逆転 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

逆転

タロウ     「用件3は謝罪文の提出です。」

川畑      「………で……どんな?」

タロウ     「とりあえずワタシが見本を作りましたから……

         それも受け取って参考にしてもらおうと思っていましたが……。」

川畑      「……はぁ……。」


随分「骨」が抜けた様子である。

それともこれから反論するための下準備であろうか……。


タロウ     「要するに『突然、キチンとした事実確認もせずに裁判してすいません』って事ですよ。」

川畑      「………………。」

タロウ     「それに加え……『今後はキチンと事前に相手に確認する・相談する・突然訴えない・地域の

         交流に参加する』のお約束です。」

川畑      「……そんなの……こっちの勝手じゃないですか……っ!!」


打てば響く……。


タロウ     「ああ……勝手ですよ……勝手ですけどね……。」

川畑      「じゃあワタシは書きませんよっ!そんなものっ!!」

タロウ     「……まだ話、終わってませんから続けますね。」


無視。


タロウ     「川畑さんが謝罪文を書いて提出して頂けるなら……それを町内の回覧板……掲示板で

         公開させてもらいます。訴状と判決文も添えて。」

川畑      「………なっ!!」


かなりビックリしている。


タロウ     「何をビックリしてるんですか?

         裁判は公開が原則ですから訴状と判決文を公開する事に何の問題もありませんけど。」

川畑      「そんな事したら……困るじゃないですかっ!!」


かなりビビっている。


タロウ     「何で困るんですか?

         公開の場で白黒ハッキリつけたいという主旨だからこそ、訴訟したんじゃないんですか?」

川畑      「……そんな事……知らなかったんですよ………公開だなんて……。」

タロウ     「……知らない……???」


………………。


………………。


………………。


タロウ     「いい歳した大人が『知らない』なんて言い訳で使うべきじゃないですよ。

         『知らない』なら知識をつけてから使うのがスジでしょ?」

川畑      「………………。」

タロウ     「法律を知らなければ、破って良いなんて理屈は今更通りませんけど……。」

川畑      「………………。」

タロウ     「こっちはあなたの『知らない』と『粗雑な主張』に4ヶ月も付き合わされてるんですから。」

川畑      「………………。」


ちょっと怒ってみた。

だが説明はあくまでも事務的に……。


タロウ     「続けますよ。」

川畑      「………………。」

タロウ     「謝罪文を書くのも書かないのも、あなたの判断です。どっちでもいいです。」

川畑      「じゃ……書きません。」


無視して進める。


タロウ     「もし謝罪文が提出されなければ……ワタシが『報告書』として訴状と判決文と

         『この様な謝罪文を要求しましたが頂けませんでした』と事の顛末を記載したものを

         回覧板と掲示板で公開するだけです。」

川畑      「………なっ!!………なっ!!」


更にかなりビックリしている。


タロウ     「用件2と3は全く別物だと考えて下さい。2が認められなければ2の措置を……

         3が認められなければ3の措置を、ワタシの方で実行するだけですから。」

川畑      「……………。」


言葉も出ないらしい。

あんまり可哀想になってきたので、少々手の内を明かしてあげる。


タロウ     「まぁ……素直に謝罪文を書いてくれるなら……ワタシも鬼じゃありませんからね……

         町内会長さんに『こんな事がありました』って報告するくらいに留める予定ですけどね。」


最大限のネタばらしである。


川畑      「それでも町内会長には公開するんでしょ……?」

タロウ     「それくらいは仕方ないですね……。」


こんなに公開される事を嫌がるのであれば……そもそも「裁判」なんて手段を取るべきではなかった。

「無知」とは時に激しく自分の首を絞めるものである。


タロウ     「『すぐに返答せよ』とは申しません。2週間ほどは待ちます。」

川畑      「……………。」


……………。


……………。


……………。


川畑      「フフ……フフフ……フフフフフ………。」


電話の向こうで急に笑い出す川畑……。


川畑      「ハハハハハ……あなた結局なにがしたいんですか!?

         ……わかってます……わかってます……結局お金が欲しいんでしょ?」


いや……あんたに言われたくない。


川畑      「回覧板ってなんですか?ワタシはさらし者ですか?

         そんな事して楽しいですか?人が困る顔見て楽しいですか?」


それも……あんたに言われたくない。


タロウ     「ま……『自己責任』ってヤツですよ。」


サラリと流してやった……。

コチラからはこれ以上譲るつもりもオマケするつもりもサラサラ無い。


さてどう出るか……


タロウ     「何かワタシの用件でわからない事ありますか?それと言っておきたい事ありますか?

         無ければ以上ですが……。」


電話での伝達となったが、ミッションQは届いた。

後は川畑の反応待ちである。


川畑      「あ………ちょっと待ってください。」


これで電話を切られると思ったのか川畑……。

なんとか話を引っ張って、少しでも譲歩してもらおうと思ったのか……。


この前の「二度と直接話す気も、書類を受け取る気もありません」発言から一転である。


川畑      「あ……あ……ちょっといいですか……山田さん……。」


一生懸命、質問事項を考えている様子である。




以下次号。