秋葉原メイド襲われ事件の語られない部分 | タブロイド監視委員会

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東スポ・夕刊フジ・日刊ゲンダイといったタブロイド紙の“前垂れ”や週刊誌の中吊り広告から社会の動きを独断と偏見で読み取ろうという大胆不敵なブログ(笑)。

20061024東スポ

秋葉原にいる「メイド喫茶」のメイドが刃物で脅されて体を触られたという事件は「メイド狩り」などという表現でずいぶんとTVのニュースになったので知っている人も多いに違いない。一般の人から見たら、秋葉原で流行っているメイド喫茶の女の子が被害にあって大変だな可哀想に…というところだろう。だが、メディア側がそういう方向に誘導して演出していた部分があって、そのニュース性を判断するために重要な部分が実は意図的に報じられていない。


そもそも、被害にあったお店「エアー萌えっと」は、一般に知られるメイド喫茶ではない。喫茶店やカフェの部類ではなく、これはどちらかといえばキャバクラだ。秋葉原の萌え系オタクの人たちさえ一切無視している半風俗のお店で、30分3,000円でメイドと客が個室に入って肩もみしたりゲームをし、メイドは指名も可能。さらにお散歩コースという名で二人で秋葉原を散策するサービスもある。こういう形態のお店は秋葉原でもここだけ。これは酒が出ないだけで実質的にキャバクラ、もしくはデートクラブだ。店側は風俗店ではないというかもしれないが、世間一般の認知としては“そちら”側に入る。だいたい喫茶店のウェイトレスが客と2人きりになって個室でサービスはしないし、これは法律的には「接客」ではなく風営法の「接待」にあたるのではないか。


「駅前でチラシを配っていたら店への案内を依頼され、そのまま店まで行ったら店の階段で襲われた」という話になっているが、もともとこの店は駅前でメイドを立たせ、客が依頼すれば店まで連れて行くこともあるお店だ。人によってはキャッチ方式じゃないかと評する人もいる。ちなみに、時間によっては駅前のチラシ配りメイドのかなりの数をこの店が占めることもある。



そういうところで働く女性だからといって、刃物で脅して触っていいというわけでは決してない。だが、そういう店ではそんなリスクもあるし、キャバクラでの事件といえば誰も見向きもしないだろう。メディアの報じ方は、とにかく「秋葉原」「メイド(喫茶)」という旬なステレオタイプのイメージを利用しようと、あえて狙いからはずれる部分は目をつぶって報じていなかったようだ。


キャバクラの話だとすれば、こんなのは良くある話でニュースにもならない。だが、「秋葉原」と「メイド(喫茶)」というステレオタイプのイメージで事件といえば、新聞は売れるしTVも視聴率が取れる。


秋葉原の近くで仕事をしている自分も、事件の一報を知ったときは、えらいことがおこったなぁと思ったが、TVを見て驚いた。事件の現場が写ると、そこは秋葉原でもアダルトグッズ店や出会い系喫茶など風俗系店舗がひしめく裏ゾーンのフロアへ向かう雑居ビルの階段。こんなところは秋葉原に詳しい人間だって避けて行かないこところだ。30台男の私でさえ、そのフロアはあまりの雰囲気にびびってしまうくらいだ。レポーターはその階段で「ここで事件がおきました」と話す。それを見た瞬間、おいおいそこにあるのはメイド喫茶じゃないじゃん…と、一気にニュースのイメージが崩れてしまった。そのビルの2Fは薄暗く危険なイメージのところで、アダルトビデオやグッズを売る店がひしめき、被害店舗の真ん前には出会い系喫茶なる半風俗店もあるのに、あえてTV(日本テレビ)はそこを映さなかった。


これは、あきらかに当初から狙っていた「秋葉原のメイド“喫茶”の女の子が大変!」という先に出来た報道イメージからずれてしまうため、あえて落としたということではないのか。これじゃ事件の真相を追いかけて掘り下げたのではなく、単なる野次馬報道だ。現場に取材に来た時点で、普通の場所ではないことはすぐわかったはずだし、裏社会のニオイを記者も感じたはずだが、これではなんのために現場まで出向いたのか。


新聞も「メイドが襲われる」「メイド狩り」と書けば売れると思ったのか、24日には東スポは一面、ほかのスポーツ新聞もメイド姿の女の子の写真を載せて大はしゃぎだ。もっとも、東スポは、行間にこのあたりの真相をにじませていて、なぜその店が狙われるのかをソフトに書いていたし、「アキバ メード レイプ未遂衝撃告白」と大仰なタイトルのわりには、メイド姿のプロレスラーを紹介して「メードレスラーに征伐頼もう」とおちゃらけをいれたり、決して社会問題として扱わず、真実をちらつかせながら東スポ的エンターテイメントに仕上げられており、こここまでやれば立派なもの。


「普通のメイド喫茶」も一般の目からすればおかしな世界だし、夜中もメイドの格好で一人でチラシを配っている実態もあって危ない話だが、今回の事件とそれとは、厳密には違う話だということは知っておくべきだし、これは新聞やTVといったメディアが注目を集めるために演出したニュースであるという面も知っておくべきだろう。


ちなみに新聞社が「メイド」を「メード」と表記するのは、新聞社の外来語表記規定によるもの。新聞社などが参考にする共同通信の記者ハンドブックでも「メード」と表記されている。


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■東スポ
 アキバ メード レイプ未遂 衝撃告白


■日刊スポーツ
 アキバ メード喫茶に刃物男

関連本など
メイド喫茶の制服写真を集めた本。秋葉原では、こんな格好の女性が普通に歩いていたりするのです。もうその時点で普通じゃないって?(笑)