138、タミフル耐性/十分な監視が迫られている


                        2008年12月30日 16:17 オーチャン 収録

  

 タミフル耐性/十分な監視が迫られている

                        2008年12月29日月曜日 河北新報

 米国でこの冬、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」がかなり効きにくいタイプのインフルエンザが流行しているという。タミフル耐性ウイルスの増加が原因だ。

 インフルエンザウイルスの増殖を防ぐ内服薬のタミフルは日本でも毎年、大量に消費されており、耐性ウイルスが国内でも広がるようだと、インフルエンザの治療に影響が出かねない。

 タミフルはまた、成田空港で1万錠の備蓄が決まるなど、新型インフルエンザの拡大防止効果も期待されている薬。耐性ウイルスがどこまで拡大するのかは、インフルエンザ対策にとって重要なポイントであり、世界保健機関(WHО)や各国と連携した監視が急務になっている。

 米疾病対策センターによると、患者から採取したインフルエンザウイルスの試料50のうちの49でタミフルへの耐性が確認されたという。
 試料数は少なめだが、際立った高率になっている。仮に米国各地に耐性ウイルスが広がっているとすると、これからほかの国に拡大することも十分に考えられる。

 実はタミフルに耐性を持つインフルエンザウイルスは、欧州で増えていることが分かっていた。昨年11月から今年1月までのデータでは、検査対象の14%からタミフル耐性ウイルスが見つかっている。それ以前は1%未満であり、昨年の冬に急増した。

 日本でも既にタミフル耐性ウイルスは確認されており、国立感染症研究所のまとめでは、昨年冬の時点で調査対象の2.8%から検出された。ただ、地域によってかなりの差があり、鳥取、兵庫、神奈川各県などで高くなっている。横浜市内の一部の地域では、タミフル耐性のインフルエンザウイルスが一時的に流行したことも報告されている。

 日本や欧州で確認されたウイルスはタミフルだけに対する耐性であって、同じ抗インフルエンザウイルス薬である「リレンザ」(吸入薬)への耐性は持っていない。

 タミフル耐性ウイルスがなぜ出現したのか、今のところはっきりとは分からないようだ。薬剤耐性の細菌などは一般的に薬の大量使用によって発生するとみられるが、欧州では通常のインフルエンザにほとんどタミフルを使用しないという。

 だとすると自然変異によって発生した可能性が高いが、いずれにしても1人当たりのタミフル使用量が世界で最も多いとされる日本は、耐性ウイルスが広がりやすい環境にあり、警戒が求められる。
 この冬、タミフル耐性ウイルスの割合が国内でどう変化するのか、相当に注意しなければならなくなっている。

2008年12月29日月曜日 河北新報