第二回口頭弁論---その3---証人 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第二回口頭弁論---その3---証人

書記官     「えー。平成17年ハ1345号、損害賠償請求訴訟第二回口頭弁論をはじめます」

はじまった。

書記官     「被告、原告から証人の申請が2名ありました。こちらの書類に捺印をお願いします。」
タロウ     「はい。」

すると裁判官が…。

裁判官     「この証人を証拠として取り扱うかどうかは裁判所が決定することですので、
           被告には原告の立てた証人が証言をするという事の承諾です。」
タロウ     「はい。」

回りくどい言い方なので、イマイチよく理解できないが…。
要するに、意味のない発言ばかりなら証拠にならないって事のようだ。

とりあえず捺印する。

書記官     「では証人のお二人は別室で控えていただきます。」
川畑      「え?

なにを驚く?

川畑      「どういうことでしょうか?」
書記官     「証人は呼ばれるまで別室で待機です。」
川畑      「傍聴席ではまずいんですか?」

まずいだろう……。
割って裁判官が入る。

裁判官     「証人に裁判の進行状況を聞かれたり、前の証人の発言を聞かれたりしますと
          その証人の発言に支障をきたす恐れがあるからです。」
川畑      「はぁ……。」

ちょっとゲンナリした川畑。
ルールくらい覚えておけ。

書記官     「では、証人はこちらに……。」

証人2名、先導されて退廷。

川畑      「あ。あの……。」
裁判官     「なんですか?」
川畑      「証人は引田君からお願いできますか?」
裁判官     「………。理由はよくわかりませんが……。いいですよ。」
川畑      「あ。あと……。」
裁判官     「なんですか?」
川畑      「これ、追加の書証なんですけど…。写真。車の傷の具合なんですが…。」
裁判官     「……。こういうものは前もって出してください!後の裁判が無いとはいえ5時までですから!
          時間がないんですから!」

怒られた。
……とそこに書記官が戻ってくる。

裁判官     「書記官。これ追加の書証らしいです。電話して裁判中にコピー取ってもらって
           被告に渡してください。」
書記官     「はい。」
裁判官     「原告。本当はね、今日証人を呼んでますので、その話を聞いて
          次回結審しようと思ったんですよ。
          でも、今日書証出されちゃいますと…もう一回やらなきゃいけないですよ。」
川畑      「はぁ……。」
裁判官     「まあいいです。書記官、手続きお願いします。」
書記官     「はい。」

やってくれちゃった。川畑。

裁判官     「では、証人を呼んでください。」
書記官     「はい。」

……しばらくすると一人目の証人……20代の若者…引田君らしい人が入廷してきた。
リクエストどおりだ。

裁判官     「では証人、そこの証言台のところで。」
引田くん    「はい。」
裁判官     「では名前と住所、生年月日を言って下さい。」
引田くん    「えっと…。引田マモル 20歳 住所はカツヲ市サンマ区イワシ町6-7-8です。
           生年月日は昭和59年の6月3日です。」
裁判官     「職業は?」
引田くん    「学生です。カツヲ大学の3年生です。」

ほほぅ。大学生がご苦労様である。

裁判官     「宣誓をしてもらいます。さっき捺印した書類を声を出して読んでください。」
引田くん    「宣誓、私は良心に従い本当の事を申します。決して嘘や隠し事をいたしません。」
裁判官     「……。名前も。」
引田くん    「あ。引田マモル」

宣誓終了

裁判官     「もし嘘や隠し事をすると『偽証罪』で告訴される可能性がありますから、気をつけてください。
          知らない事は『知らない』で結構です。わからないことは『わからない』で結構です。」
川畑      「はい。」

裁判官     「では原告、質問をどうぞ。」
川畑      「はい。では……。」

どう来るのか楽しみである。

川畑      「証人と原告の関係をお話ください。」
引田くん    「えっと、原告の川畑さんとは大学の先輩後輩で……。
          時々、川畑さんのお店に食事に行ったりしています。」

ふむふむ

引田くん    「で、川畑さんが『車にネコが傷を付けて困っている』と言っていたので…。大学に通う時とか
          駅に行く時とかに車をチェックするようになりました。」

ふむふむ

川畑      「では、引田くん。あなたが20歳の責任のある立場として、
           そして中立的な証言をできると言う社会的立場を紹介してください。」

大学の先輩後輩で、中立ってのもどうかと思うし、20歳の学生で社会的立場ってのもどうかと思うが…。

引田くん     「えっと、今年の成人式で『新成人代表』として男女1名ずつ選ばれるのですが…。
           そこで、『成人としての誓い』をしました。」
川畑      「その『成人としての誓い』で大人として社会的に責任を持つと宣言したわけですね?」
引田くん     「はい。」

おいおい…。ここはコンパ会場か?お見合いパーティーか?
そんな事で社会的立場が立派って事にはならないだろ?

川畑      「証人はいつ頃からネコが車の上に乗っているのを見ていますか?」
引田くん    「2月の終わりか3月の始め頃です。」
川畑      「どれくらいの頻度で見ていますか?」
引田くん    「そうですね……。通った時に見るだけですが…。週に2回くらいは乗っていました。ネコ。」
川畑      「それは私が『ネコの被害で困っている』と話してから注意して見るようになったんですよね?」
引田くん    「そうです。で、見かけたら追い払うようにしていました。」
川畑      「なるほど。で、そのネコはどこに逃げていきましたか?」
引田くん    「四方八方です。」

四方八方?ネコが分裂するのか???
思わずツッコミたくなった。
                                      第二回その3 イラスト:
以下次号