雁風呂・・・ | 津軽半島の自然

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青森県津軽半島の自然風景や自然現象、さらに野鳥を写真で紹介していきます。ときには撮鉄にもなります。

 外ヶ浜に伝わる雁風呂の話・・・文責 t123456


 「雁風呂」という季語があり、春を表す。
これは、青森県の津軽地方、外ヶ浜(平内、青森、上磯のむつ湾沿岸)に語り継がれている伝説から生まれた言葉であるという。日本に越冬にやってくる雁は、小枝をくわえてくるという。実際にないことである。万が一、疲れ果て洋上で休まなければならないときに、小枝を使うのである。外ヶ浜に無事たどり着いたなら、小枝はいらなくなるので浜に落としていく・・・
 春になって、日本の各地で無事に越冬した雁たちが、浜の小枝を拾って北帰行を続ける。しかし、浜には夥しい小枝が残るという。運悪く、罠にかかったり、野犬やキツネに襲われたり、鉄砲で撃たれたり、病気で亡くなった雁の小枝である。
浜の住民は、この小枝を集めて雁の供養のために風呂を焚いて、旅人などをもてなしたという。この話は、日本の悲話として有名であるが、私は悲話というよりは「あはれ」であると思っている。...
 「がんがん、竿になれ、鉤になれ」という言葉があるが、これは雁が渡るときの編隊からきている。雁などの大型の鳥は、前の鳥が羽ばたいた気流を捕まえて飛行する。すると、先頭の雁がとても疲れることになる。先頭が代わるときに、一直線になったりVの字になったりすることによるらしい。
 現在、日本に越冬にきている雁の数は15万羽以上とも言われている。宮城の伊豆沼や新潟の瓢湖などで越冬した個体は、必ず青森県を通過して北海道に渡る。飛行中にはお互いに大きな声を交わし、励ましあいながら飛ぶ。繁殖地までの無事を祈らずにはいられない。
春になって、いつも思い出す俳句がある。
「雁風呂や 海あるる日は 焚かぬなり」 高浜虚子

写真は、一枚目・・・マガン、二枚目・・・コクガン