぜ睨むのです? メリディスが嗅覚に優れ、『匂い』であらゆるものを判別するのはあなたもご存じでしょう?」
……どういう種族特徴だ?
あたしはちょっと眉を顰めた。
まるで犬か何かのようだ。
「先天的に巫女の力をもち、第六感に優れ、超人的な五感を有する……。確か、伴侶と定めた相手の匂いで、身体能力が飛躍的に引き上げられるんですよね? さすがにこればかりは嘘だろうと思ってましたが、どうやら本当のようですね」
ほほぅ。
あたしはぽややんとした頭の中で感心した。
うちの一族は、そんなオカシナ特徴まで持っていたのですか。初耳です。
まるで変態のようではないですか!
と思ったらいきなり鼻を摘まれた。
「ぷなっ!?」
「……なにやってるんですか? レンさん」
「いえ……なにか、一言言わなくてはいけないような気分になりまして」
てゆかどーして鼻を摘むのです!?
あたしはぱかっと口を開けた。
鼻を摘まれては息ができません!
妙に重たく感じる両手を動かして、まごまごと無体を強いる手に攻撃を仕掛ける。
しかし! 鼻を摘む指は離れてくれない!!
心持ち眉を垂れさせて目を開くと、ちょっと驚いたような顔のレメクがすぐそこにいた。
「あぁ、失礼。起きてしまいましたか」
「……あれで目が覚めないと思ってたんですか? レンさん……」
その左隣にいるポテトさんが、非常に懐疑的な眼差しをレメクへと向ける。
レメクは無視だ。
「気分はいかがです? 体に不調はありませんか?」
「……その前に、鼻を摘むのをやめませんか?」
生真面目に問いかけてくるレメクの向こう側で、ポテトさんが大真面目にツッコミをいれる。
一拍置いて指を離したレメクに対し、あたしは抗議の『ぽかぽか攻撃』を行った。
……何故か二人に半笑いされましたが。
(むぅ……っ!)
「あぁ、はいはい。……肩を叩くなら、もう少し背中側にしていただけるとありがたいですね」
あたしのぽかぽか攻撃に、レメクが半笑いで注文を入れる。
攻撃されてるというのに、なんという暢気なセリフだろうか!
あたしは目をキッとつり上げた。
もっと抗議する意味で今度は胸を叩こう!
「……はいはい」
なぜ半笑いを深めるのです!?
「……逆効果ですよ、お嬢さん。レンさんを喜ばせてどうするんですか」
改めてツッコミをいれるポテトさんに、あたしはガーンッとショックで固まった。
叩かれて喜ぶだなんて、そんな! レメクにそんな趣味があったなんて!?
「違いますよ誤解ですよ趣味ではありませんよ。……お義父さんも、誤解を招くような言い方はしないでください」
「……誤解を招く原因は誰にあると……?」
さすがのポテトさんもジト目だ。
あたし達がいるのは大広間の壁際、そこに設置されたカウチの一つだった。
無論、休憩所のように帳が降りていないため、二人(と、あたし)の姿は周りから丸見えになっている。
そんな場所にこの目立つ男二人が並んで座っているものだから、周囲には奇妙に遠い人垣ができていた。
ちなみにあたしはレメクに抱っこされた状態である。太腿グッジョブ。
(というか、やっぱりここに帰ってきちゃったのねっ)
おそらく、あたしが気絶している間に帰ってきたのだろう。
できれば外で時間つぶしをしたかったのだが、そうもいかなかったようだ。
お腹のグルキュー具合からして、そう長いこと寝ていたわけでは無い模様。ならば、まだまだ夜会は続くということなのである!
……げっそりだ。
そしてお腹が空きました。
「まぁ、いいですけど……。ところで、お嬢さん」
ん?
しょんぼりと俯いた所で声をかけられ、あたしはきょとんとポテトさんを見上げた。
ポテトさんは口元をほころばせるようにして柔らかく微笑む。
「良い夢は見れましたか?」
バタバタと遠くで何かが倒れる音がした。
レメクがギョッとなってそちらを見るが、あたしとポテトさんは無視である。
「うんっ! 最高だったわ!」
「それはよかった」
ポテトさんは、それはそれは素晴らしい笑顔を浮かべた。
……土砂崩れみたいなすごい音がした。
さすがに無視できず、あたし達は揃ってそちらへと視線を向ける。
そして、見なかったことにした。
「お二人とも、なかなかに素敵なダンスでしたよ」
「でも、最後までアウグスタみたいには踊れなかったの……」
「それはそれでいいんですよ。多少のアレンジは許されますから。それに、後の踊りのほうが、雰囲気がでていてよかったです」
「本当!?」
「ええ。バッチリです。私が保証いたします」
「えへへへ。そうだったらいいんだけどなぁ……」
「……何を暢気なことを言っていますか。ベル。あなたはその結果、意識を失うほど消耗してしまったんですよ」
平然と会話をするあたし達に対し、レメクだけがちょっぴり額に汗をかいている。たぶん、良心の差なのだろう。
チラと問題の場所を見れば、大きな熊男さん達が一生懸命倒れた人々を搬出していた。
ものすごい呆れた目でこっちを見ているのは、来客の貴族達と会談していたアウグスタだ。
人が減っちゃった大広間の中央で、まさに女王として輝いている。
綺麗な瞳がキラリと告げます。
『オマエタチ。アトデチョット、話ガアル』
あたしは目をそっと伏せました。
『オミヤゲハ、イリマセン』
アウグスタの目がギラッと輝いた。
「いいですか、二人とも」
目で会話するあたし達に気づかなかったのか、レメクが嘆息混じりに声を落とす。
あたしはそそくさと視線をレメクに戻した。
「今後二度と、あんなことはしてはいけません」
「「…………」」
あたしはポテトさんをチラッと見た。
ポテトさんもあたしをチラッと見る。
以心伝心。心はガッツリ。
しかし、レメクがそれを許さない。
「また同じようなことをしましたら……私は、お二人とは三日間、口をききません」
「「!!!」」
あまりのショックに固まった。
そんなあたし達に、レメクはただ深くため息をつく。
「場所が場所ですので、あえて詳しくは申しません。……ですが、ベル。私は昔、言いましたね? 急がなくてもいいと。かならず、あなたは大人になるのだから、と」
「……う、うん」
「なら、誓ってください。もう二度と、無理やりあんな姿にはならないと。ちゃんと時を経て、成長するのを待つと」
「…………うん」
少々どころかものすごく未練があったが、あたしは渋々頷いた。
隣にいるポテトさんが、なんとも言えない微苦笑を浮かべる。
「普通、『私に』念を押しませんか? あんな魔法、私以外に使える者がいるとは思えませんが」
「あなたは、相手の意向を無視しませんから」
あっさりと言って、レメクは自らの名付け親をじっと見つめる。
「相手がそれを願わなければ、あなたは叶えようとはしない。……つまり、そういうことです」
「……なるほど」
ポテトさんは小さく笑う。それはどこかくすぐったそうな笑みだった。
「そうですね。あなた方に対する『私』という者は、そういう者でしたね」
「???」
そうでない場合のポテトさんというのも、何処かにいるんだろうか?
首を傾げたあたしの前で、ポテトさんがあたしを見つめて言う。
「しかし、残念です。成長したお嬢さんは、とてもとても美しかったのに」
なんですと!?
あたしはその瞬間、顔を輝かせてレメクに向き直った。
って、あああ!? なんで視線を逸らすのです!?
「おじ様!?」
「い、いえ! ベル、あれは正しくない姿ですからっ」
「でも、おじ様!」
「きちんと一つずつ年を重ねて、本当に大きくなったら、ちゃんと言いますから!」
何年後の話ですか!?
あたしはぎゅむーっと唇を引き結んだ。
レメクは必死にそっぽ向いてる。
そしてポテトさんはニヤニヤだ。
「まぁ、それが無難でしょうね。言葉にすることによって、深まる感情というのもありますから」
「……お義父さん……ッ」
「いえ、あなたのことはよく知っていますから。深まろうがすでに手遅れだろうが、じーっと何もせずに、ずーっと見守っていくんだろうなってことはわかってます」
「?」
首を傾げるあたしを膝に座らせたまま、レメクが非常に居心地悪そうな顔になる。
手遅れって何だろう?
「あなたの性格からすれば、それも当然ですか。お嬢さんはあんなにいい匂いをさせていたのに、残念なことですね」
いい匂い?
あたしはポテトさんを見上げ、次いでレメクをじっと見つめた。
「いい匂いって?」
何故か視線を逸らすレメク。その顔を敢えて覗き込むと、ものすごい目でポテトさんを睨みだした。
……なんだろう。前屈み事件の時にソックリだ。
「残念も何も、あんな偽りの姿での」
ぐぅーるるるー。
「……種族特徴など」
きゅっきゅるるー。
「「…………」」
くっくるぴー。
レメクとポテトさんがあたしを見た。
あたしは自分のお腹を押さえてしょんぼりと俯く。
……我慢ならんのだなぁ……あたしの腹は。
「……ベル」
……あい。
「……何が食べたいですか?」
あたしの目が涙に煌めいた。