分煙ではいけない理由はこうです。 | 潮田智道のブログ

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 以前、煙草の値段はいくらが妥当かに関する記事で、たばこは全面禁止すべきものなので、煙草の値段はつけられないと書きました。


 しかし、非喫煙者が多数派になりきっていないことが影響してか、まだまだ極論とうけとられがちなようです。

 受動喫煙によって健康被害を受ける人にとっては何らメリットのない行為であるばかりでなく、社会的コストも増大する点も否定できません。

 かつての大気汚染による健康被害と構造的には似ているわけです。

 

 記事の中で


 「受動喫煙防止のための政策勧告、世界保健機関、2007年」



という文書のリンク先をご紹介しました。


 再掲すると、以下がその原文と、日本語訳のリンク先です。


"PROTECTION FROM EXPOSURE TO SECOND-HAND TOBACCO SMOKE Policy recommendations "、WHO、2007年6月(NPO法人日本禁煙学会による和抄訳 )



 以下に、日本語訳の抜粋を示します。

 分煙では不十分であることが示されています。



------------------------(以下抜粋)-------------------------

効果的な受動喫煙防止対策

屋内完全禁煙

受動喫煙に安全レベルはない。141554 したがって、屋内での喫煙をなくすことだけが、人々を受動喫煙の危険から守る唯一の科学的根拠に裏付けられた対策である。屋内禁煙は健康を増進させる。この対策が実行されたところでは、受動喫煙が減って、健康が回復する。しかも、タバコ産業が主張している効果のない「全面禁煙に代わる対策」と比べても、とても費用効果が良い。ちなみにタバコ産業が偽装団体を通じて提案する「全面禁煙に代わる対策」55を以下に示す。


· 同じ屋内で喫煙者と非喫煙者を分離する(訳注:いわゆる「分煙」)

· 「喫煙区域」を設定した上で、換気を増やし、空気清浄機を置く(訳注:これもいわゆる「分煙」。JTの主張参照http://www.jti.co.jp/sstyle/bunen/index.html

効果のない「全面禁煙に代わる対策」

同じ屋内で喫煙者と非喫煙者を分ける. 完全な仕切りをせずに同じ屋内で喫煙区域と禁煙区域を分けても、受動喫煙をなくすことも減らすことも出来ない。56-60 非喫煙者がSHSにさらされる度合いは、部屋の大きさ、気流、喫煙区域と非喫煙区域の距離、喫煙本数などで大きく変わる。空調システムは、ほとんどの場合、タバコ煙で汚染された空気を非喫煙区域に再循環させる仕組みになっている。ラテンアメリカで空気中のニコチンを測った調査によれば、喫煙区域よりも非喫煙区域のニコチン濃度が高くなることもあるという。41 さらに、禁煙区域で働く労働者と喫煙区域で働く労働者の間でSHS曝露度に差がないという研究も発表されている。6162 


換気と空気清浄機+「喫煙区域」. 換気と空気清浄機を組み合わせたとしても、許容レベルまでSHSの臭いや濃度を減らすことは出来ない。6364 換気速度を上げると、タバコ煙などの屋内空気の汚染物質濃度は下がるが、換気速度を基準の100倍以上に上げなければ、タバコの臭いをなくすることは出来ない。63 もっとも、タバコの臭いと有害物質の濃度は必ずしも比例しない。臭いがなくとも、有毒物質が高濃度となっていることも少なくない。有害物質の完全除去だけが唯一の意味のある受動喫煙対策であるが、それを実現するにはさらに換気速度を上げなければならない。しかし、このような(訳者注:強風が吹きぬけるような)換気は、技術的にもコスト的にも非現実的であるし、とても不快なので、そのような屋内で仕事をすることは出来ない。65 (訳者注:訳者の計算によれば、タバコの臭いを感じる閾値は、タバコ煙由来PM2.51μg/㎥のときである。このときでさえ、環境基準の50300倍の致死的汚染状態となっている)

同様に集中式あるいは分散式空気清浄化システムを用いても、屋内のSHSの有毒物質を許容レベルまで減らすことは出来ない。しかも空気清浄機の性能はすぐに低下するため、頻繁にフィルターを交換する等のメンテナンスコストは莫大となる。また空気清浄機自体が屋内空気の汚染に拍車をかける。タバコ産業とその応援団が宣伝する「one pass system片道システム」は、フィルターを通した空気を再循環させないので、常に外気を取り入れて加温・冷却しなければならず、コストはとても高くなる。いずれにせよこうした設備で屋内のタバコ煙濃度を安全レベルまで下げる事は出来ない。6667 

数十年間にわたってタバコ産業から圧力を受けていたにもかかわらず、68 米国における換気空調基準設定の指導的専門団体である米国冷暖房空調技術協会(ASHRAE)は、屋内で喫煙が行われている場合の換気に関する勧告規準の設定をやめている。ASHRAE2005年の環境タバコ煙[e] 問題に関する方針書で「現時点で、屋内のタバコ煙への曝露をなくする唯一の効果的な手段は喫煙を禁じることである」と結論を述べている。59 同じ方針書には「公衆の利益のために活動するというASHRAEの方針に基づき、環境タバコ煙への曝露を最低限にする最上の方法が屋内での喫煙をなくすることであり、わが協会はその実行を呼びかける」と言う記述もある。

国際標準化機構(ISO)は、ビルディング環境デザインに関する作業委員会ISO/TC205が準備した換気とタバコ煙に関する基準勧告書ISO16814の草案を検討中である。しかし政治家と行政担当者は、ISO基準が過去にタバコ産業の強力なロビー活動の圧力のもとに定められたことを想起すべきである。68 さらに、現在のISO16814草案が「喫煙環境の中で換気と空気フィルターを併用して適切な安全環境を実現することは無理である」70と認識しているのに、換気によって喫煙区域の空気が禁煙区域に入り込むことを防止できると言う幻想を述べている。換気とSHSに関して最新の科学的根拠に基づいているのは、現在のISO16814草案ではなく、2005年のASHRAE方針書の方である。

いくつかの地域で特定の条件の下で許可されているタバコ産業が推進する換気に重点を置いた「対策」がある。それは、喫煙区域と禁煙区域を物理的に区切り、換気系統も別々にするというものである。このいわゆる「designated smoking roomDSRs)」(訳者注:訳せば「指定喫煙室」だが、日本のいわゆる「煙の漏れない喫煙室」あるいは「完全分煙」設備にあたる)は、喫煙室の空気を屋外に排気し、給気も別系統で行い、喫煙屋内の気圧を周囲よりも低く保つ仕組みとなっているが、どれくらい受動喫煙被害を減らすかについて研究が行われている。その研究によれば、そのような部屋を作っても、SHSをある程度減らすことが出来るが、完全に除去することは出来ないことが明らかになっている。さらに「煙の漏れない喫煙室」を作っても、隣接する禁煙区域に居る非喫煙者のSHS曝露をなくすることは出来ない。71,72 また、その中で働かざるを得ない労働者を受動喫煙から守れない。そして喫煙者はより高度のSHSにさらされ、健康への危険度が一層高まる。73 例えば、指定喫煙室のドアは、人々が出入りするたびに、煙を部屋の外に汲みだすポンプの働きをする。


指定喫煙室は設置が困難で、とても費用がかかる。(ボックス1参照)

-----------------------------------------------------------------------------------【ボックス1なぜ「煙の漏れない喫煙室=指定喫煙室」ではダメなのか?

· 喫煙室から煙を漏れないようにすることは極めて困難で、設置とメンテナンスに莫大な費用がかかり、設計図通りに製作・運用されないことが多い。またそれを利用する喫煙者とその中で働く労働者を高濃度のSHSにさらす。

· 禁煙区域から独立した空気清浄装置と換気システムを設置するとしても、それはひどい刺激症状が出ないレベルまでタバコ煙濃度を減らすことを目的としたものであり、少しも受動喫煙の害を減らす役には立たない。

· 法律で労働者を指定喫煙室に立ち入らせてはならないと定めても、実際は雇用主が従業員に喫煙室の中で顧客にサービスするよう圧力をかける恐れがある。

· 営業中、接客のために指定喫煙室のドアは絶え間なく開け閉めされる。それどころかドアを開けたままにすることもある(喫煙者でさえ煙いから入りたくないと言うことがある)。開いたドアから禁煙区域に大量のタバコ煙が流入する。

· 指定喫煙室を認めると、法律執行担当部局のコストが激増し、法律の執行にも大きな障害がもたらされる。

出典「Ontario Campaign for Action on Tobacco

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法令で指定喫煙室の設置を認めた地域の中には、(ボックス1に示した)法令執行上の問題点に直面したため、指定喫煙室の設置を認めないよう法令を改正したところもある。74 接客産業に指定喫煙室の設置を認める動きは、労働者の健康を守るうえで極めて望ましくない事態である。なぜなら、指定喫煙室の設置を認めると、従業員が恐ろしく高濃度のSHSにさらされることになるからである。そればかりでなく、指定喫煙室の設置を容認し、さらに悪いことだが、設置を義務付けると、関係業界に高価だがまったく効果のない換気システムへの投資を強制することになり、将来屋内完全禁煙法を制定する上で大きな障害となる。なぜなら、多くの会社や団体がこのような無駄なシステムに多額の投資をしてしまうからである。[f]


屋外とそれに準ずる場所

タバコ煙を有毒空気汚染物質に認定するためのカリフォルニア州環境保護局が行った研究レビューによれば、喫煙者数、囲いの状況、風速・風向などの気象条件によっては、屋外のSHS濃度が屋内と同じくらい高くなる可能性があるという。14 しかしながら、屋外のSHS濃度は概して喫煙の行われている屋内よりも低い。

遊園地の屋外喫煙可の区域のすぐそばにある建物内の平均ニコチン濃度(2.4 μg/㎥)は、週あたりの喫煙本数が50本未満の喫煙者の住む住宅内と同じレベル(<3μg/㎥)である。したがって、屋外で働く時間が非常に長い労働者、たとえば屋根つきあるいは部分的に覆いのある喫煙可の中庭で働くウエイター、警備員、ドア係の受動喫煙曝露は高度となりうる。

海水浴場77,78、屋外スタジアム79、中庭80、ビルの入り口のそば81をはじめとして屋外での喫煙を禁止している地域75,76や施設もある。このような決定は、屋内が禁煙なのだから屋外も禁煙にせよという世論に押されて行われることも少なくない。

屋内のすぐ隣の屋外(たとえば中庭)が喫煙可の場合あるいはドアや空気取り入れ口が開け放しになっている場合も受動喫煙が問題となる。熱帯や亜熱帯の国々でよく見られることだが、屋内と屋外をしっかり区切る壁がない場合すなわち「屋内といっても事実上屋外」の環境でも、受動喫煙の問題が浮上する。以下のことが問題となる。


· 開いたドアや窓から屋外の喫煙区域で発生したタバコの煙が直接入ってくる。アイルランドでの調査によれば、アイルランド禁煙法の施行後、接客産業の従業員の受動喫煙が大幅に減ったが、屋外に指定喫煙所を設置したバーの室内ニコチン濃度は、それを持たないバーよりも有意に高かった。82

· 禁煙法の執行に当って、屋内と屋外の区別があいまいとなる問題。83-86 たとえば、経営者が中庭に屋根やテントを設置して屋内喫煙禁止を骨抜きにするおそれがある。

· このような屋外に準じた場所を喫煙可にすると、その中で働く者を健康上とても許容できない濃度のSHSにさらすことになる。屋内に匹敵する高濃度の受動喫煙状態となるおそれもある。14 


オーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ州は、「屋外に準ずる」施設問題による苦労を経験している。同州の法律では、25%以上開放されていれば屋外施設と認定するという基準が作られた。その結果、多くの業者が図1に示すような合法的「屋外喫煙可能席」を設定した。



(写真略)



1 オーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ州の某クラブ「屋外席」。同州ではこのような屋外喫煙可能施設が合法となっている。(写真提供:ASHオーストラリア)



あらゆる場所で受動喫煙を効果的に防ぐには、そこで働く者の健康を守り、法のもとでの平等原則を確保し、執行が容易であるように考えると、屋外とそれに準ずる場所を禁煙としなければならない。最低限、このような区域を喫煙可能区域と指定することを許可すべきでない。なぜなら、屋内の完全禁煙が十分な長期間守られたのち、世論が、禁煙施設のすぐそばの屋外も禁煙にすべきだと望むようになった時に、対応が容易だからである。


屋内全面禁煙は健康と喫煙率にどのように影響するか


屋内を禁煙にすると、屋内の空気の有毒物質濃度は著明に減り、SHSにさらされていた人々の健康を速やかに回復させる。


空気中の有害物質濃度があっという間に減る

肺の奥まで吸い込まれて肺や心臓を傷つける超微粒子の濃度(PM2.5)は、アイルランドのバーでは、禁煙法が執行されてから83%低下した。空気中のニコチンも83%低下した。また従業員の申告による週当たり平均受動喫煙曝露時間は30時間からゼロ時間に減少した。87 

この受動喫煙の減少に伴い、タバコを吸わない接客産業従業員の受動喫煙曝露マーカーの値も低下した。バー従業員で非喫煙者の呼気中一酸化炭素濃度は45%減り、タバコをやめた従業員でも36%減った。87 接客産業従業員でタバコを吸わない労働者の唾液中のコチニン濃度は、禁煙法施行後、69%低下した。


労働者の健康が回復した

屋内禁煙法施行1年後の自己申告調査で、アイルランドのバー従業員の呼吸器症状が16.7%減っていた。88 

カリフォルニア州における調査では、バー禁煙法の施行前と比べて、施行後8週間でバーの従業員の呼吸器症状が59%、粘膜刺激症状が78%減った。89 

ニュージーランドの2002年の調査では、禁煙のオフィスで働く労働者の呼吸器症状と粘膜刺激症状は、接客産業の従業員よりも少なかった。(職場の禁煙法は200412月に施行された)90 

スコットランドで2006年に屋内の全面禁煙法が執行されて以後、バーの従業員は、呼吸器症状が減り、呼吸機能が改善し、全身の炎症所見が正常化した。気管支喘息を患っている従業員では気管支の炎症が減り、生活の質が向上した。91

米国のモンタナ州へレナとコロラド州プエブロでは、職場と公衆の集まる施設を全面禁煙にするという強力な法令が施行されてから、イタリアのピードモントと同様に、心臓発作(心筋梗塞)の発生率が平均20[g] 減った。比較対照の自治体では、心臓発作による入院率の減少は観察されなかった。しかしながら、ヘレナの禁煙条例がタバコ産業の圧力によって撤回された後、心臓発作による入院率は、条例施行前のレベルに増加した。93,94


屋内全面禁煙はとても効果的な禁煙推進策

屋内禁煙は非喫煙者の健康を守るだけでなく、喫煙そのものを減らす上でとても効果がある。世界銀行は、タバコを吸える場所を減らすことによって、タバコ消費量を410%減らすことが出来ると述べている。95 オーストラリア、カナダ、ドイツ、アメリカの最新の研究によれば、すべての職場を禁煙にすることで、タバコ消費を29%減らすことができるという。96 この推計では、職場の禁煙化で、一日あたりの喫煙本数は3.1本減り、喫煙率は3.8%減るとしている。しかし、もし職場にタバコを吸える場所が設置されると、この効果は大幅に減ってしまう。

屋内を禁煙にする法律で義務付けられているわけではないのに、職場と公衆の集まる場の禁煙が法律で決められると、自宅も禁煙にする人が増える。97 家庭を禁煙にすると、こどもや他の家族が受動喫煙を受けなくて済むようになるだけでなく、喫煙者本人が禁煙に成功する確率も高まる。

実際のところ、特別な禁煙プログラムよりも、職場を禁煙にするほうが、少ない費用で禁煙を成功させることが出来る。禁煙者を一人作り出すためにかかる費用は、職場の禁煙化のほうがずっと少なくて済み、喫煙者にニコチンパッチを無料で支給する費用の9分の1だったと言う研究もある。98 最近包括的屋内禁煙法を施行したいくつかの国では、紙巻タバコ消費が減る、スモークレスタバコに切り替える喫煙者が増えるという変化があった(タバコ製品売り上げデータあるいは喫煙率調査の結果より)。99,100 禁煙法が施行されると直ちに「禁煙電話相談」のコール数が増加する事が多いが、23ヵ月後にコール数は平常に戻る。101


職場を禁煙にすると、若者の喫煙開始を減らすことが出来る

屋内禁煙政策は若者のタバコ依存を減らす可能性がある。職場を禁煙にして、地域全体も禁煙とする条例を作ると、10代の若者の喫煙経験率が下がるという複数の調査がある。完全禁煙の職場で働く10代の若者は、そうでない職場で働く若者より32%喫煙経験率が低いという報告がある。102 屋内禁煙が法律でしっかり決まっている地域の10代の若者の喫煙率はとそうでない地域よりも絶対値で2.346.0%、相対値で17.2%低く、一人当たりのタバコ消費量は50.4%少なかったという。103 

家庭を禁煙にするとやはり10代の若者の喫煙率が減る。他の家族の喫煙習慣の有無などを調整しても、禁煙家庭の若者は禁煙でない家庭の若者より26%喫煙経験率が低い。98

以上から、屋内の禁煙は喫煙の社会的受容度を減らす強力な効果があり、若者の喫煙開始予防効果がある。タバコ産業は喫煙を「大人の選択」と売り込んできた。したがって、バーやナイトクラブのような若者のあこがれる空間から喫煙をなくすことは、大人のしるしとしてタバコを吸うという喫煙の持つ象徴効果を減らすことにつながる。


まとめ


屋内禁煙は非喫煙者を受動喫煙から守る対策のゴールであるだけでなく、公衆衛生組織がタバコ対策の二大目標として掲げている喫煙開始防止と(喫煙者の)禁煙推進にも良い影響をもたらす。


屋内禁煙の経済効果

受動喫煙は経済損失をもたらし、屋内禁煙化は経済効果をもたらす。その内容は以下のとおりである。


· 屋内を禁煙にすると、受動喫煙の病気が減るため直接医療費が節約できる。保険のコストも減る(喫煙者は病気・火災・事故が多く早死しやすい)

· タバコを止めた喫煙者と受動喫煙にさらされなくなった非喫煙者の仕事の能率が上がる(就業中の喫煙と病欠による労働時間の損失が少なくなるため)

· オフィスのメンテナンス費用の節約

· 職場における受動喫煙訴訟リスクの低減、受動喫煙と他の物質の複合汚染の防止


これらによる経済効果は、とても大きい。職場の禁煙化が雇用主にもたらす経済効果はスコットランド104では、GDP0.515%、アイルランド105ではGDP1.11.7%に匹敵する。米国労働安全保健管理局(OSHA)は、屋内禁煙によって労働生産性が3%向上すると試算している。106

屋内禁煙法の施行・徹底に必要な行政的経費(主に法令施行に当っての講習や禁煙の標識の設置費)が若干かかるが、禁煙法に対する受容度が増すにつれてこうした費用はかからなくなる(し、実際にそうなっている)。いずれにせよ、世界銀行は、職場の禁煙化で得られる経済メリットは、そのコストを大きく上回る。107

屋内禁煙は、接客業界に損害をもたらすと言う主張がしばしばなされる。しかし事実は正反対である。タバコ産業の主張に対する直接的反論108になるが、屋内禁煙法の施行後、接客産業の売り上げや雇用でみた経済影響は、施行前と変わらないか、もしくはプラスの経済効果が生み出されることが全世界的調査から明らかになっている。109,110 屋内禁煙政策を実行しても、この業界の顧客を減らすことにはならない。この業界113,114あるいは他の業界115,116において、メンテナンスコスト111,112や保険コスト、従業員の欠勤113,114は、禁煙法施行後減るようだ。このように、タバコ産業は、職場の全面的禁煙がタバコ消費量の大幅な低下を招くため、それをさせない活動を強力に行う必要性があるのである(ボックス2)。

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【ボックス2】 タバコ産業が語る「屋内禁煙のインパクト」

· 「屋内喫煙禁止の動きをおどして封じるためにわが業界が主張してきた景気悪化論はもはや効果がない。これを主張しても誰も信じない。われわれが昔行った「(禁煙にすると景気が悪くなるという)恐ろしい予測」がほとんど外れたのを見ればわかるだろう」フィリップモリス、1994http://legacy.library.uscf.edutid/vnf77e00

· 「わが消費者がわが製品を使用する機会が減らされたなら、消費が減り、決算に悪い影響がもたらされる」フィリップモリス、1994http://legacy.library.uscf.edutid/vnf77e00

· 「職場でタバコが吸えないので前よりも一日1本と4分の1本喫煙本数が減ったという人がいる。この1.25本減ったと言う数字は、全国で職場の禁煙で毎年70億本くらいタバコの消費が減ったということになる。つまり20本入りタバコ35千万箱にあたる。一箱1ドルくらいだから、職場がちょっと禁煙になっただけで、毎年233百万ドル売り上げが減ることになる」米国タバコ協会、1985http://legacy.library.ucsf.edu/tid/owo03f00

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