謝罪文 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

謝罪文

川畑      「あの……山田さん……。」

タロウ     「はい?」


……………。


川畑      「昨日の電話でのお話ですが……謝罪文の事なんですが……。」

タロウ     「なにか?」

川畑      「ワタシが謝罪文を書けば……回覧や掲示は控えてくれるって言うのは本当ですか?」


ふむ……川畑はワタシとワタシの家族を、裁判という形で世間に公開したというのに

ワタシがその顛末と結果を町内に向けて公開するのには随分ビビりがある様子である。


タロウ     「ええ……町内会長あたりで留めるつもりですが……。」

川畑      「そうですか……わかりました。」


随分しおらしい様子である。

確認の為に聞いてみた。


タロウ     「謝罪文を書くつもりですか?」

川畑      「……………そうですね……そういう方向で考えてみようと思います。」


おぉ……一晩寝て……ゆっくり考えて……少しはワタシの言い分も気持ちもわかって頂けた様子である。


川畑      「なにか……書き方みたいなものはありますか?」

タロウ     「ええ……それなら……。」


一応ミッションQをしたためた封筒を縦長に四つほどに折ってズボンの後ろのポケットに持って来ていた。


タロウ     「じゃあ……これを……。」


ミッションQを手渡す。


長かった……。

実に長かった……。


ミッションQを郵送してからここまで……長かった。


今日、11月2日。

ミッションQは川畑に渡った。


タロウ     「一応、中に……今支払ってもらった20580円の事と……昨日電話で伝えた用件2と3の

         詳細が書いてありますから……。」

川畑      「はぁ……。」

タロウ     「謝罪文に関しては『この通りに』と書いてありますが……まぁ……アナタの気持ちが

         伝われば……多少文面が変わっても結構です。」


ここまでしおらしい川畑と話をしていると……ワタシも少々「やりすぎたかな」なんて心の隅で思い始めた。


川畑      「で……期限は?」

タロウ     「ええ……中にも書いてありますが……一応今日から2週間の返答期間と思っております。」

川畑      「では……それを過ぎたら公開ですか?」


やはり「公開」に随分ビビっている。


タロウ     「まぁ……すぐに公開って事にはしませんよ……

         2週間が過ぎてもまだ公開されていなければ……『公開される前』に返答して下さい。」

川畑      「わかりました………あ……あと……。」

タロウ     「なんですか?」

川畑      「昨日お話頂いた……用件2の金額ですが……。」


12万某の事であろう。

これを交渉しようと言う様子である。


正直、12万某は……ワタシの方で掛かった実費である。

だが……川畑がキチンと謝罪文を提出してくれるのであれば……弁護士費用とミドリちゃんのバイト代の

約半分ほどでも納得しよう……。


額面的には約8万ほどでも良いであろう……。


タロウ     「ああ……それも謝罪文をキチンと書いてくれれば……考えますよ。」

川畑      「そうですか……わかりました。」


川畑がどんな人間に対しても……「いきなり裁判」などと言う、愚挙を起こさなくなってくれれば……

そして周りの人達と持ちつ持たれつ……譲り合い許しあう……そういう人になってくれれば……

ワタシはそれで本望である。


その為の謝罪文であり……ミッションQなのであるから……。


タロウ     「いいですか?」

川畑      「あ……はい……。」

タロウ     「では……。」




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川畑宅を後にして……エレベーターに乗る。

そして……改めてエレベーター内の「ゴミの日表」を眺めながる。


情報というものは……正しいものも間違ったものも……良い物も悪い物もある。

それらを取捨選択するのは……全て個人の判断である。



ポケットの中の20580円を取り出して……じっと見つめる。


しわくちゃの2万円……。


いくらいきなり訴えられたとはいえ……ワタシも少々やりすぎたのかもしれない。


川畑がしおらしくなればなる程……そう思う自分がいた。

福沢諭吉の顔が悲しそうに見えた。




以下次号。