下水垂れ流し | 歴史の裏

下水垂れ流し

 お台場海浜公園は汚ない

 

 

オイルボール

 東京の観光名所・お台場。全国各地から観光客がやってくる。レインボーブリッジを背景に記念撮影したり、お台場海浜公園で海に浸かって遊んだりする姿が見られる。しかし、この人たちは、この海浜に下水の未処理水が流れ込んでいることに気づいているのだろうか。しかも、この現象は日本で逸早く下水道を導入した全国192の先進的な大中都市周辺で起こっていることなのだ。

 33日には6回目の東京湾再生推進会議が開かれ、「東京湾再生の行動計画」の第2回中間評価報告をまとめた。中間評価報告では「再生への道は着実に進んでいる」としながら、4年後の行動計画終了時の体制づくりの必要も強調している。行動計画は2004(平成16)年に作られ、期間は10年。3年前の2007年に最初の中間評価報告が出された。なぜ、こんな会議がつくられたのだろう。

 各地の海で水質監視を続けている海上保安庁が2000年ごろ、お台場海浜公園の海で白いオイルボールがあるのを見つけた。1960年代に各地の海岸に廃油ボールが漂着し問題となった。海水浴場などで足に黒くべったりと付いた。1970年の公害基本法制定を受けて、その後はこうした現象はなくなった。ところが、お台場海浜公園では白いオイルボールが見つかっている。特に雨が降った後に多い。追跡調査の結果、沿岸工場からの排出は認められず、原因が判明した。未処理の下水が川を通じて流れ込んでいるのだ。雨の後は水質も悪化。大腸菌うようよが実態だ。どういうことか。

 

合流式下水道の欠陥

実は、戦後いち早く下水道を整備したことが裏目に出たのだ。下水道には合流式と分流式がある。汚水と雨水を同じ管で下水処理まで運ぶのが合流式。下水処理場には下水だけ流し、雨水は別の管で川に流すのが分流式。合流式では、雨水が洗い流した道路上の汚濁物質下水処理場で処理できる上、管路が一つで済むため整備コストが安く効率的などの利点があり、東京都や大阪市など早くから下水道事業に着手した自治体は合流式が多い。しかし、雨天・融雪時には下水処理場の能力を超えてしまい、ポンプ場や雨水の吐き出し口から汚水が未処理のままで放流されてしまう。これが、お台場海浜公園のオイルボールの原因だ。

 

埋め立て汚水は規制外
 実は、他にも東京湾で水質悪化の問題がある。東京都はゴミを東京湾に埋め立てて新しい土地を造る「夢の島」計画を進めている。これがお台場に代表される埋立地だ。ゴミを埋め立てる際、事業主は汚水が出ないよう対策は立てているが、埋め立て完成後に埋立地から東京湾へ汚水が排出されるケースがある。公害防止関連法には事業所からの排水には厳しい規制があり、違反すれば罰則があるが、埋立地からの汚水には何の規定もなく、汚水は垂れ流しされたままだ。東京湾の水質は悪化し、水生動物に影響が出ている。

 

東京湾再生への試み

 海上保安庁の呼びかけで2001(平成13年)12月に関係省庁、関係地方公共団体が連携して、東京湾再生推進会議を設置し、東京湾再生のための行動計画を策定。東京湾の水環境再生に向けて、総合的な施策が推進されている。