2009.1.11 18:32 産経新聞
【北京=野口東秀】北京市で5日、鳥インフルエンザ による初めての死者が出たことを受け、中国政府は鳥インフルエンザ の拡大にこれまで以上に警戒を強めている。今月下旬の春節(旧正月 )連休を前にすでに“民族大移動 ”ともいえる帰省ラッシュが始まっており、変異する恐れのある新型インフルエンザが発生すれば大混乱が起きると想定されるからだ。
死亡したのは北京市朝陽区 の女性(19)で、毒性の強いH5N1型 ウイルスの陽性反応が出た。同市当局はただちに患者と接触した人の隔離や消毒などの予防対策を取り、現段階で新たな感染などは発表されていない。同市の衛生局幹部は「死亡した女性と接触した人が(女性の死亡から1週間後の)12日までに症状が表れなければ、感染を押さえ込んだことになる」と説明している。
しかし、中国メディアによると、国家インフルエンザセンターの幹部は9日、「今後、鳥から人への感染例が1つ増えるごとに、人から人へ感染する変異型ウイルスが発生する危険性が増大する」と述べ、危機感をあらわにしている。中国では感染ルートが解明されないケースも多い。
女性の死亡後、当局は交通機関での動物検疫や家禽類飼育場の検査、管理を集中的に強化したほか、加工処理場などでも検査を徹底している。
女性が生きたアヒルを購入した北京市に隣接する河北省 三河市の行宮市場では、生きた家禽を扱う一画を閉鎖して連日、消毒が続いている。同市と北京市との境界では道路や鉄道に検疫所 が設置され、生きた家禽類の搬入を厳しく制限している。
北京市では公園や広場、道路など多くの人が集まる場所で鳥の糞(ふん)を掃除・消毒する作業が始まった。担当部局は鳥の生息地 などを把握する一方、ゴミ処理場での鳥の監視を強化。市民が死骸(しがい)などを見つけた場合は報告を義務づけている。
一方で消費者への心理的影響も出始めている。北京市では鶏肉などが敬遠され、一部レストランでは北京ダック などの売れ行きも落ち込んでいるようすだ。生肉を扱う市場では、家禽類を購入する市民はほとんどおらず、閑散としている。