昔のカンニングといえば、答案を持ち込んで盗み見る程度のものだったが、京都大学の入試で行われたスパイ映画もどきの新手の“カンニング”は、入試制度の根幹を揺るがす事態、といえる。
驚くことに、試験中に英語と数学の問題の一部が、インターネットの質問サイトに投稿され、実際に試験時間内に答えが寄せられていた。
京大以外に早稲田、同志社、立教の入試でも同様の手口で入試問題がネットに投稿されていた。
犯人像とその手口や目的が話題になった。
当初は世間を騒がせる愉快犯の仕業ではないかと思われていた。
IPアドレスが割り出されていたので、逮捕されるのは時間の問題だったが、その容疑者があっさりと逮捕された。
19歳の予備校生だった。
容疑者の供述は意外なものだった。
「試験に合格したい」
予備校生の家庭は母子家庭だった。家計を助けるためにも第一志望は国立京都大学だった。ところが合格ラインすれすれのところを彷徨っていたようだ。
それで、教室からメールを打って質問サイトへ投稿した、と供述している。
当初は、方法についても様々な憶測が流れていた。
まず、携帯電話のメールで試験問題を送信するだが、数学には複雑な記号が含まれているので、メールではなく携帯のカメラで撮影して、それを外部の協力者が質問サイトへ投稿したのではないか、という説が最有力だった。
教室には2名の試験監督者が配置されていた。長時間メールを打つのは、監視の目が厳しくてできない、と誰もが思い込んでいたが、実際はそうではなかった、ということだ。
監視の目が厳しい、ということが大前提だったので様々な憶測を呼んだが、監視体制はザルだった。
いずれにしても、携帯電話の持ち込みを禁止するしか防ぐ方法はないが、電波を妨害して教室内を圏外にする装置も注目されている。
私のように携帯電話を持たなくても日常生活に支障をきたすことはない。そもそも昔は誰も持たずにちゃんと生活してきたのだから。