ユミコの答え | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

ユミコの答え

その晩、家へ帰ったら……妻のユミコは既にイチコと一緒に夢の中であった。


まぁ仕方ない……明日の晩にするとしよう。


そして翌晩……夕飯食べて風呂に入って……

イチロウもイチコも寝てから話そうと思っていたら……ユミコはそのまま起きてこなかった。


やっと話が出来たのは、川畑の手紙が着いてから4日ほど過ぎていた。


人間とは不思議なもので一晩寝ると気持ちが随分落ち着くものである。


イライラ・ムカムカしていた気持ちもどこへやら……

今はすっかり「来るなら来いっ!!ワタシは受けて立つっ!!」ってな思いになっている。


タロウ     「なぁ……お前……どう思う?」


手紙を見せた後……率直なところ聞いてみた。


ユミコ     「タロちゃんはどう思うのよ?」


サクッと聞き返された。


タロウ     「え?オレ?」

ユミコ     「そうよ……タロちゃんよ。」

タロウ     「そうだなぁ……。」


ユミコに本心を聞かれて……少々戸惑うワタシ。


ユミコ     「謝罪文とお金は元々期待して無いんでしょ?」

タロウ     「まぁね……。」


元々期待はしていない。

ビクビクしてもらう為の「仕掛け」でしかないのだから……。


ユミコ     「もしブログが訴えられたらどうすんの?」

タロウ     「訴えられたらか~~~。」

ユミコ     「どうすんの?」


多分間違いなく……先日の3択であれば


3.「実録・ネコ裁判『ネコが訴えられました』が訴えられました」というブログを立ち上げてネタにする。


であろう。

しかも今度は実名で。


タロウ     「ネタにする。」

ユミコ     「やっぱりね。」


ガチャン……

ふぅ……と一息つくと冷蔵庫からビールを持ってきてワタシに差し出す。


ユミコ     「今度訴えられたらブログはワタシが書くわ。」

タロウ     「ん?……なんで?」

ユミコ     「そうすれば『実録・ネコ裁判『ネコが訴えられました』が訴えられました』が訴えられる

         可能性は低くなるでしょ。」

タロウ     「なんでそうなるの?」

ユミコ     「書いてる人がタロちゃんじゃなけりゃ……訴えたって無駄になるし……『タロちゃんが書いた』

         かどうかの因果関係も証明しなきゃならなくなるでしょ。」

タロウ     「なるほど……。」


我が嫁ながら、少々キレるトコロはキレる。


タロウ     「でも……川畑もこのブログを見てるっぽいよ。」

ユミコ     「だったら今度書く人はそれこそ……ワタシ以外の他の人……例えばプリさんとかモンチー

         とかルイちゃんとか……ワタシの弟だっているし……そうそう……鬼頭さんだってどうよ。」


例え、『【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」』が仮名を使って書いていたとしても……

それでも訴えられて負けたとしても……次の『実録・ネコ裁判『ネコが訴えられました』が訴えられました』は

誰が書いているかわからない以上、訴えようが無い。


ワタシが身内の第三者に話したところで、裁判は「公開が原則」である。

誰に相談しようとも話そうとも……元々公然であるが故、全くの自由だ。


そしてその内容を話を聞いた人間が書くのであれば……ワタシは一切関知しないし責任も無い。


こうなってしまっては川畑は『【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」』は訴えられても

『実録・ネコ裁判『ネコが訴えられました』が訴えられました』は訴えられなくなる。


タロウ     「時々お前……アタマいいね……。」

ユミコ     「『時々』は余計よ。」


ちょっとムッとしながらワタシのビールをグイッっと飲む。


ユミコ     「ところでタロちゃん……。」

タロウ     「なに?」

ユミコ     「町内の他の人が同じ様に川畑に訴えられたらどうすんの?」

タロウ     「そうだなぁ……そうなったらしゃしゃり出てでもネタにするな……。」

ユミコ     「ぷふっ……やっぱりね……。」


笑いながらそういうと次に……


ユミコ     「タロちゃん……ココまで言わせて……まだ気付いていない?」


え?

結局ユミコは「訴えたら誰か判らない代理を立てて書け」と言っているのではないのか?


ユミコ     「ミッションQってタロちゃんが練ったあの案は……カタチはちょっと変形したけど……

         その効力は今も尚、効いているのよ。」

タロウ     「……え?どういう意味?」

ユミコ     「わからないかなぁ……。」


更にグイッっといくと、こう続けた。


ユミコ     「町内の回覧板より……タロちゃんはもっとでっかい武器を使うって言ってるの。

         それは訴えられてからずっと……今現在も、それを使っている……

カツヲ市どころか日本全国……ひょっとしたら海外の方々までに知れ渡る『武器』をっ!!」

タロウ     「はぁ~~~~っ!!!」


言いたい事がわかった。


ユミコ     「アメブロ内で上位に喰い込んで……雑誌にも載って……出版の話も来て……

         『また訴えたらネタにする』まで言われて……訴える人はいないでしょっ!!」

タロウ     「そりゃそうだ……。」

ユミコ     「ミッションQは『訴える・回覧する』がキモだったけど……今のミッションQの変ったところは

         『ブログにする・ネタにする』って事なのよ。」


アタマいいね……。

ところで本当にウチの嫁???


ユミコ     「逆にタロちゃんが『訴えた・回覧した』って事になれば……向こうも『ブログを訴える』って

         やってくるかもだけど……。」

タロウ     「そうしたら……。」

ユミコ     「でも……そうしない予定でしょ?」

タロウ     「うん。」

ユミコ     「じゃ……にらみ合いで平和じゃない……。」


正に「東西冷戦」であろう。

それはそれで結構である。


お互い「提訴」と「ブログ」という核兵器を持ってのにらみ合い。

それでワタシの家族と町内の平和が守られるのであれば、これ幸いである。


ユミコ     「だから安穏としてOKだと思うよ。」

タロウ     「参りました。」

ユミコ     「なにが?」

タロウ     「いやいや……別に……。」


もう一本、缶ビールを取りに冷蔵庫へ向かうワタシ。

愛するユミコに……今日は珍しくエビスビールで乾杯である。






以下「続編・あとがき」最終回




PS.店の外は7:3で読者Bの勝ち