第二回口頭弁論---その6---続・質問 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第二回口頭弁論---その6---続・質問

裁判官     「被告…。以上で証人に対する質問は以上ですか?」

タロウ     「えーっと……。以上………。……ちょっと待ってください。」


頭の中に少し気になる事がある…。

だが、思い出せない……。

今さっき「引田くん」の発言から引っ掛かっている事だ。

用意してきた質問の内容ではない。


裁判官     「被告?よろしいですか?」


もう一度整理してみる……。

!!気が付いた!。

「頭の中で電球が燈る」……。そんなイメージがぴったりである。


タロウ     「証人!さっきの写真。ケータイの写真ですが…。もう一度確認させてください!」

引田くん    「あ。はい……。」


ごそごそとポケットから先程しまったばかりのケータイを取り出す。


引田くん    「……。えっと、これですね。」

タロウ     「あ。その3枚目を出していただけます?」

引田くん    「あ。はい。」


ケータイの画面を見るなり確信した!


タロウ     「あのー。これってこのケータイで撮ったんですよね?」

引田くん    「そうです。だから印刷できないんです。」

タロウ     「なるほど……。で、このケータイのカメラにはズーム機能が付いているんですか?」

引田くん    「付いていることは付いていますが……。この写真はズームで撮ってません。」


いただいた。ご馳走様である。


タロウ     「この3枚目の写真。ネコが結構大きく写ってますが……。

         何メートルまで近づくとこのサイズになりますか?」

引田くん    「………。えっと……ちょっとわかりませんが……。」

タロウ     「じゃ。今、カメラのモードにしてみてください。」

引田くん    「あ。はい。」


ケータイを操作する引田くん。


引田くん    「あ。これで……。」

タロウ     「はいはい。」


ケータイを借りた。

自分の眼で画面を確かめる。

色々まわりを写してみる。


………。これがいい。


タロウ     「裁判官。ネコの一般的なサイズとしては……。

          そうですね…このA4のファイルくらいじゃないかと思うんです。

          で、このケータイでこのファイルを画面半分のサイズまで大きく撮影しようとすると……。」


ゆっくりA4ファイルに寄ってみる。


タロウ     「この距離です。この距離まで近づかなくては撮れません。」

引田くん    「…………。」

川畑      「…………。」

タロウ     「言い方を変えますと……。この距離まではネコに近づけるって事ですよね?」


その距離約1m!!!


タロウ     「先程証人は

         『追い払うと言うよりは、近くに寄れば逃げていきました』と証言していますが…。

         証人の言う『近く』とは『1mよりももっと近く』と言う認識でよろしいですね?」

引田くん    「…………。」

川畑      「『近く』の定義は人それぞれじゃないんですか!!!?」


川畑、口を挟む。


タロウ     「だから!近くの定義を数値で表してみただけですよ。

         ワタシは『1mまで寄れるネコ』を近くまで寄れないとは表現しませんから」


まだ何か反論があるのであろうか?

言いたそうだ。川畑……。


だが今は被告の質問タイム。

原告の発言は、基本的に認められていない。


タロウ     「裁判官。思っていた事、全部聞きました。被告の質問は以上です。」

裁判官    「わかりました。では……。」


証人はもう一人申請されている。

とりあえず『引田くん』の証言から得られるものは何もないと裁判所も判断するであろう……。

ワタシならそう判断する。


判断しないのは川畑くらいのものであろう……。

                                      第二回その6 イラスト:

以下次号。