第二回口頭弁論--その16--閉廷後 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第二回口頭弁論--その16--閉廷後

タロウ     「あのー。ちょっと……。川畑さん?」


話しかけてみた。

部屋の中にはワタシと書記官と川畑だけである。



川畑      「なんですか?」


かなり怒り覚めやらぬ様子である。


タロウ     「この前、出していただいた『準備書面』なんですが……。

         今度から……出来れば、もうちょっと見易く作ってください。」

川畑      「はぁ!?」


「青木さやか」顔負けの睨みである。


タロウ     「……あのね。……ワタシの答弁書に対する反対意見を書かれている様子ですが……。

         回答に重複項目が多すぎますよね……。『食べてます』事項が多過ぎです。

         一回書けばわかります。……なので『ナニナニの答弁と同様である為、省略』とされて

         結構です。それに推測の内容ばかりです。確証事項を述べてください。」


更に続ける。


タロウ     「あと……ワタシが答弁書内で『①』とか『イ』とか『ハ』とかって項目別に

         記号を打ってますでしょ……。だから『3ページ③被告の該当ネコに対する処置

         イ) 被告は該当ネコに対して給餌していない居住を認めていない。について』

         とか長々書かずに『③-イに対する答弁』と書いてそっちの記号を振ってくれれば

         良いんですよ。」

川畑      「……………。」


ずっと睨んでいる。


タロウ     「だってそちらが記号を振ってくれないと……。ワタシ【『3ページ③被告の該当ネコに対する

         処置イ) 被告は該当ネコに対して給餌していない居住を認めていない。について』

         に対する回答『ネコが自由に侵入できて餌を食べれる状況をつくるのは実質的に

         居住を認めている。被告の家で該当ネコがエサを食べ出入りするのを目撃した証人が

         多数いる。』について……。】って書かなきゃいけないでしょ。」

川畑      「……………。」


ずっと睨んでいる。


タロウ     「で……。記号を振ってもらえれば……。【原告準備書面『1-②-イ』に対する答弁】って

         書くだけでいいでしょ。」


また怒らせた様子だ……。

フルフルが更にフルフルである。


タロウ     「いや……。別に『出来ない』ならいいですよ……。

         ただ、そうやった方が『分かり易いし簡単』ですから……。」

川畑      「どうやって作ろうがっ!コチラの勝手でしょっ!!」


勝手である。

なので「出来ないならいい」と言っているではないか……。


川畑      「書記官さんっ!!準備書面の書き方なんて決まっていませんよねっ!!

         どういう風でもいいですよねっ!!」


書記官……。冷静にこう話す。


書記官     「まぁ確かに……。書き方は決まっていませんから……

          どうしようと出される方の自由ですが……。被告さんの仰る事もごもっともで……

          裁判所としましても……被告さんの書かれるような形式で書面を書いて頂いた方が……。

          見易いですし……。」


一本。


川畑      「……………。」


川畑……援軍来ず……。


書記官     「……あのー。原告?……被告さんも仰っている様に『出来れば』で結構ですよ。」


駄目押しである。


川畑……怒りマックスである。

立たせている髪の毛が余計に立って見える……。


川畑      「あなたにそんな事を指摘される筋合いは無いですよっ!!!!!」


筋合いはある。

なにせ被告である……。


川畑      「屈辱ですっ!!!

         あなたに屈辱を受けましたっ!!!!!」


いや……。そんなに怒る事でもなかろう……。


なので聞いてみた……。


タロウ     「提訴しますか?」

川畑      「……………!!」


バタンッ!!!


怒って出て行く川畑……。

ドアの閉め方に……怒りの度合いが伺える……。


………………。


タロウ     「書記官さん……。どう思います?……書記官さんの個人的な意見として……。」

書記官     「………。まぁ………ねぇ………どうですかねぇ………。」


すべてが凝縮されている……。


おっと忘れるところであった……。


タロウ     「あのー。一応『被告準備書面』を作ってきたんですが……。

         原告の準備書面が到着したのが金曜でしたので……慌てて作りましたが………

         今日出したほうがいいですかね?」

書記官     「あ……。別にいいですよ。次回の結審に間に合うように出して頂ければ結構ですよ。」

タロウ     「じゃ。次回にします。8月中に出せばOKですね。」

書記官     「そうですね……。17日の2週間前ですから……OKです。」


あともう一つ聞いておこう。


タロウ     「この書類って……。ワタシが裁判所に提出しますよね…。

         それで原告側には何日後くらいに付くんですか?」

書記官     「そうですね……。土日を挟んでいなければ……1~2日後に…。」

タロウ     「そうですか。了解です。」


意外と早いものである。

「裁判所は手続きが遅い」と言う先入観を払拭するべきである。


書記官     「では、また出来たら持って来てください。」

タロウ     「あ。はい。」


そう言いながら書記官も出て行った……。

汗だくである。


外に出るとユミコと杉森のおばさんが待っている。


ユミコ     「遅いよー。おばさんの店、始まっちゃってるよ。」


すっかり忘れていた。


おばさん    「いいよいいよ。お父ちゃんいるからさ……たまには頑張ってもらわないと……。」


おばさんの店に急ごう……。

ダッシュでクルマに乗る。



-----------------------



帰りの車中………。


おばさん    「しっかしよくわかんないね……。

          『カバーかけるのは、お金がかかるし時間がかかる』だって……。

          もうちょっとまともな話ができないのかねぇ……」

ユミコ     「タロちゃんが『黙認してる。黙認してる。』って言うけどさ……自分も大概だよねぇ。」


その通りである。


おばさん    「だいたいだよ……。いつもあのクルマ…埃まみれじゃないか!!

          もっと大事にしてるってところを見せなきゃ駄目だよ!!」

ユミコ     「だから……。結局大事にしてないんだって……。『あわよくばお金取ってやりましょう』って

         感じなんでしょ。多分。」

おばさん    「そうだよねぇ……。じゃ無きゃとっくに直して『請求書』を出してくるよね……普通。

          未だに『見積書』だからねぇ……。直す気無いの丸分かりじゃん。」


ワタシもそう思う。


おばさん    「そんなに大事な車ならさぁ……『床の間にでも飾っときなっ!!』ってんだよっ!!」

ユミコ     「ぷふっ!」


大げさではあるが実にごもっともである。


おばさん    「しっかしさぁ……。あの証人には笑ったよねぇ……。」

ユミコ     「そうだよねぇ……。だってほとんどタロちゃんにイイ事ばかり証言してたじゃん。」

おばさん    「………あれじゃあ……あの男の子……。メシ喰わせて貰えないな……。」



-----------------------



そんなこんなで「第二回口頭弁論」は終了した。




店に帰り……明日の仕込みをしつつ……次の作戦を練る。


まずは急ぎで作った「被告準備書面」をちょちょっと直して……。

アレをして……コレをして……。


そうだ、証拠となる写真も撮らなくてはいけない。



明日から「証拠集め」もしなくてはいけない。

                                 第二回その16 イラスト:

以下次号。