「廃棄チャージを最高裁が認めた」という書き込みを散見します。
何故こうなるのでしょうか?廃棄チャージの定義すら認識できずに言葉を濫用しているだけなのか?整理してみましょう。


まず、廃棄チャージ論者が「廃棄チャージを最高裁が認めた」というのは最高裁判決の補足意見に書かれている
①<廃棄ロスや棚卸ロスは、加盟店の利益ではないから、これが営業費として加盟店の負担となることは当然としても、本件契約書においては、これらの費用についてまでチャージを支払わなければならないということが契約書上一義的に明確ではなく、被上告人のような理解をする者があることも肯けるのであり、場合によっては、本件条項が錯誤により無効となることも生じ得るのである。>
②<上告人担当者から明確な説明があればまだしも、廃棄ロスや棚卸ロスについてチャージが課せられる旨の直接の説明はなく、これらが営業費に含まれ、かつ、営業費は加盟店の負担となるとの間接的な説明があったにすぎないというのである。>
この部分から言っているのでしょう。

これらと共通するものに公正取引委員会による「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」の中に同じような表現があります。
(見切り販売の制限)
○廃棄ロス原価を含む売上総利益がロイヤルティの算定基準となる場合において、本部が加盟者に対して、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する商品等の見切り販売等を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること(注4)。
(注4)コンビニエンスストアのフランチャイズ契約においては、売上総利益をロイヤルティ算定の基準としていることが多く、その大半は、廃棄ロス原価を売上原価に算入せず、その結果、廃棄ロス原価が売上総利益に含まれる方式を採用している。この方式の下では、加盟者が商品を廃棄する場合には、加盟者は廃棄ロス原価を負担するほか、廃棄ロス原価を含む売上総利益に基づくロイヤルティも負担することとなり、
廃棄ロス原価が売上原価に算入され、売上総利益に含まれない方式に比べて、不利益が大きくなりやすい。


これらは、廃棄ロス原価が売上総利益に含まれ、結果として廃棄ロスにチャージが課せられていると書かれているので、短絡的に考える人は、廃棄ロスにチャージ=廃棄チャージとなるわけです。

一般会計とコンビニ会計を比較すれば売上総利益には廃棄原価相当額の差額が生じます。しかし、加盟店が廃棄原価を全額負担するためにはコンビニ会計しかないわけですから、裁判においても「営業費として加盟店の負担となることは当然」つまり当たり前だとなったわけです。


廃棄チャージを主張する人の論拠は 

正)一般会計 誤)コンビニ会計ですが、裁判で確定したのが誤)一般会計 正)コンビニ会計です。

<販売9、廃棄1の場合>の例で見てみましょう。
コンビニ:売上900-(総売上原価700-廃棄原価70)=売上総利益270 270×40%-営業費70=最終利益38円
もし一般会計でコンビニを処理した場合:売上900-原価700=売上総利益200 200×40%=最終利益80円


③:正)80円-誤)38円=42円 不当に売上総利益が拡大 これが廃棄チャージ論 しかし、実態は
④:正)32円-誤)80円=-42円 不当に売上総利益を縮小しろ 

廃棄チャージ論でなくても比較すれば差額は生じるのです。


差額は③④共に42円あります。最高裁や公取の書いている差額とはマイナスです。マイナス差額を廃棄チャージと呼ぶのなら廃棄チャージは存在するでしょう。しかし、廃棄チャージ論者の主張はプラス差額ではなかったのですか?
いつからマイナス差額も廃棄チャージと呼ぶようになったのでしょうか?

一般会計を比較の対照にすることは不適正なのです。不適正な比較ならいくらでも創出できます。
ネットに書かれていたのには、7のチャージは高いのでLのチャージを適用しろ。差額があるのでこれをLチャージと呼ぼうというのがありました。
いくらでもマイナス差額は創造できますね。合理性や正当性が必要ないのですから。


ただし、例外があります。それは、契約内容に関して正しい説明がなされなかった時です。そして、実はその例外とは世の中に存在していないのです。
詳しくはまた。


結論:不正な(プラスの)廃棄チャージは存在しない。