Q:太極拳の健康効果は普通の体操とどう違うの?太極拳の諸要領とのつなが
りは?
A:外見だけでは 太極拳はゆっくり行っている体操にも見え、初心の段階では外形も健康効果もそれに近いかも知れないが 太極拳の独特な修行方法により 次第に色々な健康効果が現れてくる。例えば、太極拳は気の重みまで考慮し、体の前後左右上下において天秤にかけるように精確に均衡が取れる動きをするから、転倒防止の体作りの効果がある。また、「気沈丹田」の要領で足裏の湧泉まで気を下げたりすることによって、血圧が下がる効果もある。太極拳の「周身一家」(訳:体が一丸となる) や「一動無有不動」 (訳:一度動き出すと体の至るところ動かない個所はない) の修行方法から 肢体の協調性が生まれ、(以下専門用語訳略・他記事参照) 「鬆沈」・「緩慢」の要求から下半身が鍛えられ、それに「虚領頂勁」・「尾閭中正」・「主宰於腰」の要領が加わることによって足腰が強くなる。一方、「虚静」の効果から副交感神経が興奮し交感神経が沈静化することによって自律神経の調整ひいてはストレスの解消に効いたり、「気貼背」や「気斂入骨」の積み重ねから 骨の量が増え、老年性骨折や骨粗鬆症を防いだり、「以心行気」・「以気運身」の効果から気の流れ・血行が良くなったりする。こうして 意念によって体の中から出てくる効果は体操とは一線を画すことになる。
Q:太極拳の不当な練習や扱いによって逆に健康を損なうことはあるか。
A:あるだろう。体の「鬆」の程度以上に関節に負荷をかけると関節の損傷が生じることもあるし、「気」と呼吸を混同して息を止めたりすると呼吸系統その他に悪影響を及ぼすこともある。また、「涵胸」を「凹胸」にしたり膝に過度に負荷をかけたりすると 内臓や骨格・関節にマイナスとなる。一方、太極拳を格闘技として相手と勝負すること、即ち太極拳の武術的側面は太極拳の本来の目的で健康目的が主となった現代においても、消えることはない。勝負目的の場合は方法によっては 「気」の消耗になることもあるし怪我することもありうる。相手とレベルが近い時は、特に要注意だ。無論、武術そのものは勝負・実戦に比例してレベルアップするのだが、健康の視点においては 節度が必要だ。「真気」をむやみに消耗すると健康を損なうことになりかねない。
Q:太極拳の武術目的と健康目的とは両立できないの?
A:勿論できる。両者の共通するものは「気」だ。上記健康効果の根本は体の中のこの「気」だ。「以心行気」・「以気運身」は五臓六腑を滋養する効果がある一方、武術の為の各技法を支える土台ともなっている。 太極拳の武術的側面を、格闘ではなく勝ち負けを気にしないゲーム又はいざとなった時の護身術とした場合は健康を損なうどころか、より一層太極拳に引かれ修行に励むと益々気が充実となって健康に資することになる。ポイントは度を超えないことだ。太極拳名人の中でも 腕比べに過度に「真気」を消耗することによって寿命を縮めた噂を筆者は幾例も耳にしている。