- 何気なく本屋に寄ったら、新作が出ていたので迷うことなく、レジへ直行しました。
- 月と蟹/道尾 秀介
- ¥1,470
- Amazon.co.jp
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」
やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。
やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる――
やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。
(小説の帯の紹介文より)
道尾氏の作品で単行本化されたものは例外なくすべて読んでいます。
その中で、前作「球体の蛇」 に続く、道尾氏では珍しい「普通」のお話。
やり場のない心を抱えた、お約束な子供たちのひと夏の物語。
今回もミステリーというよりは、そんな子供たちの友情、恋、嫉妬、嘘、疑心が織りなす、
とっても切ない物語。
小学生でも大人顔負けの心情描写、けれどもその心情はとても少年らしい。
ミステリーのようなどんでん返しはなくとも、読後は心地いい余韻が残ります。
ああ、こういう物語が書きたかったんだな……と思えるほどに。
それぐらい切ない。
世の中にはもっと切ない物語はいくらでもあるだろうけれど、
そういった物語は大抵、恋人同士の物語であることが多い。
この作品は恋もあるけれど、それよりも友情や嫉妬がすごく切ない。
それが小学生の子供じみた心情であっても、大人だって共感できるぐらい切なくなります。
そんな少年たちが救いを求めたのが、「ヤドカミ様」。
冒頭の、
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」
「叶えてくれると思うで。何でも」
このセリフ1つに辿りつくまでに、どれだけ切なかったことか。
「光媒の花」 の切なさもそうですが、最近はこの傾向が強い。
そして、ミステリー大好きで読み始めた道尾氏の作品に、
こんな切なさを求めるようになってきてしまいました。
そろそろ普通のミステリーが読みたいところですが、
以前に「普通の話」は2作ということをどこかで読んだことがあるので、
次回作はきっと素敵なミステリーを仕上げてくれることでしょう。
何か切ないとしかレビューしてませんが、どこか心に響くものがある、
この切なさが本当に印象的なんです。
ちょっとでも興味が湧いた方は是非。