ECサイトの展望について書けみたいなレポートがでました。5時間くらいで5枚を書き上げなければいけなくて、しょうがないから、適当に書いていたら、Web2.0なレポートができていました。テーマはECサイト。フォークソノミーやるサイトないんですかね。


1.Web2.0


今年Web上で話題になった言葉に「Web2.0」がある。「2.0」はソフトウェアのバージョン番号ではない。ものごとの将来像・あるべきすがたを表現する時に、「○○2.0」という名称が使われる。つまり、「Web2.0」とはWebの将来像とか、あるべき姿といった意味の言葉である。今年は「Webが将来どのように変化するのか?」「その変化がもたらすものは何か?」「なぜ変化するのか?」「Web2.0にとって重要な原則は何か?」といった議論がブログなどを中心にしてしきりにおこなわれた。


Web2.0に明確なカタチはない。原則であり、概念であるからだ。そして、ブログ・RSS・フォークソノミー・ Webサービス・Ajaxなど、Web2.0は様々な概念・技術を含んでいる。Webの流行りものを詰め込んでいるだけに思えるかもしれない。実際、Web2.0はマーケティング用の宣伝文句にすぎないという批判は絶えない。ただ、今年はWebにとって大きな変化が訪れた年であることも確かだ。Google Mapsなどに見られるAjax技術、Flickrやdel.icio.usに代表されるフォークソノミー、グーグルやアマゾンによるWebサービスの広がりと、その有用性の証明、ブログを活用したリアルタイムな検索、RSSリーダーの普及によるブラウジングの変化、フリー百科事典Wikipediaの躍進。Web2.0がマーケティングの宣伝文句でしかなかったとしても、2005年はWebにとって大きな変化が訪れ、議論された年として記憶されるだろう。



余談になるが、変化の波は、ソフトウェアの概念すら変えようとしている。グーグルはコンテンツにマッチした広告を出稿し、莫大な売上高を得ている。この売り上げを利用して次々と新しいソフトウェアを無料でリリースしている。つい最近では、無料で高機能なアクセス解析をリリースした。ソフトウェアはパッケージとしてではなく、インターネットを通じてサービスとして提供されるものに変わりつつあり、Ajax技術に代表されるUIの改善がそれをサポートしている。こうした変化は、ついにソフトウェア業界の巨人、マイクロソフトをも動かし、「Windows live」が発表されるにいたった。イメージとして、マイクロソフトがビデオ屋さんなら、グーグルはテレビ局だ。



2.EC市場概観



2004年のB2C(EC)市場規模は5兆6430億円で、前年の4兆4240億円と比べ28%の伸びを記録している。伸び率は落ち着いたが、順調に拡大している。Web2.0時代にこの市場で活動するECサイトに求められるものは何かという点を考えていきたい。



3.データを囲いこむ



日本のB2C市場でメジャーな企業といえば、楽天とアマゾンだろう。この2社に共通することは、主要なデータを囲い込んでいる点だ。アマゾンは書籍に関するデータであり、楽天は商店に関するデータである。しかし、データの利用法には2者の間で大きな違いがある。



楽天には強い営業力がある。各店舗には専属の営業マンがつき、サイト構築や運営についてのきめ細かなアドバイスを行っている。こうすることで、楽天は商店のデータを囲い込むことに成功している。



営業力をつかったデータの囲い込みのほかには、M&Aを行って、重要なデータの囲い込みをすすめている。楽天トラベルや楽天証券などはその好例であり、最近のTBS買収騒動も主要なデータを囲い込み、楽天の競争力を増していく活動の一環である。楽天は、商店のデータに加えて、旅行の情報、金融の情報、テレビの情報など、様々な情報を取り込み、楽天という場所をより魅力的にし、ビジネスを拡大していくことを目標としている。都心の一等地のように、場所が魅力的であればあるほど、魅力的な店舗や情報が集まってくるようになる。



しばしば、アマゾンの強みは独自の物流網にあると言われる。確かに、長い年月と膨大な費用をかけて構築されたアマゾンの物流網は強みの1つではあるが、アマゾンの最も主要な強みは何かといえば、膨大な顧客情報の蓄積・分析であろう。



リコメンデーションシステムは、Web上で行われる顧客の活動を分析し、より顧客が望む商品をオススメする仕組みである。また、「あわせて買いたい」や「この本を買った人はこんな本も買っています」など、膨大な顧客情報の集積を活用して、様々な顧客ニーズの掘り起こしをおこなっている。カスタマーレビューの量も、他のECサイトと比べて群をぬいており、商品選びの際に活用されている。アフィリエイトも充実しているため、主に個人サイトからのトラフィックを獲得することに成功している。アフィリエイト経由で売買が成立した場合には、個人に小額の成功報酬が入り、アマゾンを中心とした小さな経済圏がつくられている。また、アマゾンはWebサービスを公開しており、アマゾンのWebサービスを活用すると、外部からアマゾンの機能やデータベースを活用することができる。amazletやG-toolはアマゾンのWebサービスを利用している。


商店のデータとくらべて、本のデータは割と簡単に手に入れることが可能だ。ISBNから手に入れることができる。実際に、セブン&アイグループや紀伊国屋、楽天など多くのEC業者がインターネット書店を開設している。日本国内の物流網で言えば、アマゾンよりコンビニチェーンや書店の方が強いだろう。しかし、アマゾンはナンバーワンだ。アマゾンが強いのは、膨大な顧客情報を活用したサイト構築をすすめているからだ。また、顧客がアマゾンを使えば使うほど、アマゾンはよりよいサイトへ変貌していく仕掛けがいたるところでなされている。アマゾンで本を買えば買うほどレコメンデーションの精度は上がるし、レビューの量も増えていくことになる。

楽天はより多くのデータを獲得することに力をいれており、よりリッチなサイトを構築することを目指している。一方でアマゾンは書籍のデータを活用し、書籍の購買活動にともなう顧客の行動データを集約し、集約した顧客データをもとに、顧客志向のサイト構築をすすめている。さらに、レコメンデーションやアフィリエイト、Webサービスなど、顧客が参加するための構造を上手に構築している。データを集めて価値を高める楽天、データを活用してさらなる価値を創造するアマゾン。2者にはこうした違いがある。



Web2.0という概念をひろめたティム・オライリーは論文「What Is Web2.0」のなかで、Web2.0時代の主要な原則を8つ挙げている、その中に次のようなものがある。



・データこそ次のインテルインサイド

・ユーザーが価値を付け加える


Web2.0時代には、地理情報・個人情報・価格情報など、様々なデータが重要になってくる。インターネットの発展で、重要な独自のデータを抑えることが競争優位となる時代がやってきた。ECサイトではないが、カカクコムにある膨大な価格情報、ぐるなびにある膨大な飲食店情報はさまざまな場所で活用されている。カカクコムやぐるなびはその情報をコントロールすることで収益を得ている。「データこそが次のインテルインサイド(Date is the next Intel Inside)」である。



化粧品の口コミサイト、アットコスメでは化粧品自体の巨大な商品データベースも重要な資産ではあるが、アットコスメを唯一無二のものにしているのは、膨大な口コミ情報である。化粧品のコアなデータをベースにして、口コミがデータに価値を付加している。「顧客が価値を付加する(Users add value)」である。また、アットコスメでは、口コミ情報を投稿すればするほど、商品検索の精度が向上する仕組みを持っている。ユーザーが参加することに意義を見出せる仕組みをもっている。先ほども述べたが、アマゾンも同様のことをおこなっている。



現在のWebでは、アマゾンのWebサービスなど、Web上にあるデータを組み合わせて使うだけで、それなりのECサイトを構築することができる。そこで、次世代のECサイトに求められるのは、重要なデータを囲い込むことと、ユーザーが参加する構造を作り、データを唯一無二のものにすることである。



4.商品検索


 ECサイトが提供すべき機能は大雑把に3つしかないと考えている。



1.多くの製品情報を提供すること。


2.顧客にマッチした商品を検索できること。
3.安全かつ簡単な決済の仕組み

膨大な情報の中から、顧客にマッチした商品を探し出し、簡単で安全な決済の仕組みを提供するのがECサイトの役割であるはずだ。そこで、インターネットの規模を活用した「多くの製品情報」、高度な技術を活用した「商品検索」そして「安全かつ簡単な決済の仕組み」この3点がECサイトには求められる。「多くの製品情報」については先ほど述べた。膨大な情報を溜め込むことがECサイト・インターネットビジネスにとっての競争優位になる。「安全かつ簡単な決済の仕組み」に関しては、まだ不透明な部分が多い。ただ、どんな会社が提供するにせよ、サイト横断的に、楽天でも、アマゾンでも、ヤフーでも、ライブドアでも使えるような決済システムが登場することが望ましい。



そして、ここでは、顧客にマッチした商品検索の仕組みはどのようなものか考えていきたい。


まず、商品検索という枠をはなれて、検索について考える。現在、検索の分野でとられている手法は以下の5つである。

・ カテゴリ検索


・ キーワード検索
・ パーソナライズド検索
・ バーティカル検索
・ フォークソノミー

カテゴリ検索とは、人が情報を集めて、カテゴリ分けしていく手法だ。音楽について書かれたページなら音楽カテゴリに、ゲームについて書かれたページならゲームカテゴリにという感じだ。初期のヤフーでは「サーファー」と呼ばれる人がWebを巡回し、Webページをカテゴリ分けして登録していた。人が分類しているので、検索精度は割と高い。ただ、分類する情報が膨大なものであるときには、分類のコストも膨大なものになってしまう。また、音楽とゲームについて書かれているページをどう分類するのか?というような問題も発生する。



キーワード検索とは、ロボットとかクローラーと呼ばれるプログラムがWebサイトを巡回して、ページを分析してインデックス化し、検索キーワードと関連性の高いページを検索結果として表示するものだ。Googleをイメージしてもらえればいい。プログラムが検索するので、精度の低さが問題になるが、膨大な情報を分析して検索するのに向いている。



パーソナライズド検索とは、顧客のWeb上での活動を収集・分析して検索精度を向上させていく仕組みだ。アマゾンのレコメンドシステムはまさにこれだ。また、最近は検索エンジンもパーソナライズド検索に取り組んでいる。例えば「Apple」と検索して、コンピューターメーカーを検索しているのか、果物を検索しているのか、それまでのWeb上での活動履歴を参照して判断してくれるような仕組みである。



バーティカル検索とは、要するに絞り込み検索である。地理データなどで絞り込んだ上で検索結果をかえしてくれる。グーグルローカルで、地域:国立 キーワード:ラーメン屋と検索すると、国立のラーメン屋を一望することができる。関係ないが昔は「サッポロラーメン」だったスタ丼屋がラーメン屋として検索されなくなっていた。代わりに地域:国立 キーワード:スタミナで検索するとスタ丼屋が山ほど出てきた。名実共にスタ丼屋はラーメン屋でなくなってしまった。あの不味いラーメンが好きだった。何か割り切れないものが残った。



フォークソノミーとは、folks(民衆)とtaxonomy(分類学)の合成語である。個人が思い思いに入力した情報をもとに、Webページや写真などを分類する仕組みである。なかなか言葉では説明しにくいので、日本でフォークソノミーのサービスを展開しているはてなブックマークhttp://b.hatena.ne.jp/ を見てもらいたい。はてなブックマークでは、個人が好き勝手にWebページをブックマークしている。ブックマークの際には「タグ」と呼ばれる情報を付け加える。ラーメンについて書かれているページなら「ラーメン」とタグをつける。はてなブックマークでは、同じタグをつけている人が多いほど、タグのフォントが大きくなり、はてなブックマーク上で紹介される。つまり個人の関心領域の重なり具合でページを分類していくのがフォークソノミーだ。


フォークソノミーの利点としては、今、話題になっているページが一目瞭然になる点、そしてカテゴリ検索では実現できない柔軟な検索が可能になる点が挙げられる。Flickr(ヤフーが買収)というサイトは写真をフォークソノミーで分類しているサイトだ。例えば、Flickrに子犬の写真がアップされたとする。Flicrのユーザーは「子犬」「かわいい」など、好き勝手にタグをつけていく。すると、子犬の写真は「子犬」の写真を探している人も捜し当てることができるし、「かわいい」写真を探している人も捜し当てることができるようになる。また、この子犬があまりにもかわいくて、Web上で話題になった場合は、多くの人がブックマークする。このように、フォークソノミーでは、今まで実現が難しかった、人間の感性にそった柔軟な検索と、今Web上での話題になっているものを知ることが可能になる。

商品検索について考えた時、カテゴリ検索・キーワード検索・パーソナライズド検索・バーティカル検索については多くのサイトで取り入れられている。楽天ではカテゴリ別にさまざまな商品を探すことができるし、キーワード検索はもちろん実現されている。アマゾンではレコメンドシステムという強力なパーソナライズド検索がある。Google Mapsの登場でバーティカルな検索もさまざまなところで取り入れられつつある。ただ、フォークソノミーの仕組みをつかったECサイトは見たことがない。小説や映画を一つとってみても、「感動」「笑える」「サスペンス」「アクション」「歴史」など、さまざまな属性がある。情報を囲い込み、ユーザーの力をつかってその情報に価値を付け加えていくのが、新時代のECサイトの姿であるのならば、フォークソノミーの方法はECサイトで取られなければならないと思える。



例えば、Web上で私達が泣ける小説を見つけたいと思ったときにどんな行動をとるだろうか。アマゾンのレビューを舐めるように読むのもいいが、時間がかかりすぎる。グーグルで「泣ける 小説」と検索したり、ブログの評判を読んだりするのもいいが、やはり手間だ。人力入力検索という手もあるが、不確定要素が強すぎる。フォークソノミーであれば、多くの人が「泣ける」とか「感動」とブックマークしている小説を見つければいい。フォークソノミーでは、このように人間の感性にそったかたちで商品を探し出すことができるようになる。



ECサイトにとっても、このような情報が集まれば、それは他では真似できない競争優位性になる。また、読んだ本をレビューするほどではないがメモしておきたいユーザーは多くいるのではないだろうか。



5.まとめ



ECサイトにとって、重要なのは情報の囲い込みである。情報を囲い込んだ上で、さらなる競争優位を築くのは、ユーザーの行動を活用して、商品検索や商品提案の力を増していくことである。ユーザーの行動を活用した商品検索の1案としては、フォークソノミーが考えられる