対岸の彼氏 | taburogu

対岸の彼氏

溢れる人の中で、すれ違いに会釈しても気づかれることなかった。携帯電話を片手にずっと誰かを探してる。そっか。俺とは面識ないもんね。会釈しながら言った「お疲れさまです。」の一言が多すぎる人に消された。顔ぐらい知っていてくれても良いと思った。なんとなく、恥ずかしい思いでいっぱいだった。

いつからか自分の限界を知っていた気がする。なんだって理屈が先行して、出来ないことは出来ないと諦めた。安心したいから誰かに相談し、くれる優しい言葉に縋り続けた。気がついたらただ時が過ぎているだけで、得ているものは何もなかった。

「会うのも、顔を見るのも、嫌で嫌でたまらなかった。」

何度も会ってはいるから、知っていると思ってた。年も近く、同じ大学で、同じくゲイである彼。あか抜けていて、俺からはとても輝いて見えた彼。そんな彼にいつからか抱いていた劣等感。何も努力してなかったのに本当に勝手で、そんな自分にも憤りを覚えた。

多分、努力してない自分を見つめるのが嫌だったんだと思う。だけれど一枚隔てて、彼をずっと見てた。同じ世代、同じ環境、そして同じゲイ。恋愛感情抜きに、色々な話がしてみたかった。動き出す為の刺激がもらいたかった。そして、自分の限界を超えてみたかった。だけれど、そんなのはどれも後付けの理屈な気がする。本当はずっと、友達になりたかったんだ。

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