三度…浦野さん | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

三度…浦野さん

日付は8月22日(月)

昨日のビデオ撮影の興奮冷めやらぬワタシである。


昨日はビール(第三のビール)500mlを3本ほど飲んでしまった。


仕事の合間を縫って弁護士の浦野さんに電話をしてみる。


……………。


浦野さん   「はい。」

タロウ     「あのー山田です。」

浦野さん   「はい……存じております……。」

タロウ     「はい……。」


久しぶりに話をすると緊張するものである。


タロウ     「あのー。ちょっとアドバイスを頂きたくてですね……。」

浦野さん   「どうぞ。」

タロウ     「この前に見せたワタシの準備書面なんですが……。

         あれ…この前の第二回口頭弁論の時に出さなかったんですよ。」

浦野さん   「ふむ……。」

タロウ     「書記官さんがですね……

         『原告の準備書面が直前に届いてますし……慌てて出さなくても、

         今度の期日……8月中に出して下さい。』って仰ったものですから……。」

浦野さん   「なるほど。」


久しぶりに聞いた「浦野さん」の「なるほど」である。


タロウ     「……で…ですね……。」


と第二回口頭弁論の様子と発言……。

証人の様子……裁判官の様子などを掻い摘んで話す。


浦野さん   「なるほど。」

タロウ     「で……証拠……。反証としてこちらから提出しようと思っている書類が

         こんな感じなんですが……。」


証拠調べ の箇条書きを読んでみる。


浦野さん   「なるほど。」

タロウ     「……どんなかんじですかね?」


……………。


少し考え込む浦野さん……。


浦野さん   「……そうですね……。まず…裁判の争点をどこに置くかって事ですよね……。」

タロウ     「……と言いますと?」

浦野さん   「……例えば……。シロクロの所有権を争点にして争うのであれば……

         『車の傷がシロクロの付けたものであるか』とか『車の傷がネコのものであるか?』とか

         『車の他の傷がどうのってのの過失相殺』とか『車の保存状況の過失相殺』ってのは

         必要無いですよね……。」

タロウ     「……………。」


確かにそうである。


だが……。

裁判所が「シロクロはあなたのネコ」と判断しちゃった場合……。

シロクロの所有権だけで争っていて……他の事をナイガシロにしたせいで……

満額請求されるって事はないのであろうか?


タロウ     「必要無い部分は書かなくても……証明しなくてもいいって事ですか?」

浦野さん   「……いや……どっちでもいいと言うか……。必要なものは裁判所が判断しますので……。

         思った事を主張して頂ければ結構ですよ。」

タロウ     「はぁ……。」


いまいち良くわからないが……暗に「ネコの所有権だけで勝てますよ」と言っているように思える。


タロウ     「じゃ……。相手の車の傷具合とかは……要らないですか?」

浦野さん   「そうですね……さっきも言ったように『主張されるのは自由』ですから……。」


火サス調査隊……無駄骨であった様子である。


浦野さん   「ざっと聞いたところ……とりあえず『ネットフェンスの矛盾点の証明』は必要無いですね。」

タロウ     「そうですか……。」

浦野さん   「とりあえず山田さんも『シロクロが家に上がっている』のは認めていますから……。

         ネコがどこを通って上がろうが……たいした問題では無いですね……。」

タロウ     「そうですか……。」

浦野さん   「それにそれを証明するのには……専門家の……獣医とかの証言が必要となりますから。」


確かに面倒である。


浦野さん   「裁判所としても……これ以上審理が長引くのは避けたいでしょうし……。」


それも確かにそうである……今度審理が伸びたら……裁判官がキレそうである。


浦野さん   「厳密に言うと……『他ネコの写真』も要らないですね……。

         『シロクロの所有が山田さんの物でない』と証明されれば、

         他にどんなネコがいようとも関係無いですから……。」


ズバリズバリ……そのとおりである。


浦野さん   「まあ……その辺は保険のつもりで主張してもいいとは思いますが……。」

タロウ     「はい……。」

浦野さん   「『シロクロが山田さんのネコだ』と原告が立証出来なければ……

         『シロクロは山田さんのネコではない』という結論となりますし……。」


いわゆる「悪魔の証明」と言うヤツなのであろう。

ブログの読者さんも書いておられた……。


タロウ     「じゃあ逆に『シロクロが山田さんのネコだ』と言う証拠ってどんなんです?」

浦野さん   「……そうですね……このネコに給餌している写真だとか……遊んでいる写真だとか……

         通院記録だとか……。そんなところですかね……。」


そんなものはあるわけが無い。


浦野さん   「今……ニャン太君はどちらに?」

タロウ     「あれからずっと祖母の家ですが……。」

浦野さん   「じゃあ餌箱の写真とか……給餌の写真を撮られる心配は無いですね。」

タロウ     「ないですね。」


……………。


浦野さん   「……この原告の駐車状況って撮影して出しますか?」

タロウ     「ええ……そのつもりですが……。」

浦野さん   「まずくないですか?」

タロウ     「なにがですか?」


……………。


浦野さん   「原告の駐車場に入ってますよね……。」

タロウ     「まあ……。」

浦野さん   「で……物差し当ててますよね?」

タロウ     「当ててはいますが……触ってません。……空中です。」


「空中です。」

自分で言って笑えてきた……。


小学校の時、隣のヤツとの境界は……「空中OKな」とか言いながらやってたな……。

などとフラッシュバックする。


タロウ     「それに……原告の駐車場は、道路に面した砕石敷きの駐車場ですので……。

         道路上からでも……側面なんかは3歩入れば撮れますから……。」

浦野さん   「なるほど……。まぁ……それなら問題無いでしょう。」


ホッ。


浦野さん   「この車を撮る為に、『柵を乗り越えた』とか『シャッターを開けた』とかって言うと

         問題になりますけどね。」


さすがにそこまで馬鹿ではない……。

それに最初から「シャッター」のある車庫ならば……こんな騒ぎになっていない。


浦野さん   「まぁ……原告も無断で山田さんの家の中を撮ってますしね……。

         そこを突っ込まれたら突っ込み返してください。」


了解である。


浦野さん   「山田さん……結構心配されてますが……話から察するに……

         そう心配することも無いですよ。」

タロウ     「と言いますと?」

浦野さん   「そうですね……。」


……と整理している様子である。


浦野さん   「まず『シロクロの所有権』で……所有を立証されなければ……そこで終わりです。」

タロウ     「はぁ……。」

浦野さん   「次に『傷がネコのもの』で……立証されなければ……終わりです。」

タロウ     「はぁ……。」

浦野さん   「『傷とシロクロ』の関連が立証されなければ……。」

タロウ     「………。」

浦野さん   「そして傷の許容範囲ですね……。」

タロウ     「はぁ……。」

浦野さん   「現状の原価償却……管理責任……予知……予見……予防……の観点からの過失相殺。」


聞く一方である。


浦野さん   「それらの観点から考えても……そう心配することは無いかと……。」

タロウ     「そうなんですか?」

浦野さん   「ええ……。原告は、このどれか一点でもコケたら終わりですから……。」


そう聞いて安心した。


浦野さん   「まず裁判の大原則『疑わしきは罰せず』ですから。グレーは白です。」


更に安心した。


タロウ     「じゃ……。ウチの負けはありえないと…?」

浦野さん   「……100%ではありませんが……安心してよいかと……。」


「絶対に勝てます」とは言わない様子だ。

商売上……仕方ないのかもしれない。


タロウ     「イロイロすみませんね……。」

浦野さん   「いえいえ……。」

タロウ     「ちゃんと電話の分も請求してくださいね……。」


本当は請求して欲しくないのであるが……社交辞令である。


浦野さん   「まぁ……まぁ……。」


と笑っている。


計算しないと分からない……と言ったところであろうか……。


浦野さん   「この件……ウチが受任する事はなさそうですね……。」

タロウ     「……そうですね……なんとかなりそうです。」

浦野さん   「頑張ってくださいね。ワタシはアドバイスくらいしか出来ませんから……。」
タロウ     「はい……では……。」

浦野さん   「では……。」

電話を切って仕事に戻る。

いつもいつも貴重な時間を「ネコ」ごときの為に割いてくださって感謝である。



そう言えば……「裁判の書証は出来るだけ書面で出してください」と言われていたのを思い出した。

つまりビデオはダメなのだ。


もしビデオで出したければ……そのテープの複製を2本と……裁判所で上映する機材を

持ち込まなければならないらしい。

勿論自前だ。


さて……シロクロサッシ開けビデオを写真に加工しなくてはいけない。

連続写真にである。


「今晩はパソコンで作業か……」と考えつつ

                                 三度浦野さん イラスト:

以下次号。