親父さん---その2--- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

親父さん---その2---

タロウ     「と………言う事はコチラのお店に息子さんは現在働いていないって事ですか?」

親父さん   「そうです。」

タロウ     「でも……駐車場は使っていると……?」

親父さん   「そうです……。」


と言って……


親父さん   「あっ!でも……駐車場は店名義ではありますが……使用料は貰っています。」


と打ち消す。


タロウ     「ああ……そうですか………。」


別に駐車場の賃料云々はこの際関係ない。

だが、せっかく答えて頂いたので……。


タロウ     「使用料は納めておられるんですか?」


などとオウム返ししてみる。


親父さん   「あ……ええ……毎月月末に……現金で…。」

タロウ     「そうですか………。」


…………………。


…………………。


…………………。


親父さん   「……で………ワタシは何をすればいいんですか?」


暫くの沈黙の後、親父さんが切り出した。


タロウ     「あ……まぁ……ワタシはコチラで働いていると思ったから来たんですけどね……。」


ぶっちゃけそうである。


タロウ     「この前、電話しても息子さんは『用があるなら訴えてくれ』の一点張りですしね……。」

親父さん   「はぁ……。」

タロウ     「送った書類すら受け取らないんですよね……現に先日返ってきてますし……。」

親父さん   「はぁ……。」

タロウ     「コチラの第一声も聞かずに『用があれば訴えてくれ』ってのも変な話だと思いませんか?」

親父さん   「はぁ……まぁ……。」


一応主旨は判ってくれている様子である。


タロウ     「………と……言う事で……『訴訟費用額確定申立書』と

         『事後処理に係る請求並びに要求』の入ったこの封筒を息子さんに渡していただけます?」

親父さん   「………えっ!?」


かなりビックリした模様。

流れから行けばこうなる事は分かると思っていたが……。


タロウ     「このまま渡してくれればいいですから。」

親父さん   「……えっ?ワタシがですか?」

タロウ     「ええ……そうです。」

…………………。


タロウ     「電話もダメ……郵便もダメ……では……こうする他にないでしょう……?」

親父さん   「はぁ……。」

タロウ     「渡していただくだけでいいんです……

         その内容を受けるか受けないかは、息子さんの判断ですから……。」

親父さん   「はぁ……。」

…………………。


親父さん   「……正直ね……ビックリしているんですよ……。」


真剣な眼差しでコチラを見ながら語りだす。


親父さん   「裁判してたって言うのも今日、初耳だしね…………

         事前に話も苦情も事実確認もしていないって事にも………。」

タロウ     「………はぁ……。」


泣きそうな眼である。


親父さん   「今日、突然ソチラ様が尋ねて見えて……こんな話でしょ………普通ビックリしません?」

タロウ     「………まぁ……御気持ちはお察しします。」


本当に御気持ちがわかる。

ウチなんか突然の裁判所からの手紙であった。


ワタシも内容がアレじゃなかったら泣きそうになってた……。


親父さん   「……で………どうすればいいんですか?」


……親父さん………さっきも聞いたぞ。

でも聞き返したくなる気持ちも分かる……。


改めて言う。


タロウ     「ええ……ですから……この封書を息子さんに渡して頂ければ結構なんです。」


ここはいくら親父さんが泣きそうでも譲れない……ミッションQを渡すために来たのだ。


親父さん   「……う~~~~~~~~~ん………。」


困る親父さん。

うつむいてしまった……。


タロウ     「なにか不都合でも?」


うつむいたまま……腕を組んだまま……


親父さん   「……実は……店の一件があってから……息子とは連絡取っていないんですよ……。」

タロウ     「………えっ?」


店の近所に引っ越して住みながらの絶縁状態か?


タロウ     「……ちなみに最後に連絡を取られたのはいつですか?」


重苦しい空気の中……ちなみに聞いてみる。


親父さん   「……ハッキリとは覚えていませんが……お盆よりも前かと……。」

タロウ     「……そうですか………お母様も?」

親父さん   「……ええ………そうだと思います。」


むぅ……。

エラい事情になってきた。


この日、11月1日。

2ヶ月以上も前から連絡が無いという事であろうか……。


タロウ     「息子さん……ケータイとか持ってますよね?」

親父さん   「ええ……持っていると思います。」


持っているに決まっている。

訴状に書いてあったケータイ番号に、つい先日も掛けた。


タロウ     「それで連絡取ってもらって……お渡し願う事は出来ませんか?」

親父さん   「……う~~~~ん………。」


更に困る親父さん。

相変らずうつむいたままである。


親父さん   「わかりませんもん……番号……。」

タロウ     「……え?」


ワタシが知っているケータイ番号を親は知らないということだろうか?


タロウ     「ワタシ……知っていますが……教えましょうか?」

親父さん   「………いえ………結構です……………事情・内情をお察しください………。」


そう言うと口篭る。


色々な家庭の事情があるのであろう……あまりツッコむとプライベートな事なので

そろそろ退散しようかと思い始める……。


…………………。

…………………。

…………………。


…………………ん?


第二回口頭弁論の日に……杉森のおばさんは「居酒屋カワバッタ」から出てくる川畑と引田君を見ている。

それに「駐車場の賃料を現金で月末に貰っている」と親父さんは言っている。



なんか不自然でないか???



退散しようと思いつつも……もう少し押してみる。





以下次号。