無事、「一時間後の、僕。」終演致しました。
ご来場頂いた沢山の方々、ご協力して頂いた皆様、心から感謝致します。
本当にありがとうございました。
「一時間後の、僕。」は、時系列を入り乱している作品で、説明も少なく進行したので、理解出来た部分と、出来なかった部分があったと思います。
なので、解説致します!
まずは、舞台となる青天テレビは、東京都内港区の浜松町にあるということ。
キー局の全ては実は港区に集中してるんですよね。だから裏設定ですが、豆知識程度に頭にいれておいて頂ければ。
全てを説明する必要はないと思うので、説明の少ない場面を基準に解説致します!
事の始まりは、2004年。
このままでは、視力を失ってしまう少年、当時8歳の三崎達也は目の手術を受ける事を怖がっていました。ある日、達也の憧れの野球選手、照本徹に手紙が届きます。それは達也の母からで、「直接会ってもらえないか。」というものでした。直接会いに行った照本は、達也にこう持ち掛けます。
「僕が次の試合ホームランを打ったら、君も手術を受けてくれるかい。」
この話はメディアに取り上げられ、日本中の人が次の試合に注目することになります。
そして、1週間後の2004年3月20日。試合当日。この実況を担当するのは、河渕康夫。劇中で実況しているのは、この試合の、照本の打順が回って来た、2、5、7、9回のみとなっています。照本の7回までの3打席はここまでヒットがありません。そして9回も追い込まれます、そして最後の一球…
照本は、結局打つことが出来なかったのです。
しかし、河渕は、「ホームランです!月まで届きそうな、大きな、大きなホームランです!聞こえてるかい、照本選手はやったよ、だから、君もその目の手術を受けて、必ず、この照本選手のホームランを見に来るんだ、頑張れ、少年!」と嘘の実況をして、達也を勇気づけるのでした。これを後に「幻のホームラン実況」として語り継がれる事となります。
しかし、打てなかった照本を、メディアは叩きました。そして10日後、照本は自殺します。
これが、ラストシーンの「2004年3月30日」の首吊り影の正体。
これから出てくる「明坂春」と名乗る女は、実は照本の娘であったのだ。
春は、河渕を恨み、その家族までをも恨み始めます。
河渕の家系の事を、闇記者であり、金のためなら何でもする「大友藤次郎」に全て聞き出す事になります。
その「大友藤次郎」という人物。この名は偽名で、最後に分かるように、彼は13年後の「三崎達也」だったのです。「幾井草枝」が昔、河川敷で見ていた白の12番の少年でもあります。
春は、皆と仲良く話している時もずっとその期を伺っていた事になります。
その恨みから、河渕康夫の実の娘でもある「幾井花枝」の乗る自転車を蹴り、車に轢かせるのです。
ちなみに花枝を轢いた車に乗っていたのは、1年前「下元愛佳」を屋上から落としたことがバレ、逃げていた「牛窓えり」と「畑田拓馬」であったのだ。
そう。その1年前の事件。
幾井草枝、品原風子、明坂春、河渕光の同級生「下元愛佳」は、キー局全局落ち、かろうじて受かった準キー局で、アナウンサーをしていたのだが、嫌がらせや、いじめに会い、謝りたくないのに謝らされている日々を送っていた。
その下元の屋上のシーン。
下元は飛び降りようとしていた。
畑田は必死に止めようとするが、「お願いします!」と頭を下げた瞬間、あっさりと飛び降りてしまったのです。畑田は、下元自ら飛んだと思い込んでいたのだが、真実は1年後分かる事になります。実は畑田が頭を下げた瞬間、えりが背中を押していたのだ。
だからあのシーンは、畑田目線の真実と、えり目線の真実が描かれている事になる。
その瞬間を下から写真を撮っていたのが「大友藤次郎」。しかしえりは怖くなり、逃げようとするが、えりの数字能力を買っていた藤次郎は、えりを引き止め、視聴率が低迷している青天テレビの「ブレイクニュース」を担当させる事となる。
下元が落ちたニュースは、すぐに広がります。当時その時間、BSで番組を担当していた風子、光、宗崎の所にも、速報が入る。 風子は、本番中にも関わらず、泣き出してしまう。その2つのシーンが交差する構成になっている。劇中、映像で「3月20日」と出ていたのは、同じ日かと思いきや、1年前の出来事だったのかと、後で分かるようになっている。
さて、時間の流れで言えば、「2015年8月20日」。冒頭のシーン。アナウンススクールを卒業し、これから別々の道に進むシーン。
昔話に花を咲かせる、風子、春、光、宗崎。そこに草枝がやって来て、採用を蹴ったと突然告げます。なぜだと聞いても言わず、皆、草枝の態度に苛立ち、その場を去ってしまう。だが、風子だけには、その後、目が見えなくなることを伝えていたのだ。
だが、この運命に納得が行かず苛立つ草枝は、そのまま、風俗であるピンサロ『ツリークラブ』に入る。そこにいたのは、「すず」と名乗るが、実は「幾井花枝」。草枝の腹違いの妹だったのだ。花枝は、親に捨てられ、ずっと兄を探していたのだが、この客が兄だとは全く気付かないまま、花枝は、不幸話をし始める。
すると、草枝は突然その場で泣き出してしまう。意気投合し、優しくしてくれた花枝に、草枝は帰り際、自分の名前を告げる。すると、花枝は繋いでいた手を離し、逃げて行ってしまう。この場で会ってしまったこと、行為をした事などの葛藤でつい逃げてしまったのだ。
「一度会った事がある」というのはここを指します。
そして、「2017年3月19日」
午後10時。
花枝を、ツリークラブから連れ出した藤次郎は、花枝と草枝を会わせようとします。それは、恩があるから、と言います。この「恩」は、河渕に助けてもらった「恩」。
花枝を見送った所で、光が通りすぎるのを見掛けます。
その河渕光は、20日の下元の1回忌に行くための喪服を取りに、実家に帰る所。そこでは、康夫が、酒を飲んでベロベロになっていた。酒を飲ませ、そこで、告げられる真実。「この酒はな、お前が生まれた所の酒だ。」製造地は、鹿児島。すると「お前は俺とは血が繋がってない」。光はショックを受けます。親や、家族の在り方に疑問と執着が芽生え、帰り道、近くのお店に寄った際に、まだ生後5ヶ月の赤ちゃんを誘拐してしまいます。その動向をたまたま見ていたのが、藤次郎。後に、康夫が赤ちゃんを抱いていたのですが、赤ちゃんの場所を知らせたのは、藤次郎なのです。
花枝が明坂と自転車でぶつかり赤ちゃんを探している時にはすでに、赤ちゃんは保護されていた事になります。
その赤ちゃん。草枝と花枝のシーンに出てくる隣の家に住んでいる赤ちゃんとは、別の子。
きっと進んでいくうちにその子だろうと思う人もいたかもしれないが草枝の隣に住んでいるのは、光だと思う人を裏切る形になっています。
花枝は、明坂が特別に読ませてもらった河渕光逮捕のニュースを見て、勘違いして、赤ちゃん目掛けて走って行くのです。
でも309に住んでいたのは、全く知らない人、だったのです。
2017年3月20日。
時刻は0時。
場所は青天テレビ。えりは、首を宣告され、苛立っているのを必死で押し殺しています。そこに出てきたのは、藤次郎。1年前、青天テレビに来て以来、姿
を消していた藤次郎が突然帰ってきます。(このシーンで、藤次郎が、妹、ホームレスになってました、と言いますが、大友藤次郎という役は前回作品「綻び踏んで笑えたら」で矢野竜司が演じていた役。だからその妹というのは、あわつまいが演じていた役の事を言っています。)
藤次郎は、落ち込んでいるえりを、勇気づけます。しかし、また一緒に手を組もうというえりに、藤次郎は、記者をやめた、と言い出します。しかし、えりも藤次郎の弱味を握っており、むりやり協力させます。ここの弱味とは、藤次郎が、三崎であること。1人の人(照本)を殺してしまった張本人だということ。裏では妹を一人、メディアを通じて殺してしまったことなども含まれています。 そして、別部屋にいた宗崎と、畑田に協力を求めるのです。
午前7時
「ブレイクニュース」が始まります。このシーンで、草枝が出て来ますが、あれは風子の頭の中の回想。光が発する言葉が、全部、昔言っていた草枝の言葉とリンクしてしまうのです。草枝の事を思い出した風子はまた泣いてしまいます。ゲストは河渕康夫の日でした。
そして8時45分、ブレイクニュースの1部が終わる時のシーンを視点を変え、3パターンで描いておりました。
この1部を、明坂春は、リモコンを踏んでたまたま付けてしまいます。ここのテレビでは、照本が死んだ事などを話しています。「お父さーん、河渕アナ出てるよー」と叫びますが、勿論、親はいません。
光は、危機を感じ、1部と2部の間に一度家に帰ろうとします、そこで出会ってしまったのが、明坂春。全てを知っている春。
家に帰ろうとした所で、捕まる事になります。通報したの春である。
車に轢かれた花枝は生きていたのか、という疑問。
これは決定付けるものはありません。
あなたの好みにお任せ致します。どう捉えて頂いても正解です。
花枝が道で倒れている所に、草枝が、状況を実況するシーン。あの時実は、宗崎が持っているビデオカメラは回っていたのです。あれはまだブレニューで流れていたことになります。その視聴率が25%。2020年の時に会話にも出てきます。
風子が見えるものを説明し、草枝が実況する。これが、話題となり、2020年7月24日の東京オリンピックの開会式の実況を任される事になります。
ここで出てくる花枝も、皆に見えていたのか、別空間なのか、決まったものはありません。
いかがでしたでしょうか?
抱いていた疑問は解消されましたでしょうか?
何はともあれ、生きることへのパワーをお伝え出来ていればいいな、と思っております。
本当にありがとうございました。
「一時間後の、僕。」
作・演出 日野祥太