道草---その1--- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

道草---その1---

毎年毎年この季節になると、思い出す話がある。



今を遡る事3年前……。

イチロウが小学一年生になった直後の話。


その頃、イチコはユミコのお腹の中。

そんな頃の話。





小学校の登下校にも少し慣れた4月の終わり……。

ツワリの少しひどかったユミコに、イチロウは毎日毎日土産を持って帰ってきた。


それは下校の途中に通る公園や駐車場に生えている小さな小さな花。


普段歩いていても気にも留めないような小さな小さな花。


それを毎日毎日ツワリで苦しむ母さんに一輪摘んで帰って来ていた。




時にそれは小さな小さな青い花だったり……。

タンポポとも菊とも分からない小さな黄色い花だったり……。




ユミコは小さな牛乳瓶に水を入れて、毎日毎日その花をテーブルの上に飾っていた。




ユミコ     「いつもありがとう。」


の一言に……


イチロウ    「ヘヘ……。」


と照れ笑いで返すイチロウ……。


これから生まれてくるであろう妹と……それに苦しむ母の気を少しでも紛らわせれば……。

そんな事を考えていたのかどうかまでは分からないが……


イチロウは雨が降っても、毎日毎日一輪摘んで帰って来ていた。




仕事から帰るとテーブルの上にある牛乳瓶の花。




冷蔵庫からビールを持ってきながら、ユミコがそんな話を聞かせてくれる。




タロウ     「そうか……イチロウも優しい所があるんだな……。」

ユミコ     「ええ……毎日気にしながら帰って来るんですって……。」

タロウ     「オレと違って気が利くんだな……。」

ユミコ     「そうね……タロちゃんに『花』なんてもらった事無いからね……。」


正直、墓穴だった。





そんな事が一ヶ月程続いたある日……。

帰宅すると、ユミコがいつものようにビールを冷蔵庫から持ってくる。


ユミコ     「お疲れ様……ねぇ……これ見て……。」


テーブルの上には牛乳瓶に一輪の黄色い花が……。


タロウ     「おっ!!今日はパンジーか………。」

ユミコ     「そう……パンジーなのよ。」


















えっ???

パンジー?????















ユミコ     「パンジーでしょ?」

タロウ     「パンジーだな……。」







以下次号。


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