親父さん---その3--- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

親父さん---その3---

タロウ     「なんとか連絡を取って渡してもらえないでしょうか?」

親父さん   「………う~~~~~~ん………。」


…………………。


暫くの沈黙の後、うつむいていた顔を上げて……こう切り出した。


親父さん   「息子も28になります……。」

タロウ     「はぁ……。」

親父さん   「とっくに成人してますし……大人として責任も義務もある立場です。」


確かにそうである。


親父さん   「正直ワタシは関係無いんじゃないですか?」


そう来たか……。


そういうスジも確かにある。

だが………息子が受け取らないものを親が代わりに預かる事に何の問題があるのだろう……。


親父さん   「ワタシとしても連絡の取れない息子の事で……要求されても困ります……『成人』ですし。」

タロウ     「はぁ……。」


「成人しているから私は関係無い戦法」に切り替えた様子である。

このまま「渡してください」「預かれません」じゃラチが開かないと思ったのであろう。


…………………。


親父さん   「逆に………あなたの親は……息子宛の書類を受け取りますか?」

タロウ     「ええ。もちろん。」


即答である。


…………………。


タロウ     「息子がいくつになってもウチの親は精一杯責任取りますよ。」

親父さん   「そうですか?」

タロウ     「親子ですから……ワタシも息子が成人してもそうするでしょうし………

         そういうもんじゃありませんか?」


…………………。


親父さん   「まぁ……ウチとソチラとは事情も違いますし……。」


いや……ウチと比べ始めたのは「親父さん」……アナタなんですけど……。


親父さん   「息子の事は息子の事なんで……ワタシと関係の無い……余所でやってもらえます?」


今度は「親子関係バッサリ切り落とし戦法」である。


親父さん   「煮るなり焼くなり……ソチラが息子を訴えるなり……好きになさってください。」

タロウ     「……………。」

親父さん   「……息子もそれを望んでいるんでしょう?」


…………………。


こうなると……これ以上押し問答をしても仕方が無い……。

だが、ワタシとしてもこの話の中で不思議に思う箇所が数点あったので、その辺を聞いてみる。


とりあえず話題を変えてみる事にした。


タロウ     「えっと……息子さんとは連絡が取れない状態って事ですよね?」

親父さん   「ええ……そうです……。」


再確認である。


タロウ     「電話番号もご存じないと言うことですよね?」

親父さん   「ええ……そうです……。」


更に再確認である。


タロウ     「店と同じ町内に息子さんがアパートを借りているのに……連絡が取れない状態ですよね?」

親父さん   「ええ……そうです……。」


更に更に再確認である。


タロウ     「息子さんが駐車場賃料を毎月払っているのに……連絡が取れない状態ですよね?」

親父さん   「ええ……そうです……。」


更に更に更に再確認である。


タロウ     「8月から連絡が取れないのに毎月月末に現金で払っているんですよね?」

親父さん   「………………。」


…………………。


親父さん   「息子とワタシは関係ありませんから……!」


おっ!!

少々キレ気味である。


親父さん   「ウチの内情もアナタと関係無いでしょう……!!」


それは勿論、仰るとおりである。

……だが……説明してくれたのも「親父さん」である。


親父さん   「………そろそろ営業時間になりますし……帰っていただけませんか!!?」


語尾に威圧感を帯びてきた。

先程までの「ウチの内情からお察し下さい」から「迷惑だから帰ってください」に方針転換である。


こうなってきては、もうどうしようもない……。


親父さんには悟られぬように……内心徐々に「帰ろうかな」モードに切り替えていく。


…………………。





ギィ~~~~~。

……ガサゴソ………ガサゴソ…………………。





誰かが入ってきた。

今日一番のお客さんであろうか………ならば今が引き際である。


チラっと入り口の方を見てみる。


両手に一杯のスーパーの買い物袋………一個……二個……三個……。

半透明の中にはニンジン・レタス・キュウリにタマネギ……ジャガイモに……ネギが袋から飛び出している。





「あんたっ!!!こんなところでなにやってるんですかっ!!!!!??????」


大きな声で私に向かって吠える。





そこに立っていたのは、なんと「川畑カズオ」御本人………。

エプロン付けて上からジャンパー羽織って……両手一杯のスーパーの袋……。


「あんたっ!!!こんなところでなにやってるんですかっ!!!!!??????」

ってこっちが言いたい………。




以下次号。