判決文---全文--- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

判決文---全文---

10月1日(土)の昼……。

簡易裁判所から最後であろう書留(配達記録)が届いた。


判決の正本である。


判決を言い渡しで聞いているので、随分安心して開封。



随分と粗悪なA4の藁半紙である……。


全部で7枚。

両端をホッチキスで留め……その真ん中に複製防止の「裁」の文字のパンチ……。



ここからが判決正本の全文である。



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平成17年9月25日判決言渡  同日原本領収  裁判所書記官


平成17年(ハ)1345号 損害賠償請求


口頭弁論終結日  平成17年9月17日



判    決



クジラ県カツヲ市サンマ区メダカ町1-2-34モロコアパート303


        原告        川畑 カズオ


クジラ県カツヲ市サンマ区メダカ町1-2-12


        被告        山田 タロウ


主    文



1 原告の請求を棄却する。


2 訴訟費用は原告の負担とする。



事 実 及 び 理 由



第1 請求の趣旨(原告の請求)


  1 被告は原告に対し、110万758円及びこれに対する平成17年4月27日から支払済みまで

    年5パーセントの割合による金員を支払え。


  2 訴訟費用は被告の負担とする。


第2 事案の概要


  1 請求原因(原告の主張)


   (1) 被告は遅くとも平成17年1月27日から同人住所地で別紙写真の猫(以下「本件猫」という。)を

       占有して飼っている。


   (2) 原告は平成17年1月27日から被告住所地の南側に隣接する駐車場に所有する自動車

       (登録番号 カツヲ333カ1234) (以下「本件自動車」という。)を駐車している。


   (3) 本件猫は、平成17年1月27日ころから平成17年4月27日までの間に本件自動車の上に

       たびたび登り、その爪で本件自動車に傷を付けた。


   (4) これにより、原告は本件自動車修理代金相当額である110万758円の損害を被った。


   よって、原告は被告に対し動物の占有者の不法行為責任として110万758円及びこれに対する

   平成17年4月27日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員の支払いを求める。


  2 被告の主張


   請求棄却の判決を求める。


   請求原因事実中、原告が数ヶ月前からその所有する本件自動車を原告主張の駐車場に

   駐車していたこと、被告が猫を飼っていることは認めるが、被告の飼い猫が本件自動車に

   傷を付けたことは否認する。被告が飼っている猫は本件猫とは別の猫である。その余は知らない。



第3 争点及び当裁判所の判断


   中心的争点は、被告が本件猫の占有者と言えるか否かである。


  1 甲第3号証の1から15まで、甲4号証、証人引田マモル、同山本カズエの供述及び原告本人の

    尋問の結果によれば、次の事実が認められる。


   (1) 平成17年1月27日から同年5月ころまでの間に、多いときには週3,4回程度少なくとも

       週1回は本件猫が本件自動車の屋根の上、本件自動車の下、本件自動車が止めてある

       駐車場のコンクリートの上等で寝ているところが目撃されていた事実


   (2) 証人引田が同猫を追い払うと、2回に1回程度は、隣接する被告宅にその開け放しになっている

       サッシの窓から逃げ込んだ事実


   (3) 本件猫は被告宅の1階駐車場に面した部屋に置いてある猫の餌箱の餌を食べているところを

       証人引田が4,5回目撃している事実


   (4) 証人山本が原告の相談を受けて、原告とともに本件自動車が止めてある駐車場に調査に

       出向いた際にも本件猫が同駐車場におり、やがて、被告宅の駐車場に面したサッシの窓から

       被告宅に入り、1階駐車場に面した部屋に置いてある猫の餌箱の餌を食べた事実


   (5) 本件猫は、人に慣れており、首輪をしているなど、飼い猫らしい立ち振る舞いで合あった事実


  2 しかしながら他方、甲第3号証の1から15まで、甲第4号証及び甲第11号証並びに乙1、2号証

    及び第4号証並びに被告本人尋問の結果によれば、


   (1) 被告宅では本件猫とは別個の猫を飼っていた事実


   (2) 前記の被告宅の部屋の餌は、その猫に食べさせるための餌である事実


   (3) 被告は、本訴訟前の平成17年5月27日に原告から本件猫が本件自動車を傷付けているとして

       別の訴訟を提起され、初めて原告が被告に対して損害賠償を求める意思を持っていることを

       知ったが、それより前の平成17年2月14日に、カツヲ市保健所に対して本件猫を迷い猫として

       その保護について届け出ていた事実


   (4) 被告自身も本件猫が被告宅1階の部屋で飼い猫用の餌を食べるのを週1、2回くらい目撃し、

       その都度家から追い出していた事実


   (5) 本件猫が入り込む1階の部屋の奥には業務用の冷蔵庫があり、その熱を発散させるために

       同部屋の駐車場に面した窓は開け放しにしている事実


   がいずれも認められるのであって、前記1の事実を持ってしても被告が本件猫の占有者であると

   認めるに足りず、ほかに被告が本件猫の占有者であることを認めるに足る証拠はない。


  3 なお、善解すれば、原告は、被告が、本件猫がしばしば自宅に入り込んで被告の飼い猫の餌を

    食べていることを知っていながら、その都度追い払う以外に出入り口となっている窓を閉める等の

    適切な対策を講じておらず、半ば本件猫が被告宅に入り込んで餌を食べるのを放置していたとして、

    被告に対し、一般不法行為の責任による損害賠償を求めるかのごとく解される。


    なるほど、証拠によれば、これらの事実が認められ、被告自身も猫を飼っており、猫の習性を

    熟知していたことを併せ考えると、一方で自分の飼い猫でもない猫に餌場を提供するかのごとき

    状況を放置しながら、他方でその猫が周囲に与える迷惑については考慮しようとしない被告の

    態度は、動物を飼っているもののマナーとしてはいささか無責任な態度であると言える。


    しかしながら、他に特段の事情がない限り、前記の事実があることをもってそれが直ちに

    不法行為としての違法性を有するものであると評価することはできない。本件においては、

    特段の事情を認めるに足る証拠は認められないのであって、結局、前記の事実によって

    被告の不法行為責任を問うことはできない。


  4 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。




                     カツヲ簡易裁判所

                                   古畑   ショウイチ



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そして一番最初の訴状に添付されたシロクロの車に乗っている写真が4枚。ウチに上がっている様子が2枚



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こ れ は 正 本 で あ る 。


平成17年9月25日




      カツヲ簡易裁判所



                    裁判官書記官         北川   マサル



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いわゆる「お墨付き」である。





とりあえず私の感想


前半は事実のとおりなので申し分ない。


出来れば「女の子」の件と証拠調べが粗雑な点を入れて欲しかった。



裁判官の心象は「3 なお、善解すれば~~~」からの様子であるが……

ワタシなりに解釈すると


「100歩譲って原告よりで考えて……被告のネコマナーは悪いけど……だからと言って

シロクロを飼っているとは言えんだろ……。それ以上の証拠も事実も無いんだから……。」


と言ったところであろう。



ワタシ100歩譲って少々怒られた様子である。




最後の「その余の点について判断するまでもなく」に

「それ以上は調べる必要も話すことも無い」ってのが凝縮されている。


濃縮還元200%である。


川畑が控訴した場合……この200%は本件以上に大きな壁である。





以下次号。