裁判所に準備書面を提出 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

裁判所に準備書面を提出

日付は8月30日(火)のランチ終了後である。


今日は妻のユミコの当番の日ではなくバイトのミドリの日だ。


タロウ     「ミドリちゃん!後は頼んだ!!」

ミドリ     「はーい。適当にやっておきます!!」

タロウ     「じゃあ……イカリングのコロモつけをお願いね。」

ミドリ     「……はーい。了解です。」

タロウ     「あと……醤油とソースの補充と……。」

ミドリ     「わっかりましたー。」


今日も元気いっぱいである。

ハタチちょっとの彼女は元気が一番の取り柄である。


少し残った片づけをお願いして車で裁判所に向かう。

準備書面を提出に行くのである。



簡易・家庭・地方を一つにまとめたこの裁判所……相変わらずでイロイロな年齢層の人がいる……。


グズる子供を連れて来ている奥さんもいる。

どうにもサラリーマンの人もいる。

おじいちゃんもおばあちゃんもお金持ちのご婦人風の人もいる。


「きっとあの人は離婚とかだな……」

「あの人は債権回収」

「そしてあの人は……」

などと思ってみる。


初めて裁判所に来た時よりも随分余裕だ。

自分でもわかる。




受付にいる守衛を兼ねたコワモテの人を横目で通り過ぎ……2階へと向かう。

簡易裁判所のフロアである。


タロウ     「あのー4係さんをお願いします。」

女の人    「はいー。4係~~~。」

4係男の人  「あ……はいはい……。」


4係の男の人が私の顔を確認すると……隣に座るワタシの担当者を突付く。

裁判でお世話になっているポンチョの書記官である。


書記官    「あ……はいはい……。準備書面の提出ですか?」

タロウ     「そうです。……これです。」


ワタシが3部作った準備書面を差し出すと中身をペラペラと確認する。


書記官    「大丈夫ですね……。抜けてるページとかなさそうですね。」

タロウ     「大丈夫と思いますよ。家でも見ましたから。」

書記官    「はい。わかりました……。で……書証は……。」


と今度は書証を3部パラパラとめくる。


書記官    「これも大丈夫ですね。」

タロウ     「はい。」


そう言うと書記官が、もう一度書証を確認する……。


書記官    「で……この書証は……一冊に閉じられてますが……3つに分けたほうが良さそうですね。」


……と……「ネコの写真」と「車の写真」と「侵入の連続写真」を指す。


タロウ     「ああ……その方が見易いですね。」

書記官    「じゃあ……そうしときます。」


そう言うと書証の右上に番号をつける。


書記官    「これが乙4号証……これが5号……これが6号……と……。」


前に3つ書証を出しているのでこうなる。


書記官    「OKですね。」

タロウ     「どうも。」


書類をまとめる書記官……。

ちょっと聞いてみた。


タロウ     「あのー。今度の15日で結審と言う事らしいですが……。

         その時にも発言する時間とかありますか?」


手を止めずに書記官が……


書記官    「ん……。……まあ言っておきたい事は出来るだけ準備書面にしてもらってると

         思いますので……。ただ……これから原告の準備書面が届くと思いますが……

         それに対しての答弁は出来ますよ。『ここは言っておかなければ!』って所は

         遠慮なくどうぞ。」

タロウ     「わかりました。」

書記官    「まぁ……原告の方も前回の時に随分書面と発言をしていますから……。」


でも相手は「川畑」なので……どう切り出してくるかわからない……。

なので、さらに聞いてみた。


タロウ     「例えばですね……原告が8月中に出さなきゃならない次回結審用の

         準備書面に対してですね……。あまりにも言いたい事がたくさんある場合は……?」


一瞬考える書記官……きっと脳裏にワタシと同じ発想が浮かんだのであろう……。


書記官    「……そうですね……。そういう場合は……出来るだけ早く……もう一度それに対する

         準備書面を作成して頂いてですね……お持ち下されば……。」


「じゃあ原告が、その準備書面に対しても準備書面を作ってきたら……」と聞きたかったが……

「そうなればもう一回審理ですね」と答えるだろうと思い……やめた。


書記官    「まぁ……ある程度、争点は決まっているので……決まっているでしょ?」

タロウ     「はぁ……まぁ……。『ネコの所有者かどうか』ってところが最重要課題ですね。」

書記官    「そうですよね……。まぁ……その点で争うのであれば……後の事は参考程度となります。」

タロウ     「なるほど……。」


「ネコの所有者」で話が終わればBMに傷があろうと無かろうと……「関係の無い話」と言う事であろう。


タロウ     「ところで……出てます?原告の準備書面……。」

書記官    「いえ……まだですね……。」


まだらしい……。

頼むから今回は早めに出してくれ……。

期日までに……。


書記官    「向こうから提出されましたら……すぐに送りますので……。」

タロウ     「わかりました。」


そう言うとノートを見る書記官。


書記官    「次回は……9月15日の4時ですから……。」

タロウ     「わかりました。」

書記官    「……では……。」


そう言うと机に戻った。


今日の仕事は終わりである。

2階からエレベーターに乗るのもなんなので……階段で一階へと向かう。


「案外早く終わったな……」

そう思い、一階を少し探索することにした。




一階の受付横にはガラスで区切られたスペースが2箇所ある。

中では職員さんが働いている。


一箇所は「簡易裁判所受付センター」で……もう一箇所は「家庭裁判所受付センター」である。


外のベンチに腰掛けて……中の様子をボーっと見る。

職員さんと……多分これから原告になるであろう人が書類を見ながらアレコレやっている。


「川畑もこんな風にしたのかな?」などと思いながら……

「職員さんは止めなかったのかな……」などとも思ってみる。


勿論、職員さんは「裁判の受付手続き」をするだけの仕事であって

「内容」「いきさつ」については確認しない。


あくまでも「手続き」のみである。

それが仕事であるから仕方は無いとは思うが……。


誤字脱字……書き落しなどをチェックするので……一応内容は読むはずである。

だから「普通……人間として止めるだろ」などと思ってみる。


視線をふと左のほうに切り替えると……テレビがある……。

なにやらビデオを流している様子である。


ちょっとの間、見て帰る事にする。

                                  準備書面提出 イラスト:

以下次号。