ワシントンのウッドロー・ウィルソン国際研究所で1月13日に行われたシンポジウムでデービッド・オルブライトが、対イラン制裁を十分に履行していないと中国を批判した。


オルブライトは、国際原子力機関(IAEA)に勤務した経験のある核物理学者でイランの核開発に関する専門家である。現在は科学・国際安全保障研究所の所長を務めるオルブライトによれば、マルエージング鋼や特殊真空ポンプなどウラン濃縮設備の製造に使われる製品をイランが中国で再三にわたり調達している。


またオルブライトによれば、中国企業を装ったイラン企業が欧州で規制の対象となっているハイテク製品を購入しようとした例もある。


中国の対イラン制裁が不十分との見方は米議会でも共有されており、中国の胡錦涛国家主席の訪米前にオバマ大統領に当てた書簡で、コネチカット州選出のリーバーマン上院議員とイリノイ州選出のカーク上院議員(共和党)が、対イラン制裁を履行していないとして中国を非難した。具体的には、中国がミサイルと核開発に必要な製品をイランに供給しており、しかもイランのエネルギー部門に資金的に物質的に支援を与えていると非難している。この書簡の中で両議員はオバマ大統領に中国に警告するように強く求めている。警告とは、もし協力が不十分な場合は、米議会が問題の中国企業を制裁するとの内容である。さらに、中国がイランに石油製品を提供していると続けている。両議員が名指しにしたのは、国有のCNPC (China National Petroleum Corp中国石油天然気集団公司)とCINOPEC(シノペックthe China Petroleum and Chemical Corp中国国有中国石油化工 )である。


ちなみにリーバーマン議員は敬虔なユダヤ教徒でイスラエルの熱烈な支持者として知られている。2000年の大統領選挙では民主党の副大統領候補であった。ブッシュのイラク戦争を支持したため、2006年の中間選挙では民主党の推薦を受けられなかったが、無所属で立候補して上院議員の議席を守った。2008年の共和党の大統領候補であったマケイン議員とも親しく、共和党の副大統領候補に指名されるのではないかとの下馬評さえあった。対イラン強硬派の代表である。


さらに下院外交委員会のメンバーのカリフォルニア州選出のバーマン議員(民主党)もオバマ大統領が中国による対イラン制裁の遵守を求めるように呼びかけた。


なお1月に入って米財務省は、新たに26社をイランの制裁対象になっている企業の隠れ蓑の企業であるとして制裁対象に加えた。26社は香港か、あるいは英国とアイルランドの間のマン島に住所があり、その内の16社は香港の同じビルの同じ階に住所がある。
(1月22日、記)


※畑中美樹氏の主宰するオンラインのニュースレター『中東・エネルギーフォーラム』(2011年1月25日)に掲載した文章です。


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