ネコの所有者

タロウ　　　　　「で、ですね。ウチの言い分としてはですね…」

浦野さん　　　「はい。」

タロウ　　　　　「このネコ、ウチのネコじゃないんですよ。」

浦野さん　　　「はい？」

２度目の「鳩が豆鉄砲」顔である。

浦野さん　　　「どういうことですか？」

タロウ　　　　　「ですからウチのネコじゃないんです。」

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ここでちょっと説明させてもらおう。

今日までこの【実録】ネコ裁判　　「ネコが訴えられました。」 で「ネコ、ネコ」と書いてきたが

「ウチのネコ」とは一度も書いていない。

この訴えられた写真の「白黒のネコ」（通称シロクロとしよう）

いわゆる迷いネコである。

「ウチのネコ」は別にいる。

名前は『ニャン太』

老齢のロシアンブルー種である。

全身がグレーの洋風ネコだ。

老齢の為、外出もほとんどしない。

いつも２階で寝ている。

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浦野さん　　　「ちょっと待ってください。整理させてください……。」

タロウ　　　　　「はいどうぞ」

……………。

浦野さん　　　「原告はこの事を知ってるんですか？」

タロウ　　　　　「知らないんじゃないですか？他所の女の子をウチの子って言ってるくらいですから」

浦野さん　　　「そうですよね。原告が故人でしたし……。」

だいぶ状況が飲み込めてきた様子である。

浦野さん　　　「では少し質問させてください」

タロウ　　　　　「はい」

浦野さん　　　「えっとですね。この宅内に上がりこんでる写真ですが？」

タロウ　　　　　「シロクロが勝手に上がってますね」

浦野さん　　　「この餌箱ですが？」

タロウ　　　　　「ニャン太の餌箱です」

浦野さん　　　「このネコトイレの写真ですが・・・。写っている物とない物がありますが？」

タロウ　　　　　「ニャン太のトイレです。普段は２階に置いてありましたが

　　　　　　　　　　動物病院勤務の妹の案なんですが…『ネコは縄張意識が強いので

　　　　　　　　　　他のネコの糞尿があれば入って来ないかも』という事で威嚇の為に置いてみました」

浦野さん　　　「なるほど」

「なるほど」がよみがえった。完全復帰の様子。

タロウ　　　　　「効果がなかったので、１週間くらいで元に戻しましたけどね。」

浦野さん　　　「餌箱を２階に移すという事はしなかったんですか？」

タロウ　　　　　「しました。そしたら２階までシロクロが上がるようになりまして…。

　　　　　　　　　　ニャン太と喧嘩になっても困るので…。

　　　　　　　　　　それに２階までは家族もあまり上がらないんですよ。

　　　　　　　　　　餌をやるにも１階のほうが便利なので」

浦野さん　　　「サッシ網戸を閉めるということは？」

タロウ　　　　　「この場所。昔は居間でしたが、現在は大型業務冷蔵庫が２台入っていまして

　　　　　　　　　『もわっ』とかなり暑くなるんです。だから換気の為に出来るだけ開けておきたい。」

浦野さん　　　「なるほど」

タロウ　　　　　「ちなみに閉めておいてもサッシも網戸も開けますよ。シロクロ」

浦野さん　　　「へえ～。器用ですね。シロクロ」

タロウ　　　　　「器用です。なんならビデオに撮っておきましょうか？」

浦野さん　　　「そういう段階になったら撮ったほうが良いかもしれませんね」

ネコの侵入ビデオを撮る為にスタンバイしなければいけないのか…。

それも面倒だな。言い出しておいてそう思った。

浦野さん　　　「サッシの鍵をかけるというのは？」

タロウ　　　　　「先程も言いましたが、できれば開けておきたいんです。

　　　　　　　　　　それに鍵が冷蔵庫の裏なので、かけられない事はないんですが面倒です」

浦野さん　　　「なるほど…。だいたいわかりました。

　　　　　　　　　　では逆に「シロクロがウチのネコじゃないと言うことを証明できる物はありますか？」

タロウ　　　　　「シロクロを見かけるようになってすぐに保健所に届けを出しました」

浦野さん　　　「そうですか。いつ頃ですか？」

タロウ　　　　　「２月初旬です。昨日再確認しました。」

浦野さん　　　「役所に書類が残ってますね。強いですね。これは。」

役所の書類は強いらしい。

浦野さん　　　「現状で裁判の進め方を段階的に考えて見ましょう。」

タロウ　　　　　「お願いします」

以下次号である。

左がロシアンブルー。右がクロシロ。

もちろん本人ではない。イメージである。

ネコの種類がわからない方の為に貼ってみた。

どう見ても別種である。