烈火 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

烈火

「あんたっ!!!こんなところでなにやってるんですかっ!!!!!??????」から

多分10数秒経過しているであろう……。


無言でワタシを睨み続ける川畑。

せっかくなので笑顔で返す。


次の言葉が出ない様子である。


後ろを振り替える。


…………………。


そこには「アチャー顔」の親父さん………。

首を傾げたまま止まっている。


もう一度振り返る。


眼から眉から真剣に怒っている様子の川畑。

顔面蒼白……。

多分、怒って赤くなるのを通り越して白くなってしまったのであろう……。


いつもフルフルの唇は……今日はフルフルしていない………。

いや……ひょっとしたら視認出来ない程に超音速でフルフルしているのかもしれない。

……その真相は分からない……。


川畑      「ちょっとっ!!アナタっ!!なにしてるんですかっ!!!!」


30秒ほどして、再び川畑が怒鳴った。


「えっ?……ワタシ……何か怒られる事しましたか?」

率直な疑問がワタシの頭をもたげる。


タロウ     「いや……送った書留を受け取って貰えなかったみたいですから……直接持ってきました。」

川畑      「…………………。」


ドサっとスーパーの袋を床に無造作に降ろすと……


川畑      「ちょっと表に出てくださいっ!!表で話しましょうっ!!!」


と言い放つと足早に外に出て行った。

内心「中で話した方がいいのでは?」と思ったが、川畑が外が良いと言うのでお付き合いして出る事にする。


外に出ると腕組みをして仁王立ちしている川畑。

少々威圧しているのつもりであろうか………ちっとも怖くない。


川畑      「アナタっ!!裁判の事を親に話しましたねっ!!!???」

タロウ     「ええ。」


サクっと答えたその返答に更に語尾を荒げる。


川畑      「なんて勝手な事をしてくれるんですかっ!!!!!」

タロウ     「事情話さないと……話にならんでしょ?」


眼が更にマジに怒っている……さっきの疑問を聞いてやろうか……

「ワタシ……何か怒られる事しましたか?」って……。


川畑      「アッ……アマタのした事はッ……アナタのした事は…………。」


噛んでいる。

激しく噛んでいる……。


余程怒っている様子である。


川畑      「完全な個人情報の漏洩ですっ!!!」

タロウ     「はい???」

川畑      「完全なプライバシーの侵害ですっ!!!」

タロウ     「はい???」

川畑      「完全な個人情報保護法違反ですっ!!!」

タロウ     「はい???」

川畑      「完全な営業妨害ですっ!!威力業務妨害ですっ!!」

タロウ     「はい???」

川畑      「完全な名誉毀損ですっ!!!侮辱罪ですっ!!!」


もう返す言葉が出ない……。


川畑      「いいですかっ!!!」


なにが?


川畑      「この件に関してワタシは弁護士と相談の上、アナタを訴えますからっ!!!」

タロウ     「はぁ……。」

川畑      「アナタと話すことはありませんからっ!!!」


ワタシの横をすり抜けて、店の中に入ろうとする川畑。


いや……ちょっと待て。

「表で話そう」と提案したのはそっちじゃなかろうか……?


まだワタシは何も話していない。

言われっ放しである。


ここで逃げられてはワタシがミッションQを渡しに……あわよくば話し合いに来ていると言うのに

「言われ逃げられ」である。


タロウ     「ちょちょちょ……。川畑さん……。」


あくまでコチラは冷静に……。


川畑      「なんですかっ!!!」


怒っている。

まだ絶好調で怒っている。


タロウ     「アナタは言いたい事を言って結構ですが……ワタシはまだ何もアナタに話してませんよ。」

川畑      「なにがっ!!!」

タロウ     「アナタが話し合うと言ったんでしょ?ですから表に出た。」

川畑      「アナタの不法行為を指摘したんですっ!!!!」


ああ……取り付く島がない……。


タロウ     「まぁ……不法行為云々と言うのであれば……ワタシの話を聞いてからにしたらどうです?」


とりあえず、コチラが一旦非を認めた風に装って……川畑の気を静める努力をする。


タロウ     「だいたい、コチラの主旨を述べた書面を受け取らないから持って来ただけですよ?」

川畑      「でもっ!!!アナタは裁判の事を……

         勝手にウチの家族に話しているじゃないですかっ!!!」

タロウ     「いや……まぁ……それもね……とりあえず話を聞いて頂かないと………。」

川畑      「…………………。」

タロウ     「訴えるなら訴えるで結構ですけど、コチラの主張も聞かないってのもおかしな話ですよ。」

川畑      「…………………。」


多少は聞く耳を持ち出す川畑。


川畑      「………まぁ……アナタの事は訴えますっ!!!……でも……まぁ……

         言いたい事があるなら言っておいてくださいっ!!!」

タロウ     「ああ……そうさせて下さい。」

川畑      「全部弁護士に相談して決めますからっ!!!」

タロウ     「ああ……そうして下さい。」


どうやらちょっとは話が出来る様子である。


川畑      「で………どうぞっ!!!!」


やっと私の番である。


タロウ     「ですから……ワタシの方としまし………」

川畑      「あっ!!!!!ちょっと待って下さいっ!!!!!!」


途中で遮る川畑。


タロウ     「なんですか?」

川畑      「ちょっと豚コマ……冷蔵庫にしまって来ますからっ!!!」


…………………。


豚肉は要冷蔵である。

その点は認める。





以下次号。