バイトのミドリちゃん--EP4-- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

バイトのミドリちゃん--EP4--

結婚を決めたミドリちゃん。

早速パンフレットを持って帰った様子。


あれから1週間も経たない頃である。




ミドリ     「新婚旅行が決まりましたよーーー。 」

タロウ     「早っ!!」


なんと手際の良い事か……。


タロウ     「ところで…彼と付き合って何年だっけ?」

ミドリ     「2年半位かな……。」

タロウ     「その辺は妥当だな……。」

ミドリ     「それに彼とは『そのうち結婚しよう』って話してましたから……。」

タロウ     「なら思い切って踏ん切りがついたと言う事でいいんじゃない?」


友達と言うより……親と言うより……歳の離れた兄の気分である……。


タロウ     「両親への挨拶とかって終わってるの?」

ミドリ     「ええ……。むこうにもこっちにも遊びに来たり行ったりしてますから……。」

タロウ     「きちんと了承済み?」

ミドリ     「ええ、もちろん。……双方揃っての食事会はこの後やりますけど……。」


一応筋道は通す様子である。

ちょっと一安心。


タロウ     「で……いつ行くの?新婚旅行。」

ミドリ     「えっとですね……11月の終わりか12月の初め……。」

タロウ     「え?」


なんとまた……急である。


タロウ     「なんでまた……そんなに慌てて……。」

ミドリ     「だって……前に行ったのが今年の一月でしょ……。」


エピソード2の「マイケル無実イタヅラ事件」の事である。


ミドリ     「一年に2回もハワイに行くなんて……ブルジョワジーじゃないですかっ!!」


目がキラキラしている。

忠告は何を言っても聞いてくれそうに無い……。


そしてそれだけの事で結婚を急ぐ……。

先週から驚きっぱなしである。


タロウ     「結婚式はどうするのさ?」

ミドリ     「そ・れ・は……。」


輝きっぱなしの目……。

触れてはならない項目に触れたような気がする。


ミドリ     「ハワイで海外ウエディング!!」


予想通りである。


タロウ     「参列者は?」

ミドリ     「えっとですね……ワタシの親、ワタシの兄夫婦、ワタシの友達二人……以上。」

タロウ     「え?……旦那の親兄弟は?」

ミドリ     「仕事があるから来ないって……。」


なんとサッパリした事か……。


いや……確かに結婚式は新婦が主役で新郎なんかは脇役である。

実際ワタシもそうであった。


だが……「ちょっと置いてきぼりすぎやしませんか?」と思うのである。


ミドリ     「兄夫婦も結婚式を挙げて無かったですから……ついでにやっちゃうそうです。」


随分お気楽な様子である。

家族環境によって、ここまでお手軽に結婚式が出来るのが……逆に羨ましい。

ワタシの場合はご多分に漏れず……中の上の結婚式だった。


ミドリ     「あっ!!タロウさんっ!!」

タロウ     「なに?」

ミドリ     「この前みたいにイタヅラしないでくださいよ!!」

タロウ     「ああ……大丈夫。」

ミドリ     「もう引っ掛かりませんからっ!!」


だが「引っ掛からない」と言われれば「引っ掛けたくなる」のが人情である。



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結婚式&ハワイ旅行出発の3日程前……。



タロウ     「あのさー。ミドリちゃん。」

ミドリ     「なんですか?」

タロウ     「前にハワイ行く時の機内食でさ……『フィッシュorミート』って聞かれなかった?」

ミドリ     「聞かれましたよー。」

タロウ     「その時にさ………今度行く時は『ハラル』って言ってみ。」

ミドリ     「なんですか?それ?」


興味津々のミドリ……。

もう既に、マイケル事件を忘れている模様。

なかなかの喰いつき。


タロウ     「ほら……イスラム教の人ってさ……戒律に厳しいじゃない。」

ミドリ     「はいはい……。」

タロウ     「ハラルって言うと……イスラム教の戒律に則った、特別な機内食が出るんだよ。」

ミドリ     「ええええええぇぇぇぇぇ!!!!」


小型爆弾セット完了。


ミドリ     「すごいですね!イスラム教!!」

タロウ     「ああ……一回やってみ。」

ミドリ     「是非是非!!」


あとは報告を聞くのみ。



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帰国後……



ミドリ     「タロウさーーーん。」

タロウ     「なに?」

ミドリ     「またやってくれましたね!!」


怒りプンプンの様子。


タロウ     「なにが?」


わざととぼける。


ミドリ     「ハラルですよ! ハ! ラ! ル!!!」

タロウ     「ププピフフフフハハフ………。」


おかしくて声にならない……。


ミドリ     「ワタシの機内食だけメインディッシュが載ってなかったじゃないですかっ!!!」


ププピフフフフハハフ………。


腹を抱えながらもなんとか機嫌を直そうと、

話を強引に切り替えて結婚式に持っていく……。


商売人の飲食店主の得意技である。



……………。


タロウ     「で……結婚式は?」

ミドリ     「よかったですよーーーー。あ……写真が出来たら持って来ますね。」

タロウ     「おおっ!是非是非見せてな。」


うまく話しに乗って、その場を取り繕う。


ミドリ     「すっごいきれいですよー。私に惚れちゃいますよー。」

タロウ     「ああ……ああ……そうかもそうかも。」


「少しずつ機嫌取り作戦」……滞りなく進行中である。


ミドリ     「それでねーーー。それでねーーー。あのねーーー。」


こうなったら女は止まらない。

ウチのユミコと同じである。


「少しずつ機嫌取り作戦」……見事に進行中である。


ミドリ     「ワタシ達全部で8人だったんですけど……。」
タロウ     「ほうほう大所帯だね。」

ミドリ     「それでねーーー。すごいんですよっ!!部屋が!!」

タロウ     「ほうほう……。」

ミドリ     「コンドミニアムって言うんですけどね……部屋の中にキッチンとかがあって、リビングもあって

        一つの4LDKのマンションみたいになってるんですよっ!!」


??????


タロウ     「平たく言えばマンション一戸?」

ミドリ     「そうです。豪華なマンションを貸切りって感じです。」


……………。


タロウ     「え?……参列者もそのままハワイに滞在?」

ミドリ     「もちろん。」

タロウ     「最後まで?」

ミドリ     「最後まで。」

タロウ     「で……みんな一つ屋根の下?」

ミドリ     「そうです。楽しそうでしょ!!……いやこれが実際楽しかったんだって!!

         毎晩毎晩ホームパーティーですよっ!!」


……………。


タロウ     「ところで全部団体行動?」

ミドリ     「もちろん。」


新婚旅行で団体行動……。


タロウ     「あのーーーもうひとつ質問……よろしいですか?」

ミドリ     「はい?」

タロウ     「旅行中の主導権は?」

ミドリ     「ワタシと……兄夫婦。」

やっぱりである。

タロウ     「旦那さんの意見は?」

ミドリ     「無視。」

案の定である。


新郎は……どこ?

新郎の居場所は……どこ?


普通なら、二人っきりで、これからの人生を甘ったるくも夢山盛りながらも語らうはずの新婚旅行……。


それが見知らぬハワイの地で……嫁の親と兄夫婦……嫁の友達二人……。

まさに孤立無援である。


タロウ     「新婚旅行らしく、別行動でムードのある時間とかは?」

ミドリ     「サッパリです。」


バッサリ……。


ミドリ     「やだなーータロウさん……そんなのあるわけ無いじゃないですかーーー!!」



……………。


タロウ     「何日だっけ?」

ミドリ     「10日間。」


新郎にとっては新婚旅行ならぬ拷問旅行……。

ご愁傷様である。


……………。


新郎の気持ちを考えると押し黙ってしまうワタシ。

ミドリがそれに気づき……


ミドリ     「タロウんさん……なにか勘違いしてますよね?」

タロウ     「なにが?」

ミドリ     「いいですか?」


改まる。


ミドリ     「元々、私達家族でハワイ旅行に行こうって事になっててですね。」

タロウ     「それで?」

ミドリ     「それはもう、決定事項だったんですよ!」

タロウ     「で?」

ミドリ     「それで彼に話をしたら……『俺も行きたい~~』なんて言うもんですから……。」

タロウ     「…………。」

ミドリ     「『じゃあ来れば?』って言ってやったんです。」

タロウ     「…………。」

ミドリ     「そしたら『新婚旅行しか休めない』って言うから……。」

タロウ     「…………。」

ミドリ     「じゃあ結婚!そして新婚旅行!ってなったんですよ!!」


最初に「ハワイ旅行ありき」なので……「新婚旅行」は名目だけと言う事なのか?

それはそれで更に可哀想な旦那様。


ミドリ     「だから団体行動は当たり前!!」


……………。


タロウ     「もうひとつだけ質問いいですか?」

ミドリ     「どうぞ。」

タロウ     「旦那さん……キレなかった?」

ミドリ     「う~~~~ん。」


思い出してる様子。


ミドリ     「最後の日にキレてたかなー……。でも団体行動なので……放置です。」


……………。

ミドリ     「それでねーーー。それでねーーー。あのねーーー。」

タロウ     「はいはい……。」



土産話はまだまだ止まらない……。



ワタシと同じように尻に敷かれる事を自ら望んだ男が一人……。

そしてミドリちゃん……堂々と鬼嫁の仲間入りである。

                                     ミドリ4 イラスト:




以下次号。