バイトのミドリちゃん--EP3-- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

バイトのミドリちゃん--EP3--

ミドリ     「タロウさん。結婚ってなんですか?」


いきなりの問答である。

確か去年の今頃(10月頃)の話である。


タロウ     「結婚って?」

ミドリ     「だから結婚ってどんなもんかなっと……。」

タロウ     「人は子を産み……育て……そして死んでいく……だよ。」

ミドリ     「なんですか?それ?」


気にしなくて良い。


タロウ     「いやさ……もうちょっと具体的に聞いてくれないと答えようが無いだろ?」

ミドリ     「まぁ……はい……。」


仕事をしながら考えるミドリ……只今ランチ後……のんびり明日の下準備中。


ミドリ     「『結婚してここが変わった』ってのはなんですか?」

タロウ     「一緒に住む。」

ミドリ     「………ナメてます?ワタシの事。」

タロウ     「いや……。」


改めて質問するミドリ。


ミドリ     「家計ってどうなってるんですか?」

タロウ     「ノータッチ。」

ミドリ     「ノータッチって……だいたいわかるでしょ?」

タロウ     「う~~~ん。給料は全部ユミコに渡しちゃうからなー。」

ミドリ     「そうなんですか?」

タロウ     「少なくともウチはそう。」


少々驚いている。


ミドリ     「じゃ……タロウさんのお小遣いは?」

タロウ     「適当……。」

ミドリ     「適当って……。」

タロウ     「基本的に使うのはタバコ代と缶コーヒー代くらいだし……。」

ミドリ     「飲み代は?」

タロウ     「だいたいユミコを連れて行くし……。」

ミドリ     「なるほど……。」

タロウ     「足らない時に少し貰う。」

ミドリ     「何とかなってるんですか?」

タロウ     「うん。なんとかなってる。」


こう見えて、ワタシ結構燃費が良いのである。


家に帰ってビール飲んで……テレビ見て寝る。

たまにゲームのソフトなんかを買ったりするが……最近は年に2~3本。

後はマンガくらいだが……雑誌は店にあるのでOK。

単行本を月に2冊程度である。

他に欲しい物は特に無い。


タロウ     「ウチはイチコがまだ小さいからさ……ユミコがしっかり働くわけにはいかないだろ?」

ミドリ     「そうですね……。」

タロウ     「子供っていつ病気するかわかんないし……。

         だから店の手伝いを時々するくらいしか出来ないじゃん。」

ミドリ     「うんうん。」

タロウ     「ミドリちゃんが結婚したら……バイトとは言えツインカムだから、結構楽じゃないか?」

ミドリ     「そうですか……?」


ちょっと怪訝な顔。


タロウ     「だって10万までは無いだろうけど……毎月7~8万あるんじゃない?」

ミドリ     「ええ……。」

タロウ     「小遣い、オレよりリッチだぞ。間違いなく……。」

ミドリ     「そんなこと無いですよ~~!!」


頭の中で計算している様子。


ミドリ     「美容院が2万……服が3万……ビール代が2万……で……残りが小遣いですからっ!!」


……………。


世間ではそれを全部「小遣い」と言う……。


タロウ     「その経済構造は……間違いなく激変するぞ……。」

ミドリ     「そうですか?」


間違いない。


ミドリ     「でも……今の彼……『生活費は出さなくて大丈夫』って……。」

タロウ     「じゃ。いいんじゃない。」


長くなりそうなのでそろそろ切り上げる方向に持っていく事にした。


ミドリ     「彼の給料で……家賃と食費と光熱費……あと小遣い少々……。」


ブツブツやってる。


実際生活するようになると、保険や車の維持費……更に諸々の雑費がかかるものである。

それに今後妊娠出産となれば……ツインカムじゃなくなる。

そのときのことも考えなくてはならない。


ワタシの場合は「なんとかなる」で「なんとか」してきたのであるが……。


まぁ……細かい事は家々の事情があるから出来るだけ深入りしないほうが良さそうである。



……………。



ミドリ     「決めましたっ!!」

タロウ     「どうしたっ?急に?」

ミドリ     「ワタシ!!結婚しますっ!!」

タロウ     「はぁ?」


あまりに突然……いや……さっきの話の流れからとはいえ……あまりに突然。


ミドリ     「どのみち、今の彼と別れる予定も無いですから……だったら結婚します!!」


それで決めていいのか?


タロウ     「いや……それはそれでオメデトウだけどさ……。」


と……


タロウ     「ミドリちゃんて…まだ二十歳だろ?」

ミドリ     「そうですよ。」

タロウ     「ちょっと早くないか?」

ミドリ     「そうですかね?」

タロウ     「もうちょっと考えたほうがいいよ……。」

ミドリ     「そうですかね?」

タロウ     「一生の問題だし……。……いや……今の彼が良いとか悪いとか……

         そういう事じゃなくてね……。」


ちょっと考えている様子のミドリ……


ミドリ     「ふむ……。」

タロウ     「だろ?」

ミドリ     「でも……やっぱり結婚しますっ!!」

タロウ     「…………。」

ミドリ     「ワタシっ!決めましたっ!!」

タロウ     「…………。」

ミドリ     「今しかないんですっ!!」


押し黙るワタシ。


ミドリ     「タロウさんも決定したら変えないじゃないですか!」

タロウ     「……まーね。」


こう言われては返す言葉が無い。

ワタシも決定事項はユミコ発言以外ではテコでも変えない……


ミドリ     「まぁ……だめだったら3年以内に別れますよ。」


そんなものなのか?

結婚。


ミドリ     「そうすれば……バツイチでも23歳だし。」


そんなものなのか?

バツイチ。


タロウ     「まあさ……。ミドリちゃんの人生だから……そりゃ結構だよ……。オメデトウ。」

ミドリ     「ありがとうございます。」


ワタシに認められてニコニコのミドリ。


タロウ     「ところでさ……ミドリちゃんを結婚へと突き動かした最大の要因は何?

         それに『今しかない』ってどうして?」

ミドリ     「ハワイに新婚旅行。」

タロウ     「はぁ?」

ミドリ     「今行きたい。ハワイ。もう一回。」


意味がわからない。


タロウ     「旅行くらいいつでもいけるだろ?」

ミドリ     「それがですね……。」


真剣なミドリ。


ミドリ     「彼の会社……長期休暇は新婚旅行くらいしか駄目なんです。」

タロウ     「で……?」

ミドリ     「だから……彼とハワイに行こうと思ったら『新婚旅行しかない』……と……。」

タロウ     「それで結婚?」

ミドリ     「はいっ!!」


もう言葉が無い……。



ミドリの頭の中は……


ハワイ旅行彼と行く彼は休めないじゃあ新婚旅行結婚


て図式だろう。



ミドリ     「じゃあ帰りに旅行のパンフを貰って帰ろーー。」


既に気分はワイキキの様子。


ミドリ     「……あ……タロウさんの欲しいお土産は、また今度聞きますね。」

タロウ     「ああ……。」

                                     ミドリ3 イラスト:





以下次号。