いきなりお電話---その3--- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

いきなりお電話---その3---

---業務連絡---


Q「電話の内容を録音してますか?」


A「録音していません。正確には、ワタシの声だけ固定電話の横に置いたケータイで録音しています。

  川畑の話は全て、私の記憶メモリーの中です。

  ちなみに録音という方法を取ったのは今回が初めてです。

  今までは完璧に記憶で書いていました。

  ワタシの記憶は人のソレとは違うらしく……

  その点は「ナマの会」にいらしたのんちゃん先生もビックリしていました。」


以下本編。

-----------------------------------




相手が熱いからといって、コチラも熱くなっては収集が着かない。

とりあえず裁判所からの書類を、どう渡すかだけは決めなくてはいけない。


なので、極力落ち着いて話しかける。


タロウ     「あのーいいですか?川畑さん……判決ってのは結果ですよね?わかります?結果です。」
川畑      「だから?」
タロウ     「それはそれでキチンと受け止めましょうよ。」
川畑      「……だからそれはアレですよねっ!

         ワタシの方がキチンとアレしなかっただけであって……。」


ああ……もう……どうしよう……。

全然会話になっていない。
仕方が無いので話題を変える。


タロウ     「だけどこの裁判……事前に少しも話し合いとか無いですよね?」
川畑      「そうですよ!何が問題なんですか!?」


いや……なんでも噛み付かないでくれ……。
まるで自分の尻尾を追いかけてクルクル回るイヌの様である。


タロウ     「ちょっと落ち着いてね。いいですか川畑さん……。」
川畑      「………………。」


暫くの沈黙。


タロウ     「落ち着きました?川畑さん?」
川畑      「………落ち着いていますよ。さっきからずっと落ち着いて話をしていますよっ!!」


だからその語尾が落ち着いていない。


タロウ     「裁判所って言うのは……当事者間で話の折り合いがつかない時に使うところなのよ……。」


イチロウが本っ当に悪い事をした時に、諭すように話しかける。


タロウ     「ウチからの話に少しも耳を傾けずに……どんな要求をされるかもわからずに……

         それを拒否するってのはちょっとおかしいんじゃないですか?」


かなりまともな事を言ってみた。


川畑      「だからそれを裁判でやってくださいって言ってるんです!!

         裁判するのは自由ですからっ!!」


ああ……また出た……「裁判」……。

そして自由を履き違えるな……。


タロウ     「だからその第一歩も……ワタシ出して無いですよ?」


それを聞いてまた怒り出す。

電話がフルフル音を拾ってしまいそうな勢いである。


川畑      「あなたと話していても埒が明きませんから!!弁護士に相談して連絡します!!」
タロウ     「ああ……是非そうして下さい。」


本当に……本当に……弁護士さんに話してくれ……。


そしてワタシはゆっくり弁護士さんと話し合う。

お茶と煎餅でもかじりながら……。


タロウ     「弁護士さん相談の上、弁護士さんからワタシに電話していただけます?」
川畑      「弁護士は直接電話できません。法律で決まっています。そんな事も知らないんですか?」


本当か?
本当にそんな法律あるのか?
だったら示談とかどうするんだ?
少なくともワタシの国では聞いたことが無い。
ツッコんでみようかとも思ったのだが……また揉めそうなのでやめた。


タロウ     「まぁ……なんでもいいです。だったら弁護士さんの連絡先をワタシに教えてください。」
川畑      「いいですっ!相談しますっ!」
タロウ     「とりあえずですね……訴訟費用額確定処分申立書は

         あなたに渡さなくちゃいけませんから、手渡しか郵送か決めてください。」
川畑      「誰が言ったんですか!?」
タロウ     「これは裁判所です。裁判所の会計係りの指導です。」

川畑      「……………。」


一瞬押し黙る川畑。
裁判所の言う事しか聞けないのか……。


川畑      「まぁ……いいです。弁護士と相談の上、連絡します!!」


電話はブチンと切れた。


かなり疲れた……。

イチコと会話をしている方が、まだ理解できる。


「ふぅ………受け取る意思は無い様子だが……とりあえず郵送しとくことにするか……」

ちょっと一息……とタバコに火を着けたら……店の電話が鳴った。


ミドリ     「はい……もしもし山田屋です……………はい…………少々お待ちください。」


と電話を置く。


ミドリ     「なんか……川畑さんて人………。」


ぶっ!!ゴホゴホ………


どうした川畑!!
なにか言い残した事でもあるのか?


とりあえず出てみる。


タロウ     「はい……もしもし換わりました。」
川畑      「あ……もしもし……いいですかっ!!これは弁護士と今、相談した結果ですっ!!

         いいですかっ!!」


え?
……ちょっと待て………相談したって……電話を切って一分も経ってないぞ……。


川畑      「一回しか言いませんからキチンと聞いてください。」
タロウ     「……………。」
川畑      「今後、一切、あなたからの電話及び手紙は受理いたしません。

         これは弁護士と相談の上決めたワタシの……いえ……ワタシ共の判断であり決断です。」
タロウ     「……………。」
川畑      「この決定に変更はありませんっ!!何か異議がありましたら、裁判所を通じてどうぞ。」


ブチッ……!!


電話は切れた……。
ツッコむ間も無く電話は切れた……。
言い逃げである。


仕方が無い……とりあえず訴訟費用額確定処分申立書とミッションQは郵送としよう……。
受け取らないなら受け取らないでコッチには考えがある。
全て想定内である。



どうやら川畑の言う「弁護士」とは……彼の頭の中に住んでいる小人さんの弁護士のようである。

この一点のみ、想定外である……。

                              いきなり3 イラスト:

以下次号。