未検米の産地表示解禁は「引っ掛けリーチ」? | 週刊ライス・ビジネス 〔コメ 生産・流通の動向〕

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 米トレサ法が来年7月に施行されることに伴い、JAS法も改正されて未検査米でも産地表示が可能になる。今後、品種名についても産地検査を受けなくても表示を可能とする方向だ。業界ではこの動きを「規制緩和」と受け取る向きが多いが、現実的に将来を予測すると、この動きは逆に「規制強化」を招く可能性が強い。いわば今回の改正は麻雀で言うところの「引っ掛けリーチ」によく似ている。行政がそれを企んだかどうかは別にして、結果的にそうなる可能性が強い。


 なぜなら改正の内容が「流通業者は自己責任で産地表示できる」というもので、まるでトレーサビリティの基本を無視したものだからだ。業者が「自己責任」で産地を表示できるなら、これはトレーサビリティではない。国の審議委員会でもこの改正に大半の委員が反対したのもうなずける。しかし消費者庁・農林水産省はこの改正を強行した。


 トレーサビリティの基本に反する改正が米トレサ法の名の下に強行されるのは極めて面妖なことで、これには裏があると考えるのが自然。この改正が実施されれば早晩、業者の表示偽装が発覚・摘発されるのは必至で、それに伴って「もっと厳しくしろ」という世論が高まることも必至。


 そうなると農林水産省はいままで手を付けられなかった未検査米の流通に、世論を味方に付けた形で堂々と介入できることになる。ひょっとすると農水省は200万トンを超えると言われる産直米の流通を行政の監視下に取り込もうと企んでいるのかも知れない。


 行政の「引っ掛けリーチ」にまんまと乗って、安心して牌を捨てているうちに、役満を振り込む愚は避けたい。加えて、未検査米の産地・品種検証には莫大な人手が必要で、それに伴う行政の肥大化も問題。もともと米トレサ法は役所組織維持のために発案されたものだが、役人はそれでは飽き足りず、役所組織の強化・拡大を画策しているようだ。


 なにが「政治主導」だろうか。