アスベスト(石綿)粉塵(ふんじん)の対策が不十分だったため、石綿肺や肺結核にかかったとして、車両部品製造会社「渡辺工業」(大阪府和泉市)に、元従業員の松本ケイ子さん(80)と長女(63)が計3630万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、大阪地裁であった。田中敦裁判長は「自らの仕事を犠牲にして、寝たきりの母親の介護を余儀なくされた」として、介護していた長女への慰謝料110万円を含め、計2400万円の支払いを命じた。

 弁護団によると、アスベスト関連訴訟で介護に対する慰謝料が認められたのは初めて。

 判決によると、松本さんは同社で昭和39年から約21年間勤務し、車両のクラッチ部品を削って研磨する作業に従事。部品には石綿が含まれ、研磨の際、石綿粉塵が飛散していたが、同社は石綿の危険性の告知やマスク着用を指導していなかった。

 長女は石綿肺などにかかった松本さんの介護のため、1年の3分の1以上、欠勤や遅刻せざるを得なくなり、平成20年7月に勤務先を依願退職した。

 判決後に会見した長女は「渡辺工業は、判決を真摯(しんし)に受け止め、母が亡くなるまでに1日でも早く謝罪してほしい」と訴えた。 

 松本さんは泉南アスベスト国賠訴訟の原告も兼ねており、同訴訟は来月19日に判決が言い渡される。

 渡辺工業の話「被害者には治ってほしいが、石綿被害は国の長年の対応の不備が原因。経済成長を優先させ、国が大企業の声に耳を傾けたことで規制が遅れた。正しい情報が早く伝わらなかった労働者や小企業は共に被害者で、健康被害の責任の大部分は国にある。国の責任こそ明らかにすべきだ」

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